不動産投資の「税金対策」には注意が必要?仕組みが分かる基礎知識

最終更新日:2023.03.02 (公開:2023.01.19)

・不動産投資ではどのような税金がかかるの?
・不動産投資での税金対策や節税について知りたい


と思っている方も多いのではないでしょうか?
一般的に、不動産投資と言えば節税のイメージが強いため、節税効果を見込んだ税金対策として検討する方も少なくありません

ただ、節税にはそれなりに知識が必要で、注意しないと脱税につながるリスクもあります。

今回は、不動産投資でかかる主な税金の概要から、その税金対策と注意点まで詳しく解説していきます。不動産の税金対策について知りたい方はぜひ参考にしてください。

不動産投資でかかる主な税金と税金対策

はじめに、不動産投資でかかる主な税金と、その税金対策について解説します。

実際の税務処理はケースバイケースになるため、税務署や税理士などの専門家、不動産投資会社の担当者などに相談するのがおすすめですが、基礎知識として概要を把握しておきましょう

所得税の税金対策

所得税は、1年間の個人の所得に課せられる税金(国税)です。所得には給与所得や退職所得、雑所得などいくつかの種類があり、不動産投資による家賃収入も「不動産所得」として所得税の対象となります。

また、不動産所得は以下の計算式のように、総収入から不動産投資でかかった必要経費を差し引いた金額で算出されます。

<不動産所得額の計算式>
不動産投資(家賃収入)の総収入-必要経費=不動産所得額

この不動産所得額がプラス(黒字)の場合、給与所得など他の所得を合算した全ての所得に対して所得税がかかります。課税対象額は以下のような計算式で計算します。

ただ、不動産投資を始めたばかりの初年度などは、必要経費の方が上回るケースがほとんどでしょう
不動産所得がマイナス(赤字)の場合、給与所得など他の所得と損益通算されるので、払い過ぎた税金が還付されます

例)給与所得が1,000万円で不動産所得が100万円の赤字のケースの課税対象額は、
1,000万円-100万円=900万円です。

このように、不動産所得は他の所得と損益通算できるため、発生したマイナス分を差し引くことで課税対象額を少なくし、結果として納税すべき税金を減らすことが可能です。

先述の例では、確定申告することで課税対象額は900万円になるので、給与所得で源泉徴収された1,000万円分の税金から、払い過ぎた税金が戻ってきます。

住民税の税金対策

住民税は、居住住所などがある都道府県や市区町村に納める税金(地方税)です。

前年の所得に対して課税される税金のため、先述の所得税の課税所得額を下げることによって、翌年の住民税額を下げる節税効果が期待できます。特に、不動産物件を購入した年は、家賃収入による利益よりも必要経費が多くなり、不動産所得が大きくマイナスになるのが一般的なため、高い節税効果が生じます。

住民税は会社員であれば毎月の給与から天引きされる税金です。住民税を節税できると、これまでよりも多い手残り額を毎月受け取ることができ、節税効果を実感しやすいでしょう。

贈与税の税金対策

贈与税とは、個人から財産を受け取った際にかかる税金のことです。
贈与税の節税効果は2つあります。

■個人が両親や祖父母などから不動産を受け取る場合
不動産を現金と比較すると不動産の評価が低いケースが多いことから、不動産で贈与を行う方が税金は安くなります。

■相続時精算課税制度を利用する方法
相続時精算課税制度とは、60歳以上の祖父母または両親から、20歳以上の子や孫が贈与を受ける場合、資産の評価額が2,500万円までであれば贈与税がかからない制度です。

評価額が2,500万円を超えるケースでは、2,500万円まで課税対象外となり、2,500万円を超えた分にだけ一律20%の贈与税がかかります

例) 3500万円の財産を子供に贈与する場合
3,500万円-2,500万円=1,000万円
2,500万円を超える1,000万円分にのみ贈与税が課税されます。

なお、相続時精算課税制度は、被相続人が死亡して相続が発生した際は、贈与財産の価格を全て相続財産に計上して相続税を算出します。

また、贈与財産の価格は贈与時の価格が適用されるので贈与財産の価値が相続時までに上がっていると制度の利用によって大きな節税効果が期待できます。ただ一方で、相続時がデフレの状況では、制度を利用したケースの方が税金は高くなるので注意が必要です。

相続税の税金対策

相続税とは、亡くなった親などから不動産や現金などの財産を相続した際にかかる税金で、相続を受けた相続人が納付します。

不動産投資においては、賃貸用の不動産として相続を受けることで、現金よりも相続税評価額が下がるので相続税を節税できます。不動産の評価額の目安は、おおよそ現金の6~7割ほどです。

また、更地の土地を相続する場合、建物付きの場合よりも土地分の相続税が割高になります。そのため、更地の土地だけを所有している地主の場合、相続税対策の一環として生前に賃貸物件を建てるというケースもあります。

不動産投資による相続税の税金対策は、相続税評価額を下げることで大きな節税効果が期待できるのです

不動産投資が税金対策になる人・ならない人

ここからは、不動産投資が税金対策になる人とならない人について見ていきましょう。
節税目的で不動産投資を始めるのは、人によって効果がない場合もあるので、以下の内容をぜひ参考にしてください。

不動産投資で節税効果を得られる可能性がある人は、シンプルに収入が多い高額納税者です。具体的な金額を出すのであれば年収900万円以上が一つの目安でしょう。

例)課税所得額が900万円以上の場合
所得税:約33%
  課税所得額1,800万円以上の場合
所得税:40%
  課税所得額4,000万円を超える場合
所得税:45%

所得の半分近くが税金となる所得水準になると、投資のリスクを考慮しても、節税目的で不動産投資をする価値があるといえるでしょう。

【所得税の速算表】

課税される所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円超え330万円以下10%97,500円
330万円超え695万円以下20%427,500円
695万円超え900万円以下23%636,000円
900万円超え1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円超え4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

出典No.2260 所得税の税率|所得税|国税庁

また、現金資産を潤沢に持っている富裕層においても、不動産投資は税金対策になります。現金で贈与や相続をすると税金が高くなるので、財産を不動産に変えることで評価額を下げ、節税につなげることが可能です。

不動産投資が税金対策にならない人

不動産投資で節税効果を見込めない可能性があるのは、年間の課税所得額が900万円に満たない人です。

もちろん、節税の仕組み自体は変わらないので、年収が高くない方でも一定の節税にはなります。ただ、節税目的で年収900万円未満の人が不動産投資を行うには、税金対策と言えるほどの大きな効果は見込めないでしょう。

不動産投資には、節税以外にもメリットがたくさんあるため、高所得者層以外は他のメリットを目的とすることをおすすめします。節税メリットが少ない状態で、節税だけを考えて物件を選ぶと「こんなはずではなかった…」と、結果的に後悔する投資になってしまう可能性もあります。不動産投資の目的をしっかり考えた上で判断するようにしましょう。

不動産所得や経費計上として扱われるもの

ここからは、不動産投資において不動産所得の対象になるものや、経費計上できるものについて解説します。

不動産所得の対象となるもの

不動産所得の対象となるのは、家賃収入と物件を売却した際の売却益です。

家賃収入は、毎月発生する不動産投資におけるメインの収益であり、確定申告によって給与所得など、他の所得と損益通算できます。不動産所得がマイナス(赤字)になると損益通算によって課税所得を少なくできるので、所得税や住民税の節税効果が期待できます

一方、物件の売却益は譲渡所得に該当します。譲渡所得は、家賃収入と違って他の所得と損益通算できないため節税効果はありません。

ただ、不動産投資を法人化している場合は、譲渡所得も家賃収入と損益通算できます。

不動産投資で経費計上できるもの

不動産投資で経費計上できるものは多岐にわたります。例を挙げると以下のようなものがあります。

・減価償却費
・物件の管理費用
・ローンの手数料

金利(借入金利子)
・火災保険料
・税金(不動産取得税、固定資産税・都市計画税)
・修繕、リフォーム費用
・税理士の報酬

そのほか、物件を見に行くときの交通費や不動産会社の営業担当者との打ち合わせ食事代など、賃貸経営にかかった費用は基本的に経費計上ができます

一方、賃貸経営に関係がない費用は、経費として計上してはいけません。例えば、勤めている会社で使うスーツ代や家族との食事代、友人との交際費などは、当然経費として認められません。

不動産投資で節税したいと考える方の中には、何でも経費計上できると勘違いしているケースもあるので注意しましょう。経費を正しく計上して健全に運用することも、不動産投資において大切なポイントです。

不動産投資で税金対策をする際の注意点

不動産取得税や固定資産税などが課税される

不動産を購入すると下記税金がかかります。

・不動産取得税
・固定資産税
・都市計画税
 

不動産取得税は、不動産を取得したことに対してその年だけかかる税金です。固定資産税・都市計画税は、不動産を所有していることで毎年かかる税金です。

不動産を購入することでかかるこれらの税金は、節税できません。そのため、購入時にかかる不動産取得税や、新たに毎年かかる固定資産税・都市計画税についても考慮して、運用計画を立てる必要があります

投資が順調だと節税は難しい

不動産投資において節税になる要素の大部分が損益通算です。先述したように、不動産投資で得られる収益がマイナス(赤字)にならない限り、損益通算によって節税になることはありません

物件を購入した年には、購入に関わる多くの初期費用がかかるため、収支がマイナスになり、確定申告によって大きな節税効果を受けられるケースが多いです。しかし、2年目以降は、物件の運営が順調である限り、経費もそこまで発生せず、収支がマイナスにならないケースもあります。

もちろん、その分の収入は増えますが、節税の観点では投資が順調である状態では節税効果は期待できないということになります。

減価償却費について理解が必要

不動産投資において、減価償却費を正しく理解し、うまく活用することが節税につなげる一番のポイントです。

減価償却とは、耐用年数に応じて毎年少しずつ経費計上する方法です。固定資産の種類によって法定耐用年数が決まっており、その年数にわたって一定額を経費として計上していきます。

例)新築の鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の物件
・耐用年数は設備 15年
・躯体(建物全体を支える柱、梁、床、壁などの構造部分) 47年


となり、買ったときの価格を、所定の算出方法に基づいて毎年計上していきます。
耐用年数を過ぎて減価償却が終わると一気に計上できる経費が減ってしまい、節税効果がなくなります

税金対策だけを考えることはあまりメリットがない

不動産投資において、節税効果を期待して税金対策をすることは、実はあまりメリットの大きいものではありません

先述した通り、不動産取得時には損益通算による節税効果が見込める場合もありますが、物件を購入することで新たに納付が必要な税金が出てくるなど、トータルでの節税効果は一時的なものです。

長期の賃貸経営という観点で考えると、適切な物件管理・運用を行うことでしっかりと利益を出して、その運用益から税金をまかなうのが健全な考え方であり、リスクが低い不動産投資といえるでしょう。

損益通算上の注意点に制限がある

確定申告の際に節税のポイントとなる損益通算ですが、一定の制限があるので注意が必要です。

例えば、同じ不動産からの収益であっても家賃収入は給与所得などの他の所得と損益通算できるのに対して、売却益はできません。不動産の売却益は譲渡所得に該当しますが、譲渡所得は他の所得と通算できないことが理由です。

節税目的で不動産投資をするのは本末転倒

不動産投資の目的は、本来、家賃収入でプラスの収益を出すことです。節税目的だけを考えて収支をマイナスにするのは、経営状態を自ら悪化させているのと同じであり、事業そのものの趣旨を考えると本末転倒といえるでしょう。

例えば、不動産購入時の初期費用によるマイナス(赤字)で一時的に大きな節税になっても、それが不動産投資の成功例とはなりません。

あくまで不動産投資は節税がメインの目的ではなく、適切な管理・運用で収入を得ることが目的であるということを意識しておくことが大切です。

税金対策の仕組みを理解して不動産投資に活用しよう

今回は、不動産投資に関わる税金の概要と税金対策、その注意点についてご紹介しました。

ここで見てきたように、不動産投資において節税効果は一つのメリットであり、主な目的とするべきものではありません。大切なことは税金対策の仕組みを正しく理解して、適切に活用することです。

不動産投資の検討・運用に不可欠な、不動産投資に関わる税金や税金対策について詳しく知りたい方は、実績豊富なメイクスまでお気軽にご相談ください。専門知識を持ったコンサルタントが最適な資産運用をサポートします。

※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。㈱メイクスにおいては、何ら責任を負うものではありません。

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メイクス100年不動産ナビ編集部

メイクス100年不動産ナビ編集部は、不動産投資をはじめ、資産形成についてワクワクしてもらえるようなの情報の提供を目指しています。初心者向けの情報から既にオーナーの方、知見のある方に向けた、不動産投資や資産形成についての疑問を客観的な視点から発信しています。

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