不動産投資は、短期的に大きな利益が得られる投資方法ではありませんが、長期的な資産運用という観点では堅実でメリットがある投資方法とも言われています。一方で、ご自身で物件を探して購入するところからスタートする不動産投資に興味はあるものの「リスクや対処法についてよく分からない…」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
他の投資と同様に、不動産投資にもリスクはありますが、起こり得るリスクを把握して対策をとることが重要です。
今回は、そんな不動産投資のリスクとその具体的な対策方法を解説します。不動産投資にご興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
目次
知っておきたい不動産投資の8つのリスクと対策例
不動産投資には注意すべきリスクがあります。いくつかあるリスクのうち、ここでは次の8つについて解説していきます。
1.空室リスク
2.家賃滞納リスク
3.老朽化や修繕リスク
4.流動性リスク
5.災害リスク
6.物件選びのリスク
7.持ち出し現金増加リスク
8.金利上昇リスク
各リスクについての詳細と対策について見ていきましょう。
1.空室リスク
空室リスクとは、不動産投資のために購入した物件を賃貸に出した際、家賃収入が見込めずに計画していた収益が得られなかったり、ローン返済の原資を準備できなかったりする可能性があることです。
リスクの具体例と対策を解説します。
空室により家賃収入が見込めない
「物件に入居者がいない空室状態=家賃収入なし」であるため、空室期間は賃貸収入が得られず、自己資金をローン返済や諸経費の支払いに充てることになりマイナスの収支が続くことになります。諸経費とは、物件の管理費や修繕積立金などがあります。
空室期間が長くなると、自身の収入や貯金から返済していくことも苦しくなり、最悪の場合、自己資金が尽きてしまう恐れがあります。また、積み上げてきた信用(与信)も失うことになるでしょう。
対策:立地条件や入居付けがポイント
空室リスクへの主な対策としては、以下の3点が挙げられます。
1. 立地の良い物件を選ぶ
2. 建物の質や設備が充実した物件を選ぶ
3. 優秀な賃貸管理会社を選ぶ
1つ目は立地です。人口が多く、かつ入居者に好まれやすい立地を選びましょう。市街地で駅から近い物件などは、常に一定数の入居希望者を見込める可能性があります。
2つ目は、物件そのものです。最近は、賃貸物件でも建物の見栄えがよく付帯設備の質が充実している物件も増えています。入居者の人気が高い物件を選びましょう。
3つ目は、賃貸管理会社です。立地や物件が良かったとしても、入居者を募集できなければ空室が発生し家賃収入が見込めなくなります。入居付けができるかどうかは、管理会社の能力によるところが大きいです。公表されている入居率などを参考に、しっかり選定していきましょう。
2.家賃滞納リスク
仮に空室率が低くても、家賃滞納がおきると家賃収入は減ってしまいます。加えて、ここでも家賃収入をローン返済や諸経費の支払いに充てることができなくなり、返済が滞るリスクが生じる可能性があります。
リスクの具体例と対策を以下で解説します。
家賃滞納により家賃収入が入ってこない
入居者が家賃を滞納した場合、家賃収入は見込めません。仮に「うっかり」による支払い忘れであれば心配はありませんが、支払能力がない場合や、意図的に支払いを滞納している場合は、対応が難しくなります。
そうなると、先述したように家賃収入がないままの状態が続くことになります。
入居者に対してこちらから働きかけても家賃滞納が続く場合には、訴訟を起こす対応も視野に入れておかなければなりません。立ち退きしてもらうためには、滞納を3カ月以上しているなどの条件も必要です。最悪、強制退去させるという事態になっても、場合によっては訴訟費用や強制執行代で予定外の高額な費用がかかることにもなります。
家賃滞納のリスクは、家賃収入が得られないだけでなく、対応する時間や想定外の出費を伴う可能性があるのです。
対策:家賃保証会社の審査を条件に入居してもらう
2つ目の対策としては、家賃保証会社の審査を条件に入居してもらうことです。
家賃保証会社は、家賃滞納があった場合でもオーナーへの家賃支払いを立て替えてくれます。入居者が手数料を支払うため、オーナー負担がない点が魅力です。
家賃保証会社は入居契約時に必ず入居者の審査を行い、収入状態や信用履歴、勤務先などを確認して支払能力などを判定します。近年では、家賃滞納リスクを考慮して、家賃保証会社への加入を必須としている賃貸物件も多くなっています。
対策:定期借家契約で物件を貸す
家賃滞納リスクを防ぐ方法の一つは、定期借家契約で物件を貸すことです。一般的には普通借家契約を結んで賃貸しますが、普通借家契約は借主の保護という観点から入居者に有利な内容になっています。
そのため、正当な理由がない限り、貸主から契約を解除することは難しくなります。
その点、定期借家契約であれば、更新という概念がなく契約期間が終了すれば借主は退去しなくてはなりません。貸主側がまだ住んでもらいたいと望む場合は、更新ではなく再契約という形で入居者に引き続き住んでもらうこともできます。
ただし、定期借家契約では「必ず書面又は電磁的記録で契約を行う必要がある(普通借家契約の場合は口頭契約も成り立つ)」「契約の更新がなく期間満了によって終了することを、契約書とは別個の書面又は電磁的方法によって、借主に説明する必要がある」「契約期間が1年以上の場合は契約期間満了の1年前から6カ月前の間に契約終了の通知をする必要がある」など法律上の留意点があるので注意が必要です。
3.老朽化や修繕リスク
賃貸物件の貸主として、部屋の中はもちろん、物件に付帯する設備を修繕する義務があります。そのため、物件の修繕リスクを考慮して不動産投資を行う視点が欠かせません。
修繕リスクの具体例と対策を解説します。
経年劣化による修繕コストが発生する
修繕コストの具体例としては、次のようなものが挙げられます。
・排水管、給水管の劣化および破損
・入退去時の修繕、リフォーム
・故障や古くなったエアコンや給湯器など設備の取り替え
これらの補修・修繕は貸主として必ず行わなければなりません。設備などの故障は新しい場合でも起こり得るため、突発的な修繕にも対応できるように考えておくのがいいでしょう。この費用を考えずに収支計画を組んでしまうと、融資の返済計画に支障が出ることになります。
対策:修繕費を積み立てておく
あらかじめ、毎月の利益の中から修繕費として積み立てておくことが大切です。急な出費が発生したとしても、その資金からまかなうことができるので、運用計画に大きな影響が出ないで済みます。
毎月の積立額は、所有している物件が生み出している収益や不動産を所有したことで返ってきた税金などを戸数のバランスと考えて決める必要があります。
対策:修繕ノウハウのある管理会社を選択する
修繕ノウハウのある賃貸管理会社を選択することも大切です。長期修繕計画は素人ではなかなか立てることが難しいため、専門知識を持っていて、費用対効果の高い修繕のアドバイスを受けられるような実績のある管理会社を選びましょう。
直接、賃貸管理会社に修繕コストについて聞く、管理会社のWebサイトなどで修繕に関する対応が可能かどうかを事前に調べる、などしてチェックしましょう。
4.流動性リスク
不動産は現物資産であることから、金融資産に比べて流動性の低さがデメリットです。流動性とは商品交換性のことで、ここでは不動産を現金化しやすいかどうかが流動性であり、流動性リスクとは現金化しにくいことを意味します。
流動性リスクの具体例と対策を解説します。
不動産の売却には時間がかかる
金融資産である株式や外貨などは、その場で売り買いができ、現金が必要なときには売却することで簡単に換金することが可能です。最近は、スマートフォンからでも簡単に売買できるほど手軽です。
しかし、不動産を売却するには、査定をして、売却活動を行い、買主を見つけ、引き渡しと、早くても数カ月はかかります。
対策:都市部の物件を購入する
都市部は人口が多いことから、地方よりは不動産の売り買いが頻繁に行われます。いざというときに売却しやすさを考慮するのであれば、都市部の物件を購入しましょう。また、1棟物よりも区分マンションの方が対象物件数が少なく、売却しやすいでしょう。
5.災害リスク
日本は地震の多い国です。不動産投資をする上で、事前に地震への対処をしておくことは避けられません。そして、地震と同様、火災も非常に大きなリスクです。
地震は、全国のどの物件でも起こり得る可能性があります。また、火災に遭う恐れも十分にあるため、災害リスクの具体例と対策を解説します。
大地震による建物崩壊
建物の倒壊・損壊によって借主が入居し続けるのが難しくなってしまった場合、家賃収入はなくなります。
それに加え、物件が損壊を受けた場合に復旧するためのコストや、万一建物が倒壊して他人に損害を与えた場合、損害賠償が発生する可能性もあります。その場合でも、ローン返済は継続していかなければなりません。
対策:地震保険へ加入する
地震保険に入るには、火災保険へ加入が必要です。商品内容によっても異なる場合がありますが、地震はもちろん、噴火や津波被害などを補償してくれます。保険料がそれなりに高くなるものの、地震への備えとして地震保険へ加入することも有効です。
対策:新耐震基準の物件を選択する
新耐震基準とは「震度6強~7程度の揺れでも建物が倒壊や崩壊しない」とされる基準のことを言います。
1981年6月1日から施行された耐震基準で、旧耐震基準とは区別されています。この基準では、過去に発生した「阪神淡路大震災」「東日本大震災」では軽微な被害で済んでいて、倒壊などは確認されていません。
投資物件が新耐震基準を満たしているかどうかの確認方法としては、役所の建築指導課などで発行してもらえる建築確認通知書を調べることです。通知書の発行日が、1981年6月1日以降であれば新耐震基準建物。同年5月31日以前であれば旧耐震基準建物と判別できます。
対策:ハザードマップを確認する
ハザードマップとは、災害が発生した際に危険と思われる場所や災害時の避難場所などを示したものです。各管轄の公的機関から発行されており、国土交通省のページからハザードマップの有無を確認することがきます。
■ハザードマップは国土交通省が提供している下記のWebサイトをご覧ください。
火災による建物焼失
火災で建物が滅失した場合、地震災害同様にローンだけが残ってしまいます。家賃収入が得られなくなるので、自己資金でローン返済をし続けなければなりません。そうなれば、不動産は一瞬にして負債と化してしまうのです。
対策:火災保険へ加入する
火災による建物焼失の対策としては、火災保険に加入しておくことです。
商品によって補償内容が異なるため、契約前にはどの程度被害を受けたら保険が給付されるかなどをしっかり確認しておく必要があります。補償内容と保険料を見比べて選定しましょう。
6.物件選びのリスク
不動産投資は、物件選びによって成功するしないが決まるといっても過言ではありません。なぜなら、入居者が安定する物件は家賃収入も安定し、長期スパンでの賃貸事業が軌道に乗るからです。どのようなことに気をつけて物件選びをすればいいのでしょうか。
不利な物件を選んでしまう
物件選びは不動産投資家の永遠の課題と言われます。それは、投資経験が豊富な人でも周辺リサーチや物件情報の収集を怠ってしまうと、競合物件が多かったり入居者が決まりにくかったりする物件を購入してしまうことがあるからです。リサーチ・情報収集をしっかりしないと物件選びに失敗してしまう点を、頭に入れておきましょう。
対策:リサーチ・情報収集をしっかりする
事前に不動産投資とはどういうものか、どういった立地の物件が有利なのか情報収集、知識習得をしておくことが大切です。投資家の書籍やセミナー(ウェビナー)で情報を得たり、不動産投資会社や税理士などの専門家から話を聞いたりするといいでしょう。ポイントは「物件選びの際に、どういった点に注意するといいのかを把握する」ことです。
7.持ち出し現金増加リスク
不動産投資を続けていく上で気をつけたいことの1つが「デッドクロス」です。これは、帳簿上は利益が出ているにもかかわらず、手元の現金が減り、持ち出し金額が多くなることです。具体的には、経費として計上できないローンの元金返済額が、経費として計上できる減価償却費を上回った時に発生します。
利益圧縮ができなくなり所得税額が増えてしまう
不動産投資で節税できると言われますが、そのスキームは減価償却を利用して利益を圧縮し課税所得を少なくさせることです。ところが、例えば耐用年数15年の設備の償却が終わってしまうと経費計上できる額が少なくるため課税所得が圧縮できなくなり、それまでよりも所得税が増加します。そのため、増額した分を手持ち資金から支払うことになるのです。
対策:繰り上げ返済するか物件を売却する
主な対策方法は2つあります。まず、定期的に繰り上げ返済をすることです。2つ目が「デッドクロス」の状況になる前に、物件を売却して手放すことです。いつデッドクロスになるのかシミュレーションし、不動産投資会社の担当者や税理士、もしくはファイナンシャルプランナーなどに相談しておくことが賢明です。
8.金利上昇リスク
不動産投資をする際、ほとんどの方は金融機関からの融資を利用して物件を購入します。金利が上昇することによって、総返済額が大きく上昇するリスクを具体例を用いて解説します。
経済情勢によって金利が変わる
金利上昇によって返済額はどれくらい変わるのでしょうか。
以下の具体例で解説します。
【前提条件】
借入元金:30,000,000円
返済期間:30年
返済方法:元利均等返済
変動金利:1.0%
※分かりやすくするため「ボーナス返済分なし」とします。
【ケース1:前提条件から変わらなかった場合】
毎月の返済額:96,491円
総返済額:34,736,760円
【ケース2:金利が上昇した場合】
上昇要件:5年目から上昇(変動金利:1.0%から1.2%へ上昇)
毎月の返済額(~4年目):96,491円
毎月の返済額(5年目~):98,827円
総返済額:35,437,560円
金利上昇による総返済額の差額は、700,800円になります。これは一例に過ぎませんが、金利上昇はこれだけの変化を生む可能性があります。
■返済額の目安を知るには、金融広報中央委員会が提供しているシミュレーションツールなどを活用するといいでしょう。
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対策:元金均等返済にする
返済方法には「元利均等返済」と「元金均等返済」がありますが、一般的には元利均等返済が選ばれることが多いです。毎月の返済額が常に同じ金額になるため、返済の目処がつきやすくなります。
一方、元金均等返済は元金のみを均等に返済するもので、ローン残高が減ると利息額も減るというメリットがあります。最初は返済額が多くなりますが、将来の返済額が少なくなるのが特徴です。
対策:固定金利を選択する
金利の上昇が心配な場合は、変動金利ではなく固定金利を選択するといいでしょう。
変動金利は月々の返済額を抑えられる点がメリットですが、将来金利が変動する可能性があります。
固定金利は変動金利より金利は高くなりますが、金利が固定されるため返済計画が立てやすくなります。
不動産投資のリスクと対処法を知って最適な資産運用を!
不動産投資の8つのリスクとその対策について解説しました。不動産投資には他の投資と同様にリスクはつきものですが、リスクの具体例を知ることで、あらかじめ適切な対策をとることができます。
不動産投資のリスクに適切に対処するには、信頼できる不動産会社選びが欠かせません。不動産投資をお考えの方は、実績と経験が豊富なメイクスまでお気軽にご相談ください。専門知識を持ったコンサルタントが最適な資産運用をサポートいたします。
※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。㈱メイクスにおいては、何ら責任を負うものではありません。