2024年スタートの新NISAは、これまでのNISA(以下「現行NISA」とします)をベースにしながらも、現行NISAに寄せられた不満点を改善しており、投資初心者にとって、より資産形成しやすい制度になっています。
そこで今回は、NISAの基礎知識をはじめ、新NISAの概要や現行NISAとの違い、活用メリット、利用する際の注意点などを解説します。
目次
そもそもNISAとはどのような制度?
「NISA」は「少額投資非課税制度」とも呼ばれ、NISA口座を利用して一定の条件のもと投資を行えば、投資で得られた収益に対して税制が優遇される制度です。イギリスのISA(Individual Savings Account:個人貯蓄口座)をモデルとした日本版ISAとされ、Nippon Individual Savings Accountの頭文字をとった愛称で知られています。
一方で、NISA口座(非課税口座)で株式や投資信託などに投資した場合には、一定の投資額に対する利益や配当金、分配金が非課税となり税金がかかりません。NISA口座で投資を行うことで税金がかからない分、少額からでも資産形成しやすいのが特徴です。
■参考
NISAとは? : 金融庁
株式・配当・利子と税|国税庁
新NISAとは?従来の制度との変更点を解説
2024年スタートの新NISAと現行NISAには、投資上限額や非課税保有期間など大きな違いがあります。
その違いを比較表にまとめると下表のようになります。特に注目したい5つの変更点について、この後、詳しく解説します。
■現行NISAと新NISAの特徴比較表
制度が恒久化された
現行NISAでは、新規口座開設は2023年までと期限が設けられていました(2023年に購入した投資商品の非課税保有は一般NISAが最長2027年まで、つみたてNISAが最長2042年まで)。しかし、新NISAでは、投資可能期間(新規口座開設時期と非課税保有期間)が恒久化されました。
これまでは期限が区切られていたことで、新規口座開設や投資開始時期が遅れた人が、税制優遇の恩恵を最大限に受けられないという問題がありました。そこで、投資可能期間を無期限とし、いつからNISAを始めても最大限の税制優遇の恩恵を享受できるようになりました。
■参考
一般NISAの概要 : 金融庁
つみたてNISAの概要 : 金融庁
「一般NISA」と「つみたてNISA」が「成長投資枠」と「つみたて投資枠」に変更
現行NISAでは、「一般NISA」と「つみたてNISA」を併用できず、どちらかを選択する必要がありました(1年単位で変更は可能)。しかし、新NISAでは「成長投資枠」(現行NISAの「一般NISA」に近い内容)と「つみたて投資枠」(現行NISAの「つみたてNISA」に近い内容)を併用できます。
成長投資枠では、上場株式や投資信託に投資できます。ただし、一部のレバレッジ投資信託(レバレッジにより少額の資産で何倍もの投資成果を狙う投資信託)などは、成長投資枠の対象から除外されています。また、つみたて投資枠では、これまで通り、長期・積立・分散投資に適した株式投資信託に投資できます。
2つの枠を併用できるようになったことで、「100万円のうち、40万円分はつみたて投資を行い、残りは成長投資に回す」など、投資対象を組み合わせた柔軟な運用が可能です。
年間投資上限額が最大360万円になった
現行NISAの年間投資枠は、一般NISAが年間で120万円、つみたてNISAは年間で40万円という上限が設定されていました。一方、新NISAでは、成長投資枠は年間で240万円、つみたて投資枠は年間で120万円に拡充されました。
成長投資枠とつみたて投資枠を併用すれば、年間で合計360万円まで投資ができます。現行NISAよりも年間で3倍以上の投資が非課税でできるようになったのです。
非課税保有期間が無期限に変更された
現行NISAでの非課税保有期間は、一般NISAは5年間、つみたてNISAが20年間でしたが、新NISAでは、非課税保有期間が成長投資枠・つみたて投資枠ともに無期限になりました。
なお、現行NISAに関しては、一般NISAのみ非課税保有期間の満了後にロールオーバー(翌年の非課税投資枠に移管)して引き続き運用することが可能ですが、2024年以降に非課税運用期間が満了する場合には、ロールオーバーはできません。課税口座に払い出して課税口座で運用するか、投資商品を売却する必要があります。
一方で、新NISAでは、成長投資枠・つみたて投資枠のどちらでも、非課税保有期間が無期限です。非課税保有期間が無期限になったことで、課税時期を気にせず長期的な投資判断がしやすくなります。
最大1,800万円の生涯非課税保有限度額が定められた
現行NISAの非課税保有限度額は、一般NISAで最大600万円、つみたてNISAで最大800万円でしたが、新NISAでは生涯の非課税保有限度額が1,800万円となりました。
非課税保有限度額は、投資商品の買付残高(簿価残高)がベースとなり、損益は考慮されません。ただし、成長投資枠で投資できるのは1,200万円までという制限があり、非課税保有限度額の1,800万円すべてを成長投資枠で使うことはできません。
また、新NISAには、NISA口座で保有する投資商品を売却すると、その翌年、売却した投資商品の買付残高(簿価残高)分だけ枠を再利用できる(枠が復活する)仕組みがあります。もし早い時期に非課税保有限度額に達した場合でも、一部を売却して、復活した枠で新たに買い付けが可能です。
現行NISAよりも非課税で投資できる金額が大きいため、税制優遇と複利の力を活かした投資が可能になります。
新NISAのメリットとは?
現行NISAから新NISAへの制度改正によって、投資家にはいくつかのメリットがあります。ここでは、代表的なものを3つ紹介します。
現在のNISAよりも、より多くの資金を非課税で運用できる
新NISAでは現行NISAと比べて非課税となる対象額が高額になっています。成長投資枠とつみたて投資枠の併用が可能であるため、現行NISAよりも投資運用の幅が広がったといえます。
投資金額でみると、従来120万円だった年間投資枠が最大で360万円となり、非課税保有限度額は800万円から1,800万円となりました。また、非課税保有期間が有期から無期限となったため、より多くの投資商品を非課税で長期間運用できる点は大きなメリットです。
現在のNISAとは別枠で運用可能
新NISAは、現行NISAとは別枠で運用できます。したがって、現行NISAで保有している商品を課税口座に移したり、売却したりする必要はありません。現行のNISA口座で保有している商品は、非課税期間が終了するまでそのまま運用・売却可能です。
新NISAで買い付けた投資商品は、新NISAのNISA口座で運用します。すでに現行NISAを始めていて非課税期間が残っている間は、その期間は、現行NISAと新NISAの両方をあわせて投資ができることとなります。
積み立て投資の上限が増えたので老後資金の準備が行いやすい
新NISAは、年間の投資上限金額と非課税保有上限金額が大幅に増えたため、新NISAでの老後資金の積み立てがしやすくなりました。
例えば…
新NISAの「つみたて投資枠」で毎月10万円(年120万円)を年利4%で運用すると、15年目で投資商品の購入金額(簿価)は1,800万円に達します。そして、その場合の運用収益は約660万円となりますが、この金額すべてが非課税で受け取れます。
現行NISAの「つみたてNISA」では、そもそも毎月約33,333円(年40万円)しか積み立てできません。また、非課税期間に期限が設けられた時限的なものでした。そのため、十分な老後資金を準備するためには、現行NISAの運用だけでは対応できないという否定的な見方も一部にありました。
その点、新NISAでは、上限金額が大幅に増枠された上、非課税保有期間も無期限となったため、老後資金のための資産形成の軸の一つにしやすくなっています。もしリタイヤした後、他の運用資産がある場合は、新NISAと他の運用資産の運用状況を比較して、メリットがあるほうを取り崩して生活資金にするなど、選択の幅が広がるといえるでしょう。
新NISAを利用する際の注意点を知ろう
現行NISAの課題を改善し、投資家にとってメリットの多い制度となった新NISAですが、利用時には注意しておきたいことがあります。ここでは、3つの注意点について解説します。
現行NISAでの運用分を新NISAにロールオーバーできない
現行NISAで運用している投資商品は、新NISAに自動で移管されることはありません。現行NISAでそのまま非課税期間満了まで運用するか、投資商品を一旦売却して現金化し、新NISAの原資として投資商品を買い付ける必要があります。
また、現行NISAのうち一般NISAは、非課税保有期間の満了後にロールオーバーが可能ですが、新NISAが始まる2024年以降にはできなくなります。このため、満了分の投資商品については課税口座に払い出して運用するか、一旦売却して現金化し、新NISA口座を活用して再度投資を行う必要があります。
投資できる商品には制限がある
新NISAでは、すべての株式や投資信託を購入できるわけではありません。もともとNISAは「家計の安定的な資産形成を支援するため」につくられた制度であることから、その目的に合わない投資商品は除外されています。
・つみたて投資枠
現行NISAのつみたてNISAと同様で、長期の積立・分散投資に適した公募株式型投資信託(金融庁の基準を満たすもの)に限られます。
・成長投資枠
現行NISAの一般NISAと異なり、上場株式・投資信託などのうち、株式からは整理・監理銘柄が除かれ、投資信託からは信託期間が20年未満のものや毎月分配型商品などが除外されています。
現行NISAでは購入可能な投資商品が新NISAでは購入できないケースもあるため、詳しくはNISA口座のある金融機関でご確認ください。
口座の開設が可能なのは18歳以上のみ
新NISAの新規口座開設が可能なのは18歳以上の人です。年齢の判定基準は、その年の1月1日時点の年齢が基準となります。
したがって、その年の1月2日以降に誕生日を迎え18歳になる人はその年にNISA口座を開設できません。例えば、2024年1月2日に誕生日を迎える場合、口座開設が可能になるのは2025年1月1日からとなります。
なお、現行NISAには、ジュニアNISAという制度があり20歳未満の人が口座開設できました。新NISAにはジュニアNISAに対応する制度はなく、これまでのジュニアNISAの投資可能期間は2023年末で終了します。これまでのジュニアNISAの投資商品は18歳になるまでは非課税で保有可能です。
新NISAの特徴を知って、資産形成を見直すきっかけに!
2024年スタートの新NISAは、現行NISAを改善し、長期的な資産形成に役立つ制度になりました。特に、制度が恒久化され、年間投資上限額や非課税保有限度額の大幅増額、非課税保有期間の無期限化は、長期的な資産形成を目指す人にとって大きなメリットといえます。
今回解説した新NISAに限らず、資産形成には、最適な運用資産のバランスを維持しながら収益を最大化する視点が欠かせません。自分のライフスタイルやライフステージに合った運用資産の方法や、バランスの良い資産ポートフォリオを意識した資産形成を目指しましょう。
■関連記事:資産形成に最適なポートフォリオの組み方のポイントとは?
※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。㈱メイクス・㈱メイクスプラスにおいては、何ら責任を負うものではありません。