確定申告を忘れていた場合はどうすればいい?対処法とポイントをまとめて紹介!

最終更新日:2023.06.08 (公開:2023.05.11)

確定申告は、年に一度、1月1日から12月31日までの1年間の所得を税務署に申告して、納付すべき税金を決定するものです。会社勤めで年末調整が済んでいる人など、一定の要件を満たす人以外は、翌年2月16日から3月15日までの期間に申告が必要です。

確定申告は法律で決められた手続きのため、もしもうっかり忘れてしまっていた場合には、ペナルティが課せられるなどのデメリットがあります。

そこで今回は…
期限までに確定申告をしなかった場合のペナルティの内容や、うっかり申告を忘れていたことに気がついたときの対処法を解説します。

確定申告を忘れた!その際に受けるペナルティとは?

確定申告は所得税法第120条に定められた制度です。申告が必要なのに忘れてしまった場合は「無申告の状態」となります。どのようなペナルティを受けることになるのか見ていきましょう。

無申告加算税が課せられる

確定申告を期限内にしなかったとき、無申告加算税が課せられます。本来、納付すべき税額に対して、定められた割合を乗じた金額が加算されます。

■無申告加算税の税率
・本来の税額が50万円以下:15%
・本来の税額が50万円超:20%

ただし、税務署からの調査・指摘を受ける前に、自分で無申告に気がついて自己申告(期限後申告)した場合には、税率が5%に軽減されます。また、一定の条件を満たすときには、無申告加算税は課されません。

■期限後でも無申告加算税が課されないケース
・確定申告の期限後1カ月以内に自主的に期限後申告した場合
・一定の条件を満たし、期限内に申告する意思があったと認められる場合

延滞税が追加で課せられる

延滞税は、税金が未納付だった期間の「利息」に相当するペナルティです。無申告加算税とは別に課せられます。延滞税の金額は、法定納期限の翌日(例年、確定申告の期限は3月15日のため、その翌日の3月16日)から完納するまでの日数計算で算出されるので、無申告の状態が長いほど高額になります。

延滞税の税率は年ごとに変わるほか、経過期間によっても異なります。期限後申告の場合、2021年1月1日以降は以下のような割合です。

■期限後申告の延滞税率
・申告書を提出した日の翌日から2カ月を経過する日まで:原則として「年7.3%」と、別途定められた「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低いほう

・2カ月が経過した日以降:原則として「年14.6%」と、別途定められた「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低いほう

悪質な場合は重加算税が課せられる

虚偽申告や所得隠しなど、納付すべき税金を隠す悪質な意図があったと判断される場合には、重加算税が課せられる可能性があります。ケースによって税率は異なり、かなり重いペナルティとなります。

■重加算税の税率
・無申告の場合:40%
・過少申告の場合:35%

刑事罰を科せられてしまうケースもある

意図的な虚偽申告や所得隠しなどのいわゆる「脱税」はもちろんですが、不正行為ではない場合でも刑事罰を科せられてしまうケースもあります。処罰例としては、以下が挙げられます。

1.単純無申告犯
正当な理由なく確定申告書を期限内に提出しなかった場合。法定刑は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金。所得税法第241条などに規定。

2.申告書不提出犯(単純無申告ほ脱犯)
単純無申告犯の中でも違法性が強いと判断される、故意に確定申告書を提出しないことで納税を免れた場合。法定刑は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその併科。所得税法第238条などに規定。

3.虚偽過少申告ほ脱犯・虚偽無申告ほ脱犯
帳簿の虚偽記入、二重帳簿の作成など「偽りその他の不正行為」によって税金を免れた場合。法定刑は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科。所得税法第238条などに規定。

確定申告を怠るデメリットは?

確定申告を忘れてしまうとペナルティを課せられることはこれまで見てきた通りです。ここからは、ペナルティ以外にも生じる主なデメリットについて解説します。

不動産所得などで損益通算を受けられない

不動産投資では、減価償却費や突発的な修繕費用などの経費が発生します。家賃収入よりも経費が上回り不動産所得で赤字が生じた場合、その赤字部分を、給与所得など他の黒字部分の所得から差し引いて計算でき、これを「損益通算」と呼びます。

損益通算することで課税対象額が圧縮されるため、結果として節税効果が得られる可能性があります。確定申告をしていない場合には、不動産所得の申告もしていないことになるので、損益通算のメリットを受けることはできません。

関連記事不動産投資の確定申告のやり方から必要書類、節税のポイントまで解説

各種所得控除が受けられない

各種所得控除について該当するものがあれば、確定申告をすることで所得から一定金額を差し引くことができます。課税対象額が減ることで、節税効果が得られます

例えば…
・所得控除
合計所得金額が2,400万円までは48万円の控除を誰でも受けられる

医療費控除
年間で10万円を超える医療費(所得が200万円未満の場合は総所得金額などの5%)を支払った場合に利用できる

生命保険料控除
民間の医療保険や個人年金保険、学資保険など

上記のような様々な控除を受けることができません。

青色申告できなくなる可能性がある

青色申告は確定申告の種類の一つ。個人事業主や不動産投資などの事業を副業で行っている人、法人など、一定の要件を満たす場合に幅広い人が利用できるものです。

青色申告をするには事前に税務署への申請・承認が必要ですが、最大65万円の特別控除をはじめ、赤字を翌年以降に繰り越せるなどの優遇措置を受けられます。この青色申告の優遇措置を受けるためには、当然、期限内に申告する必要があり、無申告の状態では優遇措置は受けられません

★個人・法人で違うポイント★
・法人で2事業年度連続して無申告の場合には、青色申告の承認が取り消される可能性がある。
・個人の場合は明確な要件がなく、無申告が続いても青色申告が認められるケースもある。

青色申告について詳しくは、税務署へ確認するか、税理士など専門家へ相談するのがおすすめです。

収入証明ができない(個人事業主やフリーランスの場合)

個人事業主やフリーランスの人の場合、確定申告をしないと収入を証明する公的書類を用意できません。一般的に収入証明は、各種ローンの申し込みや賃貸物件の入居審査などで必要となりますが、無収入とみなされて、普段の暮らしや事業にも影響を与える恐れもあります。

■収入を証明する公的書類の例
・税務署へ申告した「確定申告書」の写し(税務署の受領印があるもの)
・税務署へ申告した「青色申告決算書」の写し(税務署の受領印があるもの)
・地方自治体が発行する「納税通知書」
・地方自治体が発行する「課税証明書」

なお、会社勤めの人の場合は、会社が発行する源泉徴収票が収入証明になります。万が一、確定申告を忘れていた場合でも、年末調整で申告した内容で収入を証明することはできます。

国民健康保険の減免が受けられない(個人事業主やフリーランスの場合)

個人事業主やフリーランスの人の場合、国民健康保険に加入するのが通常ですが、その保険料は所得によって減額されるケースがあります。しかし、確定申告を怠ることで所得が不明であると判断されるため、減免措置を受けることができません。

確定申告を忘れてしまった場合の対処法を知ろう

ここからは、やむを得ず期限内に確定申告ができないときや、うっかり確定申告を忘れてしまったときの対処法のポイントについて解説します。

※手続き方法や対処法の詳細はケースによっても異なりますので、税務署へ相談するか、税理士など専門家へ相談するのがおすすめです。

確定申告を忘れていた場合は期限後でも必ず相談・申告する

確定申告は法律で決められた手続きです。うっかり忘れていたとしても、必ず遅れてでも申告しなければなりません。後述しますが、期限後に申告することを「期限後申告」といい、条件によっては軽微なペナルティで済む場合もあります。気がついた時点で、まずは税務署や税理士に相談をすることが大切です。

やむを得ない場合は「期限延長申告」を提出する

やむを得ない理由で、期限内に確定申告ができないと事前に分かっている場合には、税務署へ「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出する方法があります。延長できる期間は、提出できない理由がおさまった日から2カ月以内です。

なお、妥当かどうかの審査があるため、希望する場合には、まずは最寄りの税務署へ相談するのがおすすめです。

■詳しくは下記のサイトを参照してください。
[手続名]災害による申告、納付等の期限延長申請|国税庁

税金の期限内納付が難しい場合は延納制度を活用する

確定申告した所得税の納付期限は、基本的に確定申告と同じ期限です。事情により期限までに納付するのが難しいと事前に分かっているときは、延納制度を活用する方法があります。

★延納制度のポイント
・税額の2分の1以上の金額を期限までに納付すれば、残りの金額の納付期限を延長できる。
・延納期間に応じて利子税がかかる。
・延納制度を利用したい場合は、確定申告書の「延納の届出」欄に希望金額を記入する。

詳しくは、毎年、国税庁(税務署)が公開・配布している『所得税及び復興特別所得税の手引き』で確認できます。

期限を過ぎた「過去分の確定申告」をする場合に知っておくべきこと

確定申告の期限が過ぎてしまい、過去にさかのぼって申告する際に知っておきたいことを見ていきましょう。

期限を過ぎたものは「期限後申告」として扱われる

確定申告の期限を過ぎて申告したものは「期限後申告」として扱われます。期限後申告では、ここまでに解説してきたように、本来、納めるべき所得税額に加えて延滞税などのペナルティが課せられます。ただし、条件によっては軽減されるペナルティもありますので押さえておきましょう。

■期限後申告の注意点
・税務署の指摘を受ける前に自分で申告すれば、ペナルティ(無申告加算税)は5%で済む。
・期限後でも条件によっては無申告加算税がかからない場合もある。

■無申告加算税がかからない条件
・法定申告期限から1カ月以内に自主的に行われていること。
・期限内申告をする意思があったと認められる一定の場合に該当すること。

「還付申告」の場合は5年までOK

納め過ぎた所得税を還付してもらう手続きに「還付申告」があります。この還付申告は、確定申告の期限と関係なく、その年の翌年1月1日から5年間まで提出可能です。

■還付申告の例
・年の途中で退職して再就職しないで年末調整をしなかった場合
・住宅ローンでマイホームを購入して税額控除をしていなかった場合
・病気やケガでかかった医療費の控除をしていなかった場合
・ふるさと納税(寄附金控除)の申告を忘れていた場合

提出済みの確定申告の内容が間違っていたときの対処法

最後に、確定申告をしたものの、提出後に「申告内容が間違っていた!」と気づいた場合の対処法についても触れておきましょう。

期限内の場合には再提出(訂正申告)すればOK

確定申告の期限内に内容の誤りに気づいた場合は、確定申告書を作成し直して、期限内に提出(訂正申告)すれば問題ありません。税務署では、再提出された新しいものを正式な申告書として手続きを進めてくれます

ただし、還付があるケースでは、還付金の支払いが通常よりも遅れる可能性はあります。また、タイミングによっては税務署内で還付処理が済んでいたり、すでに還付金を受け取っていて精算の手続きが必要だったりする場合もあるので、再提出する前に税務署に確認してみるのがおすすめです。

期限後の場合には修正申告をする

確定申告の期限後に内容の誤りに気づいた場合は、申告した税額が、本来の税額よりも「多いか」「少ないか」で対処法が異なります

・税額を多く申告していた場合(還付が発生)
税務署へ「更正の請求書」を提出します。内容の調査が行われ認められれば、納め過ぎた税金が還付されます。更正の請求は、申告期限から5年以内まで可能です。

・税額を少なく申告していた場合(追加納税が発生)
修正用に指定された申告書を作成して、税務署へ「修正申告」をします。手続き期限は特にありませんが、延滞税が課せられるため、気づいたときはなるべく早く申告することが大切です。また、税務署の指摘を受けてからの修正申告は、重加算税など重いペナルティを受けることになります。

確定申告を忘れていたときは、気づいた時点でできるだけ早く申告を!

確定申告は法律で定められた手続きのため、うっかり忘れてしまっていた場合でも、原則としてペナルティが課せられます。もしも、無申告の状態が長く続き、税務署からの調査・指摘を受けた場合には、延滞税や重加算税など重い納税が必要になることもあります。

確定申告が必要な人は、期限内の申告を心がけるようにするのとあわせて、今回、解説したように、確定申告を忘れていた場合でも、気づいた時点でなるべく早く申告するようにしましょう

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※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。㈱メイクス・㈱メイクスプラスにおいては、何ら責任を負うものではありません。

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メイクス100年不動産ナビ編集部

メイクス100年不動産ナビ編集部は、不動産投資をはじめ、資産形成についてワクワクしてもらえるようなの情報の提供を目指しています。初心者向けの情報から既にオーナーの方、知見のある方に向けた、不動産投資や資産形成についての疑問を客観的な視点から発信しています。

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