不動産投資の出口戦略とは?売却タイミングや売却方法を紹介

最終更新日:2023.01.12 (公開:2022.11.11)

不動産投資において重要なポイントとされる出口戦略(売却)。株式などの金融資産と比較して、不動産は一般的に流動性が低いとされているからこそ、売却タイミングや売却方法が重要なポイントになります。

そこで今回は、不動産投資で出口戦略(売却)が重要視される理由をはじめ、売却タイミングや売却方法の考え方について解説していきます。

不動産投資の出口戦略や売却タイミングについて知りたい方はぜひ参考にしてください。

不動産投資の「出口戦略」とは?なぜ重要視されるのか

不動産投資において効果的な出口戦略を立てるためには、出口戦略が持つ意味や重要である理由を知ることが大切です。まず、不動産投資の出口戦略とは何なのか、なぜ重要視されるのかについて見ていきましょう。

不動産投資の出口戦略は「物件を高く売却すること」

「出口戦略」とは、もともとは軍事用語で、戦場でいかに人命や物資の損失を抑えて撤退するのかという撤退作戦のこと。ベトナム戦争時に米軍が撤退する際に使用したのが始まりとされています。

これが転じて、不動産投資においては「投資した物件を、いかに高く売却するか」といった意味合いで「出口戦略」という言葉が使われています。

出口戦略が不動産投資の成否を決める

不動産投資において「入口」は物件の購入で、「出口」は物件の売却を指します。

不動産投資の出口戦略を考える際は、長期的に見た運用益などを考慮する必要があります。そのため、購入してから戦略を練るのではなく、物件購入前から売却することを意識して投資を開始することが重要です。

不動産投資では、物件を長期保有しインカムゲイン重視の考え方も一つの戦略ですが、ここでは物件売却による出口戦略をどうするのかという点にフォーカスします。不動産投資を続けていくと必ず出口となる売却時期が訪れます。それが、自分の世代なのか、子供や孫など次の世代なのかは分かりませんが、入口の段階で出口戦略ができていないと売却時に思わぬリスクがあるかもしれません。

不動産投資の出口戦略は購入前に立てておく

先述したように不動産投資の出口戦略は、購入前に立てておくのが鉄則です。

例えば、物件を選定する際の大切な要素の一つに物件の立地条件がありますが、売却時にもこの立地条件が売却額に影響し、立地は後から動かせないからです。建物や設備に関しても、賃貸人が入居している状態では簡単にリフォームなどができません。

そのため、物件を購入する前から出口戦略を描き、その上で必要なリフォームなどを行うなど計画的な投資をすることが大切となります。

収益物件の出口戦略の選択肢

出口戦略は物件を売却することですが、売却する際の選択肢はさまざまです。ここでは、収益物件の出口戦略についての選択肢を見ていきましょう。

なお、ワンルームマンションの区分所有の場合は「1」と「2」の選択肢になりますが、アパートや戸建ての場合の選択肢についても参考までご紹介します。

1.収益物件のまま売却する
2.自己居住用として売却する
3.(アパート・戸建てなら)更地にしてから売却する
4.(アパート・戸建てなら)物件を建て替える

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.収益物件のまま売却する

収益物件の売却をする際、最も簡単で手間のかからない方法が、収益物件のまま売却することです。物件の所有者であるオーナーが変わるだけで、「オーナーチェンジ」とも呼ばれます。

入居者の立ち退きなどが発生せず、次のオーナーもすぐに賃貸物件として運用できるため、売る側も買う側も手間がかからないのがメリットです。入居付けが順調である、また建物が新しく建て替えの必要がない場合などに有効な選択肢になります。

収益力が高い物件であれば、高値で売却できるケースも多いですが、収益力が低い物件は想定していた価格では売却できない可能性もあるので注意しましょう。

2.自己居住用として売却する

区分マンションなどの物件で入居者がいない場合には、居住用として売却するのも効果的です。入居が埋まっていない状態では、投資家よりも自分の居住用を探している人に売却した方が、高く売れるケースもあります。
特に立地が良い都市部の区分マンションは、投資用としてだけでなく、実需(居住用)でも単身者からの人気が高いです。物件や間取りによっては、需要がないケースもあるので注意が必要ですが、選択肢の一つになります。

3.(アパート・戸建てなら)更地にしてから売却する

アパートや戸建てなどの場合、入居者がいない状態で比較的簡単に解体できる物件であれば、更地にしてから売却する方法があります。「前面道路が広い」「前面道路と接する間口が広い」など道路付けが良い物件は、土地自体の価値が高いため更地にすることで逆に価値が上がります。

都市部の好立地な物件であれば、高値で取引されるケースも珍しくありません。ただ、道路付けが悪い場合や物理的に建物が再建築できないような物件は、更地にすると価値が急激に下がることが考えられます。

更地での売却は、その後に建物が建てやすい土地であるかが一番のポイントです。

4.(アパート・戸建てなら)物件を建て替える

不動産業者でない限り少ないケースですが、アパートや戸建ての場合には、一旦更地にして建物を建て替えるという方法もあります。建て替えに多額の資金が必要になるので、それを上回る金額で売却しなければなりませんが、物件によっては有効です。

道路付けが悪く更地では売れない場合、建物を建て替えることで価値を上げることができます。ただ、建物を再建築するのにはそれなりに時間がかかるため、早期に出口戦略をとりたいケースには向きません。時間的余裕があるケースのみの選択肢です。

不動産投資の8つの売却タイミング

不動産投資の出口戦略を考える際は、売却のタイミングも重要なポイントです。ここからは、不動産投資の売却タイミングについて解説していきます。

売却タイミングとしては、主に以下の8つが挙げられます。

・物件を保有して5年経過後
・大規模修繕をする前
・築年数20年になる前
・入居者が住んでいる時
・路線価が上がっている時
・減価償却が終わる時
・デッドクロスになる前
・新年度前の引っ越しシーズン

それぞれ詳しく見ていきましょう。

物件を保有して5年経過後

物件を売却するとその売却益に対して譲渡所得税がかかりますが、5年以内に売却すると税率が割高になります。5年経過後は税率が安くなるので、節税の意味でも5年経過後の方が売却を考えるのに適したタイミングと言えるでしょう。

具体的な税率は、以下の通りです。

・5年以内の短期譲渡税:約39%(所得税30%・住民税9%)
・5年経過後の長期譲渡税:約20%(所得税15%・住民税5%)

大規模修繕をする前

マンションの経年劣化に伴って、通常のメンテナンスでは難しい建物本体や設備などを改修する大規模修繕が十数年単位で実施されます。高額な工事費がかかるため、区分所有者が修繕積立金を毎月積み立てていきますが、予定外の修繕が必要となり追加費用が発生する場合があります。

修繕費用が高額になるほど、賃貸経営の収益で取り戻すには長い年月が必要となるため、この大規模修繕前に売却するのも一つの選択肢です

築年数20年になる前

マンションは築年数が浅いほど価値が高くなり、新しいマンションほど売却しやすくなります。最新の関連法令や建築基準に適合しているのをはじめ、建物や設備も当然、良い状態が維持されているからです。

明確な定義があるわけではありませんが、中古マンション市場では、物件価格のバランスがとれた築年数として「築年数20年前後」が一つの目安になっています。

建築後10年以上経ていれば、不具合がなく品質面でも問題がない物件であると考えられることや、物件価格が新築時と比べて割安になっていることなどが理由として挙げられるでしょう。

20年を超えると、内装や設備が古くなっていたり、大規模修繕の必要性が出てきたりする可能性もあります。

そのため、築年数が20年になる前は売却を検討するタイミングです。

また、買主がローンを組む年数を考えても築年数20年を超えると長い期間のローンを組むことが難しくなります。物件の価値も維持でき、買う側もローンを組みやすいことを考えると築年数20年になる前は、売却を考えるのに適したタイミングと言えます。

入居者が住んでいる時

収益物件のままオーナーチェンジを狙って出口戦略を検討するのであれば、入居者が住んでいるタイミングで売却するのがベストです。空室が多い物件は、購入して早々に入居付けをする必要があり、投資家であれば基本的に敬遠します。

建物を解体し更地にして売却するケースでは逆に空室の方が良いですが、オーナーチェンジの場合には、満室稼働のタイミングが高く売却できるチャンスです。

路線価が上がっている時

路線価が上がっているタイミングは、基本的に公示地価や実勢価格も上がっているので市況が良く、高く売却できる可能性が高いです。また、路線価が上がると固定資産税も高くなるので、資産売却のタイミングとしてはとても適しています。

路線価と合わせて実勢価格などの市場価格もしっかりと分析し、良い出口戦略がとれるようにしましょう。

路線価は以下のサイトで調べることができます。

■財産評価基準書 路線価図・評価倍率表(国税庁)

https://www.rosenka.nta.go.jp/

■全国地価マップ(一般財団法人資産評価システム研究センター)

https://www.chikamap.jp/

減価償却が終わる時

税金対策としても効果的な減価償却が終わると、計上できる経費が一気に減り、所得税が急に高くなります。家賃収入などで得られる収益が税金を大きく上回っている場合は問題ありませんが、収益性が低下する場合は売却を考えるタイミングです。

物件を買い替えるなど、資産の組み換えを行うことを検討するといいでしょう。

デッドクロスになる前

不動産投資の「デッドクロス」とは、ローンの元本返済額が減価償却費より大きくなる状態のことです。デッドクロスの状態で投資を続けても、確定申告後に税金が引かれると収益がマイナスになってしまいます。そのため、資産形成という考え方を抜きにして収支だけに焦点を当てると、デッドクロスの状態では満室状態でも常に収支はマイナスとなります

あくまで家賃収入によるキャッシュフローを目的に不動産投資をするのであれば、デッドクロスになる前に出口戦略をとるのがベストです。


新年度前の引っ越しシーズン

新年度前の引っ越しシーズンは、不動産が最も活発に取引される時期です。不動産業界では、全体を通して繁忙期となり、相場より高い金額でも売れる可能性が高い時期となります。

投資物件においても例外ではなく、賃貸需要の高い時期にあたることから空室状態でも高値で売却できる可能性が高いです。特に売却のきっかけがない場合は、1年の間で最も不動産が高く売れる新年度前の引っ越しシーズンがおすすめです。

不動産を売却するステップ

最後に、不動産を売却するステップをご紹介します。スムーズに出口戦略をとるために、売却する流れとポイントを把握しておきましょう。

1.売却したい時期に合わせてスケジュール調整

まず、売却したい時期に合わせてスケジュールを組みます。不動産を売却するには最低でも1カ月程度の期間が必要なので、希望するタイミングで売却するためには、事前にスケジュールを調整することが大切です。

売り急いでしまうと、思った金額で売却できない可能性が高くなるのであらかじめ余裕をもったスケジュールを計画しましょう。

2.相場の調査

所有物件の周辺相場は必ずチェックします。不動産の売却は、仲介会社などに依頼するのが一般的ですが、市況感を含め「自分の物件がいくらで売れるのか」を事前に調査しておくことも大切です。

できるだけ高い金額で売却したいのは当然ですが、相場から大幅に外れた金額では仲介会社などとの相談もスムーズに進められません。適切な売却額を想定することで「相場よりも安く売却してしまった…」という事態も防げます。

3.物件の査定をしてもらう

相場のチェックをした後は、不動産会社に物件の査定をしてもらいます。できれば1社だけではなく複数社に依頼するのがおすすめです。インターネット上でできる不動産の一括査定サイトもあるので、利用してみるのもいいでしょう。

物件の査定後は、自分の条件に合った会社に媒介(売主と買主の間で売買契約を成立させること)を依頼します。

4.売却価格を決める

売却を依頼したい仲介会社が決まった後は、売却価格を決めていきます。時期にもよりますが、最初は高値のチャレンジ価格でスタートし、反響が少なければ徐々に価格を落としていく方法もあります。

仲介会社からもアドバイスをもらいながら、最適な価格を設定しましょう。

5.売却依頼する不動産会社と媒介契約を結ぶ

売却価格を決めた後は、その金額で仲介会社と媒介契約を結びます。媒介契約とは、仲介会社に対して正式に物件の売却を依頼するための契約です。媒介契約を結んで初めて、仲介会社は本格的に販売活動をスタートさせます。

販売活動がスタートしたら、仲介会社と連絡を密にとり、物件の販売状況など情報共有を欠かさず行うことが大切です。物件を購入した時と同じ仲介会社に売却も依頼すると、状況もよく分かってくれているので、心強い味方となるでしょう。

6.市場に物件を売り出す

媒介契約後は、販売に向けて市場に物件を売り出します。具体的には、仲介会社の見込み客への紹介やホームページへの掲載、ポータルサイトへの掲載などです。

買い手からの反響があれば仲介会社が詳細の案内をし、買主を見つけていく流れとなります。反響や案内が多いほど物件にニーズがある証拠であり、希望通りに売却できる期待感が高まります。

7.購入希望者と条件交渉をする

購入希望者が現れたら、売却に向けて条件の交渉をします。売主側の希望通りに購入してくれればベストですが、指値(買主側が指定する購入希望価格)が入るなど買主側の条件を提示されるケースもあるでしょう。

売主の条件を押し付けすぎても売却機会を失うことにつながるので、条件交渉は慎重に行うのがポイントです。条件の折り合いがつけば、購入の申し込みへと進みます。

8.買主と売買契約を結ぶ

条件交渉により売主・買主ともに納得した場合は、売買契約を結びます。売買契約では、物件の重要事項についての説明や売買契約の条件を確認し合います

互いに条件に問題がなければ、買主から売主に手付金を送金して売買契約は成立です。手付金の金額には法律上の規定はありませんが、一般的に売買金額(物件価格)の5~10%ほど。買主と売主の合意で決まります。

なお、売主が不動産会社(宅地建物取引業者)の場合の手付金については宅地建物取引業法で、上限が20%と決まっています

9.購入代金を受け取って物件を引き渡す

売買契約の後は、買主から購入代金を受け取って物件を引き渡します。引き渡しにより所有権が移転するため、売主が行うのは決済代金の着金を確認するだけです。

売買契約から決済までは、現金であればすぐですが、ローンを利用する場合には早くても2~3週間程度かかります。

10.不動産会社へ仲介手数料を支払う

購入代金を受け取って引き渡しが完了した後に、媒介を依頼した不動産会社へ仲介手数料を支払います。仲介手数料は、売買代金の「3%+6万円+消費税」が上限として宅地建物取引業法で決まっています。手数料は、値引きしてもらえるケースもありますが、決済後の値引きは基本的にできないので注意しましょう。

不動産会社へ仲介手数料の支払いが終わると、全ての取引が完了となります。

物件購入前に計画を立てよう!出口戦略は不動産投資のカギ

今回は、不動産投資の出口戦略(売却)をテーマに、その重要性や売却のタイミング、売却方法について解説しました。

不動産投資は、賃貸事業の運営を健全に行うことも大切ですが、売却できて初めて利益が確定します。出口戦略を実施する機会が必ず出てくるので、投資をスタートする前から考えておくのがおすすめです。

不動産投資の出口戦略や売却タイミングについて詳しく知りたい方は、不動産投資の実績が豊富なメイクスまでお気軽にご相談ください。専門知識を持ったコンサルタントが最適な資産運用をサポートします。

※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。㈱メイクスにおいては、何ら責任を負うものではありません。

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メイクス100年不動産ナビ編集部

メイクス100年不動産ナビ編集部は、不動産投資をはじめ、資産形成についてワクワクしてもらえるようなの情報の提供を目指しています。初心者向けの情報から既にオーナーの方、知見のある方に向けた、不動産投資や資産形成についての疑問を客観的な視点から発信しています。

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