不動産投資ローンを繰り上げ返済するメリット・デメリットを知ろう

最終更新日:2023.07.13 (公開:2023.06.15)

不動産投資で資産運用をする際には、物件購入に必要な資金を不動産投資ローンを利用して調達するのが一般的です。

金融機関などから融資を受けるときには、将来にわたる返済計画を立てて、毎月返済を行っていきますが、手元資金に余裕があれば「繰り上げ返済」を選択することもできます。「繰り上げ返済をすることで利息分をカットできる」といわれていますが、その選択は本当に得策なのでしょうか?

そこで今回は、不動産投資ローンの「繰り上げ返済」のメリットとデメリットなどについて解説します。

不動産投資における繰り上げ返済とは?

不動産投資ローンを利用した場合、返済計画にしたがって元金と利息を毎月返済します。繰り上げ返済とは、収入が増えたり一時的に手元資金に余裕ができたりしたとき、毎月の返済とは別に、予定より早く一部の元金を返済することを指します。

繰り上げ返済を行うと返済残高が減ります。この残高減少により、将来的に支払う予定だった利息額も削減されるため、返済総額を減らす効果があります

★ポイント★
繰り上げ返済を行う際には、事前に金融機関などとの契約内容や手数料について確認することが重要です。また、将来のキャッシュフローの見通しや投資計画を考慮し、適切な繰り上げ返済額を検討することも大切です。

不動産投資ローンには2つの繰り上げ返済方法がある

不動産投資ローンの繰り上げ返済方法には「返済期間短縮型」と「返済額軽減型」2つの種類があります。それぞれの特徴を解説します。

繰り上げ返済の方法(1)「返済期間短縮型」

返済期間短縮型は、繰り上げ返済後も毎月の返済額は変わらずに、返済期間を短縮する方法です。繰り上げ返済によって元金が減ることで、当初の予定よりも完済までの期間が短くなり、かかる予定だった利息分も軽減されます。

繰り上げ返済の方法(2)「返済額軽減型」

返済額軽減型は、繰り上げ返済後も完済までの返済期間は変わらずに、毎月の返済額を減額する方法です。当初の完済期間はそのままなので、繰り上げ返済によって元金が減った分、毎月の返済額を減らすことができます。

不動産投資ローンを繰り上げ返済するメリットを知ろう

不動産投資ローンで繰り上げ返済をする主なメリットについて解説します。

利息を含めた支払い総額が減る

繰り上げ返済の最も大きなメリットは、利息を含めた支払い総額が減ることです。

不動産投資ローンの返済方法には「元利均等返済」と「元金均等返済」の2つがあり、毎月の返済額の内訳が異なります。

・元利均等返済
毎月の返済額が一定。返済額の内訳は、返済当初は元金が少なく利息が多い。返済が進むと元金が多く利息が少なくなる。
・元金均等返済
毎月の返済額の内訳は、元金が一定。返済当初は返済額が大きくなり、返済が進むと返済額が少なくなる。

どちらの場合も、返済するのは「元金」と元金にかかる「利息」の合計額ですので、繰り上げ返済をすることで将来の利息負担を減らす効果があります。ただし、繰り上げ返済をする時点で、元金がどれだけ残っているのかは「元利均等返済」か「元金均等返済」かによって異なる点に留意しましょう

金利上昇時のリスクヘッジができる

融資を受ける際、利息の料率を決める金利タイプは「変動金利」か「固定金利」のどちらかが設定されます。変動金利でローンを組む場合には、定期的に金利が見直されるため、もしも金利が上昇したときには支払う利息が当初の予定よりも増えることになります。

★ポイント★
金利が上昇する前に繰り上げ返済ができれば、当初の計画通りの返済総額に抑えられるほか、金利上昇の影響を低減できるでしょう。

不動産投資の拡大を目指せる

「返済期間短縮型」で繰り上げ返済をした場合、予定していた完済時期の前倒しができます。抱えている返済が早まることで、次の投資物件を購入するための資金調達(融資)を算段することができ、複数所有による不動産投資の拡大を目指せます。

関連記事なぜ投資用物件を複数所有するのか?その理由やメリットについて知ろう

キャッシュフローが改善する

「返済額軽減型」で繰り上げ返済をした場合、毎月の返済額を減額できます。返済額が減った分、手元に残る現金が増えて、キャッシュフローの改善につながります。

物件の管理・運用には、入居者の退去による空室リスク、家賃の下落リスクや未払いリスク、突発的な設備故障や修繕リスクが起こり得ますが、キャッシュフローに余裕が生まれることで、安定的な運用ができるようになるでしょう。

不動産投資ローンを繰り上げ返済するデメリットを知ろう

一見、メリットしかないと思える繰り上げ返済ですが、留意しておきたいデメリットもあります。ここからは、繰り上げ返済の主なデメリットについても見ていきましょう。

手数料がかかる場合がある

金融機関などによっても異なりますが、繰り上げ返済をする際の手数料を無料としているところもあれば、手数料を細かく規定しているところもあります。

また、手数料がかかる同じ金融機関でも、借り入れ条件や繰り上げ返済の時期によって手数料が変わることもあります。

■繰り上げ返済の手数料が変わる条件例
・金利タイプが、固定金利か変動金利か
・借入日からの経過期間
・一部繰り上げか、全部繰り上げか

このため、融資を受ける際には、当初は予定していない場合であっても、繰り上げ返済時の手数料がどのように設定されているのか確認しておくことが大切です。

手元のキャッシュが減る

繰り上げ返済は、手元に資金がある場合に行われますが、当然、返済した分のキャッシュが減ってしまうことは最大のデメリットといえるでしょう。

★注意★
もしも繰り上げ返済をして手元のキャッシュが少なくなった状態で、突発的な設備の修理・交換、物件の修繕などの出費が発生した場合には、対応できなくなる恐れがあります。資産運用以外にも、突然の病気やケガなどに見舞われて、生活資金への影響が出るケースもないとは限りません。

金利によってはレバレッジ効果が低くなる

資産運用では、レバレッジ効果(小さな資金で大きな運用益を得ること)が重要です。不動産投資ローンの繰り上げ返済ができる余剰資金があったとしても、金利によってはレバレッジ効果が低くなる恐れもあります。

例えば、1%の低金利ローンを繰り上げ返済するよりも、5%の利回りの投資信託へ余剰資金を投資したほうが、資産全体のポートフォリオには好影響をもたらします。

★ポイント★
不動産投資だけでなく資産全体のポートフォリオに目を向けることが重要です。

不動産投資ローンで繰り上げ返済する際の注意点を知ろう

ここでは、不動産投資ローンで繰り上げ返済をする際に知っておきたい2つの注意点を解説します。

確定申告時に経費計上の金額が変わる

一般的に、金融機関などからの借入金は不動産投資の経費として計上することが認められています。繰り上げ返済をすると、予定していたローンの利息が変わり、確定申告をするときに経費計上する金額が変わります。

★注意★
繰り上げ返済を行ったときの確定申告では、不動産所得の金額が以前よりも黒字になって所得税額が上がる可能性があるため注意しましょう。

関連記事不動産投資の「税金対策」には注意が必要?仕組みが分かる基礎知識

繰り上げ返済する目的を決めておく

ここまでに解説してきたように、不動産投資ローンの繰り上げ返済をすることには、メリットとともにデメリットもあります。「余剰資金があるから繰り上げ返済しよう」「低金利のうちに繰り上げ返済しよう」という考え方は間違ってはいませんが、長期的な資産形成という観点で資産全体のポートフォリオを見たときには、別の選択肢もあり得ます

そのため、何のために繰り上げ返済を行うのかや、自身の資産形成にどのような効果があるのかといった目的を決めておくことがポイントです。

結局、繰り上げ返済はするべきなのか?判断基準のポイントまとめ

ここまで、不動産投資ローンの繰り上げ返済の概要をはじめ、そのメリットとデメリットを解説してきました。

繰り上げ返済が資産形成にどのような好影響を与えるかは人それぞれですが、考えられる繰り上げ返済の判断基準のポイントをまとめました。あくまでも判断基準の例になりますが参考にしてみてください。

判断基準1:余剰資金があるかどうか

手元の余剰資金が少ない場合には、物件管理・運用で発生するさまざまなリスクに備えるため、繰り上げ返済はおすすめできません。一時的・短期的なキャッシュフローだけでなく、長期的な資金繰り計画も考慮しましょう。

判断基準2:運用資産ポートフォリオを見る

自身の資産運用ポートフォリオを見て、不動産投資ローンを繰り上げ返済することで十分な利回り効果を得られる場合には、繰り上げ返済をするのもおすすめです。

★ポイント★
余剰資金をほかの投資へ回したほうが資産全体の運用効果が高まるのであれば、株式などほかの投資を検討するほうがいいでしょう。

判断基準3:利益の再投資による効率化を見る

節税効果によるプラス面や、物件を複数所有する人が売却益を得た場合、余剰資金を繰り上げ返済に回すことで「不動産投資で得た利益を再投資する」ことが可能です。資産運用の効率化(複利効果)が見込める場合は、繰り上げ返済をするのも一つの方法でしょう。

資産運用のポートフォリオを考えた繰り上げ返済の検討を!

不動産投資ローンの繰り上げ返済には、将来的に支払うはずだった利息を減額したり、完済が早まることで次の物件投資に目を向けたりできるなど、資産拡大の機会ともなり得ます。一方で、不動産投資以外の資産も含めた資産全体のポートフォリオに、どのような影響をもたらすのかという視点もポイントです。

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※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。㈱メイクス・㈱メイクスプラスにおいては、何ら責任を負うものではありません。

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メイクス100年不動産ナビ編集部

メイクス100年不動産ナビ編集部は、不動産投資をはじめ、資産形成についてワクワクしてもらえるようなの情報の提供を目指しています。初心者向けの情報から既にオーナーの方、知見のある方に向けた、不動産投資や資産形成についての疑問を客観的な視点から発信しています。

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