相続を考えることは、セカンドライフをより豊かにすること|株式会社TRASOL代表 神様インタビュー 

最終更新日:2024.08.15 (公開:2024.07.11)

左:山口 一真 右:神 雄也様


「人生100年時代」と言われる昨今、メイクスでも「健康寿命100歳創りに貢献する」という理念を掲げ、不動産の販売にとどまらず、不動産を購入いただいたオーナー様に伴走し、継続的な資産運用サポートなど、長きにわたるパートナーシップの構築に注力しています。 

今後、不動産を購入されたオーナー様が必ず直面するのが「相続」というテーマです。自身が健康なうちから向き合うのは難しい「相続」ですが、近年の法改正の影響もあり「相続」は今まで以上に身近な問題になりつつあります。 

そこで今回は、メイクスでの勤務を経て、相続支援を軸に事業を展開する株式会社TRASOLの神様をお迎えし、「相続と向き合う重要性」などについて、メイクス コンサルティングセールス本部役員の山口がお話を伺いました。 

「相続」をサポートする株式会社TRASOL 

山口:今回は、過去にメイクスで働いていて、現在は相続支援事業を展開する「株式会社TRASOL(トラソル)」の代表取締役を務める神さんにお話を伺いたいと思います。まずは、神さんが起ち上げた株式会社TRASOLについて教えてください。 

:株式会社TRASOLは、相続に関するコンサルティングを軸に事業展開しています。相続について、小さなことでも何でも相談できるサポーター的な存在として、多くのみなさまにご利用いただいています。 

相続不動産に関することはもちろん、ご遺族が行う葬儀、健康保険関係、世帯主変更などの手続きの流れをお伝えしたり、最近増えている相続税の相談についてはパートナーシップを組んでいる税理士先生と一緒に相談に乗っています。相続は、親から子へ、資産だけでなく、気持ちや思いを引き継いでいくものです。単純に手続きや制度の話ではなく、遺す側の気持ちを遺される側に繋いでいく、そんなお手伝いができればと考えています。

そういったコンサルティングをする中で、具体的な業務として相談されるのが、遺品整理や生前整理といった「動産に関すること」、相続不動産の買取や売却支援、相続税対策の不動産購入相談いった「不動産に関すること」、事業承継やM&Aに関する「事業支援に関すること」などで、「相続」を軸にさまざまなサービスを提供しています。 

山口:日本は高齢化が進む一方なので、かなりのニーズがありそうですね。 

:そうですね。70代、80代の方で、ご自身の相続について相談に来られる方も多いですが、親御さんの相続の相談ということで、50代や60代の方もたくさんいらっしゃいます。 

「終活」という言葉が一般的になって久しいですが、まだまだ元気なときに「自分の死」に向き合うことは心情的に難しいことだと思います。しかし、財産を誰にどう相続させるか、遺言状の作成や年金関連の申請など、相続に関する手続きはご自身が考えているよりも煩雑です。また、相続をめぐる遺族間のトラブルも、決して他人事ではありません。  だからこそ、正しい判断ができる健康なうちから相続の準備をしておくことは非常に重要なことだと考えています。 

起業のきっかけはメイクス時代のマンション1棟販売

山口:神さんはメイクスでは不動産の仕入れ営業だったわけですが、相続関係の事業をやってみようと思ったきっかけは何ですか? 

:メイクス時代の出来事がきっかけです。当時、開発事業部で仕入れた1棟を、そのまま富裕層の方に「相続税対策」として売却する取引を担当しました。確か10億円前後の取引だったと思います。

不動産の相続税の課税評価額は、時価(実際の売買取引の価格)よりも低く評価されることが多いため、その分、相続税が少なく計算されます。例えば、遺産が1億円あったとします。もし、それが現金であれば相続財産の評価額は1億円となり、1億円に対して相続税が課税されることになります。 

しかし、遺産が時価1億円の不動産だった場合、その不動産の相続税評価額が仮に6,000万円と評価されれば、相続税の課税評価額を4,000万円も圧縮することができるわけです。これが相続税対策として不動産取得が効果的な理由になります。 

山口:この出来事がきっかけで、神さんは「相続」に注目するようになるわけですね。相続のどこに可能性を感じたんですか? 

:起業を考えるきっかけとなったこの案件では、必要な方に、必要な不動産をご紹介し、お客様は購入に至りました。同様の方たちは相続税対策への意識がとても高いことを知ったと同時に、不動産は相続税対策として非常に優れたものだということを、自分で取引を担当して改めて痛感したんです。 

不動産投資は節税対策としては昔からあるオーソドックスな手法ですが、相続ではかなり高い効果があるということに驚き、高齢化が進む日本で、このマーケットは確実に大きくなると思いました。それで、相続支援の会社を起ち上げようと考え始めました。 

それから、僕の背中を強く押したのが、周囲を見渡したときに相続支援事業の競合会社が少なかったこと。まさにブルーオーシャンだったことも大きいです。相続についていろいろ調べていくと、競合といえる存在は信託銀行くらいでした。 

相続について相談する相手としては、弁護士や税理士、司法書士が思いつきますが、お客様のほうから相談に出向くケースがほとんどだと思いますので、競合から除外して考え、新規開拓という観点で見ると、ライバルは信託銀行か信託銀行系の不動産会社しかいない。それなら勝算はあると考えて、メイクスを退職してTRASOLを起ち上げました。 

山口:相続税法の改正で、2015年から基礎控除が引き下げられましたよね。それも追い風になっているわけですか? 

:そうですね。法改正前は、相続税の基礎控除額が「5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)」だったのですが、改正後は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」になりました。 

例えば、夫婦2人と子ども2人の4人家族がいたとします。その家族のお父様が亡くなった場合、法定相続人は3人になり、改正前であれば基礎控除額は8,000万円、つまり遺産総額が8,000万円以下であれば相続税は一切かからなかったわけです。 

これが、改正後の計算式で計算すると基礎控除額は4,800万円になります。

例えば、遺産が7,000万円あった場合、改正前なら相続税がかからなかったのに、改正後は「7,000万円-4,800万円=3,200万円」となり、基礎控除額を超える3,200万円に対して相続税がかかることになります。  つまり、法律の改正によって相続税対策を考えなければならない家族が大幅に増えたわけです。
改正時に日経新聞の記事でも紹介されていましたが、首都圏では実際に相続税の課税対象者が1.7倍に増加したとのことです。ですので、この法改正は当社の事業に大きな影響を与えるものであることは間違いないですね。

事業の本質は「お客様の人生を豊かにすること」

山口:最初にも触れたとおり、神さんはもともとメイクスの社員だったわけですが、新卒入社でしたよね。 

:そうですね。山口さんの直下で働かせてもらいました。そのあと一度メイクスを辞めて、総合商社系列の建物管理会社に転職し、3年ほど勤めてまたメイクスに出戻りました。  

山口:メイクスで働く中で、印象に残っている出来事はありますか?

:山口さんに「メイクスは、ただ単に不動産を売っているわけじゃない。本質を考えろ」と何度も怒られたことですね(笑)。ですが、今改めて考えると、まさにそのとおりだなと思います。 

TRASOLの提供サービスには相続支援や不動産処理、動産処理などさまざまなものがありますが、結局はすべて「お客様のライフプランニングに関わること」なわけです。その本質は「お客様の人生を豊かにする」ということ。お仕事をいただき、完了したあともアフターフォローをしっかり行い、お客様に伴走して困ったことがあったら何でも相談してもらえる存在になりたい。そう思って日々仕事に取り組んでいます。 

相続においては、節税対策のための不動産購入であったり、親から相続した不動産の売却であったりと、不動産が関わることが非常に多いため、メイクスでの経験がかなり役に立っていると思います。 

山口:事業を推進していく中で、困難なことはありますか? 

:利益になるまでの期間が長い点が、経営の立場からすると難しい点かなと思います。お客様との最初の接点は相続に関する相談がメイン。そして、実際に取引が動き出すのは数年後になるというケースが多いため、この長いリードタイムをいかに乗り越えるかがポイントかなと思っています。 

山口:利益を生むまでのリードタイムの長さは、逆を言えば、相続関連事業への参入障壁にもなっているのかなと思います。単年度での利益が見込みづらいでしょうから、上場企業などはなかなか手をつけにくいでしょうね。 

:TRASOLを起ち上げたのが2019年6月なので創業から5年ほどになりますが、創業当初に蒔いた種がようやく芽吹いてきている。そんなスパンですからね。このリードタイムの長さは、行動量を増やして、当社に相談していただける方の数を増やす開拓営業でカバーしています。

相続を考えるのも保険に入るのも、遺された人のための大切な準備

山口:リードタイムが長いというのは、相続人と被相続人にとっても同じことですよね。相続について考え始めても、親などの被相続人が亡くなって実際に相続の手続きが始まるのはいつになるか分からない…。だから「まだ先のことかな」と考えて、どうしても先延ばしになってしまいますよね。 

:相続は人生で1回か2回しか経験しないですから、なかなか向き合うタイミングがないですよね。でも、相続について考えることは本当に大切なことなので、それを理解してもらうために、お客様には「保険と同じ考え方ですよ」と話しています。 

山口:保険にたとえるとイメージが湧きますね。 

:多くの人が、自分が亡くなったときのことを考えて生命保険に入って、保険料を払っていますよね。でも、亡くなったときのことは考えているのに、亡くなった後の対策は何も考えていない。遺族のことを考えるのであれば「亡くなったとき」と「亡くなった後の対策」、そして「亡くなる前にできること」を考えておく必要があるはずです。 

山口:相続ビジネスは競合が少ないというお話でしたが、それは裏を返せば、相続の問題にぶつかったときに頼る相手も少ないということですよね。 

:おっしゃるとおりです。その意味でも、この事業の意義は大きいと思っています。相続支援の領域は、まだまだ成熟していません。「相続支援といったらどの会社?」と問われても明確な答えはまだない業界です。だから、自分がこの業界のパイオニアのような存在になれたらいいなと思っています。 

山口:そのモチベーションの源は何ですか? 

:この仕事でお付き合いしたお客様からは、いつも「本当にありがとう」とありがたいお言葉をいただいています。その言葉が単純にモチベーションに繋がります。また、相続に関することで相談できるところが本当に少ないんだな、と感じています。だからこそ、問題解決できたときには喜んでいただけているのだと思います。本当にいい仕事だなと思いますね。 

山口:純粋に、誇れる仕事ですよね。 

:最近は「セカンドライフの相談窓口」ということで、TRASOLのサービスを大手企業の福利厚生の一部に組み込んでもらう事例も出てきています。企業にお勤めの方の親御さんが高齢になると、介護の問題や相続の問題が出てきますよね。そうしたときに相談できる専門家がいると助かるということで、企業に入り込んだかたちでのサービス提供も行っています。 

2024年の4月から相続登記が義務化されました。これは、亡くなった人が不動産を所有していた場合、不動産の名義変更を義務付けるというもので、罰則も定められています。こうした世の中の流れも後押しして、サービスの引き合いが増えている状況です。 

山口:人生100年時代と言われていますが、メイクスも「私たちは、住環境づくりを通じて、心と体の健康寿命100歳創りに貢献します」という理念を掲げています。 

この理念を体現するには、単純に不動産を販売するだけではなく、不動産を購入したオーナー様が投資による利益を得て、さらには相続のタイミングになったら最適な手続きを踏めるといったかたちで、長きにわたるパートナーシップが重要だと思っています。それを考えると、TRASOLの事業とメイクスの事業はとても相性がいいと思っているんです。 

:両社の事業とも「人生100年時代」というテーマに通じる事業ですもんね。資産形成のためにメイクスで不動産を購入した方が相続問題にぶつかったときに、TRASOLのサービスをご利用いただければ、相談できる人がいるという一定の安心が得られると思います。 

実際に以前僕が提案した物件を買ってくださった方の中に、高齢になって体調を崩してしまい、まずは一次相続の相談ということで奥様のサポートをさせていただきました。 今後は、お子様の代への二次相続の相談も入ってくると思うので、お客様との関係が長く続いていきます。手前味噌になりますが、相続支援は本当に人の役に立つサービスだと考えています。 

相続対策で重要なのは家族間のコミュニケーション

山口:改めて相続対策で重要なことについて教えてもらえますか? 

:僕が毎回お客様に言っているのは、「家族できちんとコミュニケーションを取るようにしましょう」ということです。本当に、これだけなんですよ。相続で揉める原因は、結局は相続人の仲が悪いから。お金持ちであるか否かにかかわらず、とにかく家族の仲が良ければ相続は円満に進むんです。 

僕らのような年代になると、兄弟姉妹と会う機会も1年に1回か2回くらいになりますよね。それが、10年後、20年後になるともっと会わなくなるはずです。 上京していたり、転勤していたりして、実家を離れることもあります。そうなると正月しか親や親戚と会わないという方も多いと思います。

そうではなく、親が現役を引退して70歳くらいになったあたりから、意識的に会うようにするのが大切です。そして、「相続にはこういう対策があるよ」とか「実家の家や土地をどうしようか」みたいな意見交換をするのが一番重要なんです。 

山口:今すぐ、そして誰にでもできる相続対策ですね。 

:相続の問題は突然やってきます。まずは相続を知ることからスタートです。先ほどもお話ししたとおり、現在の法律では相続税の基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」なので、例えば子どもが1人の3人家族で、両親のどちらかが亡くなった場合の基礎控除額は4,200万円になります。 

首都圏に戸建てやマンションをお持ちの家庭なら、わりと多くの方がこの金額に達するはずです。それはすなわち、相続税についてしっかり考える必要がある対象の方がたくさんいるということです。 

先日相談を受けた神奈川県にお住まいの方の事例をお話しします。お子様が1人の3人家族だったのですが、お母様が亡くなられたということでお子様が相談に来られました。ご自宅の評価額を拝見したところ、あまり評価が高くなかったので、相続税はかからないだろうと思っていたんです。 

ところが、ご両親とも株を運用されていて、お二人の評価額を合わせると1億円くらいありました。今回の一次相続でもかなりの相続税がかかってしまいますが、今後、お父様が亡くなられた際の二次相続を考えるとしっかり対策を考えたほうがいいということで、当社の提携税理士と一緒にサポートさせていただいているところです。 

山口:今は株高ということもあって、そうした事例はかなりありそうですね。 

:事前に対策をしていれば、多少は状況も変わっていたかもしれません。ここ1年、株高ということもあるので、何が正解だったかは結果論になる部分もありますが、いずれにしても事前に準備をしておくのは重要なことです。 2023年度の税制改正で、相続税の生前贈与の加算対象が、従来の「亡くなる3年以内」から「亡くなる7年以内」へと段階的に延長されることになりました。ですので、相続対策は今まで以上に早い段階からスタートしておく必要が出てきたわけです。

トラブルになりそうな相続は専門家に相談を

山口:「争族」という言葉もあるくらい、相続にはトラブルがつきものという印象があります。相続関連のよくあるトラブルなどがあれば教えてください。 

:親が離婚している場合によく生じるトラブルがあります。例えば、両親が離婚してしまい、子どもが母親に引き取られたとします。そうなると、父親が再婚したとか、子どもができたといった話は知るよしもないわけですが、もし父親が再婚して子どもができて、そして父親が亡くなったら、再婚相手との子どもはもちろん、最初の子どもにも相続権が発生します。 

離婚によって夫婦関係が解消されても、夫婦の間に生まれた子どもとの親子関係は解消されません。父と母のどちらに親権があるのか、どちらと一緒に住んでいたのかは関係なく、子どもは親の財産を相続する権利があるわけです。 

だからこの場合は、まったく知らない人と相続について話し合わなければなりません。そして、たいていは揉めてしまいます。こうした事例は少なくありませんね。 

山口:なかなか難しい問題ですね。ほかにも、よくある事例があれば教えてください。 

:相続の手続きを始めたら、実は借金があったとか、知らぬ間に連帯保証人になっていた、なんてこともよくある話です。だから、生前から財産について家族で話し合って、状況を把握しておくというのはすごく重要なんです。 

極端な話ですが、「相続人は誰なのか」と「相続の対象となる財産は何があるのか」さえ把握しておけば、しっかりとした相続対策がとれるわけです。相続人が多ければ相続税の負担が小さくなる可能性がありますし、多額の現金を持っていれば不動産を購入することで節税対策ができますから。まず押さえるべきポイントは、この2つですね。 

山口:先ほどのお話にもありましたが、相続対策のファーストステップは家族間でのコミュニケーションですね。でも、いざ財産について話し合おうというときに、借金があったら話しにくいですね(笑)。 

:そうですね。ただ、もし借金があった場合は相続を放棄するという選択肢もあります。 

この借金の話題で、僕がメイクス時代に関わったAさんの事例を思い出しました。当時、Aさんから「所有している不動産を手放したい」という相談を受けて、僕が対応して3件ほど売却したんです。それからしばらくして、僕がメイクスを退職して独立したのを聞きつけて、Aさんが連絡してきてくれました。いろいろとお話をしていると、義理の息子であるBさんが相続関連で困っているとのこと。 

義理の息子のBさんは4人兄妹で、Bさん以外の3人は女性でした。最近お父様が亡くなって、相続の話になったとき、お父様に借金があるからということで妹3人は相続を放棄したそうです。実際に、Bさんのお父様には国民健康保険や年金の滞納分が600万円くらいあって、お父様が住んでいた家も差し押さえが入っていました。 

Bさんは、相続をどうしようか考えつつ、ひとまずお父様の車を自分に名義変更しました。これが問題で、名義変更してしまうと「単純相続」といってプラスの財産もマイナスの財産も引き継がなければならなくなるため、Bさんはお父様のマイナスの財産も相続することになってしまったんです。それで、どうにかならないかということで、僕がその問題の相談にのることになりました。 法律相談の部分は当社の顧問弁護士、税金部分については、税理士と連携を取りながら問題解決に取り組みました。

幸い、お父様名義の不動産は1,000万円くらいで売れることが分かりました。もしその不動産が売れた場合、単純計算で1,000万円から滞納金600万円を差し引いて、Bさんの手元には400万円くらい残ります。そのことをBさんに伝えて、しっかりと話し合い、戸建てはTRASOLが買い取ることになりました。 

最初は相続放棄した妹さんたちのほうが賢い選択だったかと思いきや、相続放棄しなかったBさんがメリットを享受したわけですが、こんなかたちで、相続についてはいろいろと調べないと分からないことも多いため、ぜひ我々のような専門家に事前に相談してもらいたいと思います。 

山口:TRASOLは、買い取った戸建てをどうするんですか? 

:ここからは不動産屋としての業務になりますが、リノベーションして再販します。それも含めてBさんに説明しました。お父様の物件の所在地の市役所まで行ってお父様の滞納額をすべて調べて、リフォームにいくらかかるか見積もりを開示し、現在のマーケット状況から再販したらいくらになるのかも調査しました。さらに、買い取った際の当社の利益がいくらになるのかまでBさんに報告して、すべて納得してもらった上で物件を買い取りました。 

山口:単純な売買ではなくて、手のかかる案件ですね。そこまでできる会社はなかなかないでしょうね。 

:こうした大手企業にはない機動力があることも、TRASOLの強みだと思います。 

相続支援サービスから広がる社会貢献型ビジネス 

:また最近は、相続人がいない方もたくさんいます。いわゆる「おひとりさま」ですが、1億円、2億円といった多額の財産を持っている方もかなりいますね。 

山口:相続人が不在の場合、その方が亡くなったら財産は国庫に入る、つまり国のものになるわけですよね? 

:おっしゃるとおりです。TRASOLでは万が一の場合、最終的に財産は国庫に入ってしまうので、寄付という選択肢もあることを知っていただくよう、ご紹介しています。 

神奈川県で、ひとり親家庭の支援をやっているNPO法人があって、TRASOLではそこに毎月食材などを寄付しているです。寄付先としてそのNPO法人を提案したり、もちろん他の団体も含めていろいろと寄付できる団体を紹介したりもしています。いわゆる「悪い団体」もあるので、そのあたりの調査もしっかりします。

山口:「おひとりさま」以外にも、仕事を通じて感じていることはありますか? 

:相続関連の仕事をしていると必然的に高齢の方と接する機会が多くなるわけですが、高齢者をターゲットにした悪質な事件を目の当たりにすることも多いですね。 

少し前の話になりますが、新潟県にお住まいの方から「神奈川県に住んでいる、いとこのCさんの相続対策の相談にのって欲しい」と連絡がありました。Cさんは高齢で、兄弟からの相続で不動産を持っていたのと、現金も2,000万円ほどお持ちでした。当社のサービスを紹介して、まずは不要と判断された不動産を売却し、老後の資金確保のお手伝いをさせていただくことになりました。 

不動産も無事売却でき、その後、Cさんはデイサービスに通うようになったのですが、病院の先生から「判断能力が弱まってきている」という診断を受けてしまい、残念ながら当社のその他のサービスを提供することができなくなりました。それでもCさんが心配だったので「何かあったら、お渡ししている名刺宛に連絡してくださいね」と伝えておいたですね。 

それからしばらくして、突然我々のもとに警察から「Cさんに詐欺を働いていませんか?」と電話がかかってきたんです。よくよく聞いてみたら、Cさんの判断能力が低下していると診断を受けた後に契約されたデイサービスの職員の方が、当社の名刺を見て不審に感じ、警察に通報したとのこと。こちらからすると、正義を振りかざして通報したデイサービスの会社こそ、判断能力がないと診断された方と契約されていたので、何が正義で何が悪なのか、非常に難しいなと感じました。 

もちろん、当社のサービスは詐欺行為でも違法行為でもないため、まったく問題なかったわけですが、高齢者向けのサービス、相続マーケットでは、このような「疑い」が多く存在します。ただ一つ言えるのは、特に単身高齢者は狙われやすいということです。詐欺と言えなくても、高額な葬儀費用を契約させられたりすることもあります。それが本当に正しいことなのか、誰かがそばで見守ってあげる必要があると考えています。

山口:最近では、遺品整理に関するトラブルも目立ちます。見積もりは安く提示しておいて、実際に作業したあとに、見積もりとは異なる高額な請求をするといった手口が横行しているみたいです。高齢化が進む中、そうした問題は今後も増えてしまいそうですよね。 

:TRASOLのサービスを利用してくださっている方とは日々コミュニケーションを取っているので、もしかしたら、僕らこそ、高齢者を悪徳業者から守ってあげることができるのではないかと思っています。 

身寄りがなく、相談できる親族もいないと、そうしたトラブルに巻き込まれやすいですからね。僕らが定期的に連絡をとることで、詐欺や孤独死といった問題を防ぐことができるのかもしれません。 

山口:相続対策で今まさに困っている人、そしてこれから困るであろう人はたくさんいるはずです。でも、明確なソリューションを提供するサービスは少ない。TRASOLの相続支援サービスは、人助けの面からも、ビジネス観点からも、その両面でとても魅力的な事業だと思います。今後の展開が非常に楽しみです。今日は貴重なお話をありがとうございました。 

※この記事は2024年3月に実施したインタビュー内容に基づいて作成しています。

ご協力:株式会社TRASOL

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メイクス100年不動産ナビ編集部

メイクス100年不動産ナビ編集部は、不動産投資をはじめ、資産形成についてワクワクしてもらえるようなの情報の提供を目指しています。初心者向けの情報から既にオーナーの方、知見のある方に向けた、不動産投資や資産形成についての疑問を客観的な視点から発信しています。

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