マンションを売却するとき、まず気になるのが「どのような手続きが必要なのか?」や「どのようなポイントに注意すればいいのか?」といった点でしょう。
そこで今回は、マンション売却時の手続きの流れを、分かりやすいステップ別に解説します。また、売却に伴う主な費用や、事前に知っておきたい注意点などもご紹介します。
※ここでは一般的なマンション売却の手続きを記載しています。個別ケースによって必要な手続きが異なる場合がありますのでご了承ください。詳しくは不動産会社など専門家にご相談ください。
目次
STEP1:売却までの期間や全体の流れを把握する
マンションをスムーズに売却するためには、売却までの期間や、個々の事務手続きについて事前に知ることだけでなく、全体の流れを把握することが重要です。
一般的に、マンション売却には4カ月から6カ月の期間が必要とされています。余裕を持って、売却したいタイミングの6カ月以上前から売却に臨むと安心です。
また、マンション売却には「売却前」「売却活動」「売却後」と3つの段階があります。各段階で必要な手続きや事前準備について、ざっくりとでも把握しておきましょう。
STEP2:必要書類を用意しておく
マンション売却をスムーズに進めるためには、売却に向けた準備と並行して必要書類をそろえておく必要があります。
マンション売却時に必要となる主な書類は以下の通りです。
・登記済権利証または登記識別情報通知書
・購入時の売買契約書と重要事項説明書
・リフォーム履歴の確認資料
・固定資産税納付書
・ローン残高証明書や返済償還表
・実印と印鑑証明書
・銀行通帳
・本人確認書類
など…
書類の中には手配に時間がかかる場合もあるため、早めに準備しておきましょう。
なお、印鑑証明書はそれ自体に有効期限はありませんが、提出先が「発行から3カ月以内」などと期限を設定しているケースが一般的なため、必要なタイミングで用意するのがおすすめです。
STEP3:マンションの査定を依頼する
必要な書類をそろえたら、不動産会社へ査定を依頼しましょう。
査定とは…
物件情報や周辺相場をもとに、不動産会社が「いくらで売れそうか」を予想した算出価格を提示すること
査定額は不動産会社によってばらつきがあるため、マンションの査定を依頼する際は、複数の不動産会社に依頼するのが一般的です。複数の不動産会社からの査定額を参考に査定額の幅を知ることで、所有するマンションの価値を客観的に把握できるメリットもあります。
STEP4:不動産会社と媒介契約を締結する
査定の後は、マンション売却の仲介を依頼する不動産会社と媒介契約を締結します。
媒介契約とは…
売却活動の具体的な方向性や売却条件、売却成立時の報酬額などを定めた契約です。
売却活動を始める前に結ぶこの媒介契約には、以下の3種類があります。
・一般媒介契約(依頼は複数社にOK、自分で買主探しも可能)
・専任媒介契約(依頼は1社のみ、自分で買主探しも可能)
・専属専任媒介契約(依頼は1社のみ、自分で買主探しは不可)
それぞれの契約種別によって、売主が活動できる範囲が変わったり、依頼できる不動産会社の数に制限があったりします。媒介契約の違いや特徴については、後半でも詳しく解説していますので参考にしてください。
STEP5:売り出し価格を決定する
媒介契約の締結後は、所有するマンションの売り出し価格を決めます。
売り出し価格とは…
購入希望者に提示する販売価格。
売り出し価格を決める際は、査定額を参考にしながら不動産会社とよく相談し、適正価格から大きくかけ離れないように設定します。可能な限り自分でも相場を把握しておき、できるだけ高く売れるラインを探してみましょう。
STEP6:売却活動を始める
次に、マンションの売却活動を始めます。売却活動の中心となるのは、購入希望者への広告活動です。ただし、広告活動は、基本的に不動産会社が実施してくれるため、基本的に売主が広告活動をする必要はありません。
売却活動と並行して、物件が空室の場合には内覧準備を始めます。居室内、水回りなどを清掃し、必要に応じてプロのハウスクリーニング業者へ依頼するのもいいでしょう。
★ポイント★
ワンルームマンション投資の場合には、入居者がいる状態で所有者が変わる「オーナーチェンジ」のケースがほとんどです。入居者は引き続き居住してもらえるので、その際は、内覧準備は不要です。
STEP7:買主と売買契約を締結する
条件交渉などが終わり正式に買主が決定したら、マンションの売買契約を締結します。
売買契約を行う際は、買主・売主・不動産会社で契約書類をやりとりします。3者が対面で同席してやりとりすることもあるようですが、一般的には郵送での手続きになることが多く、対面場所への移動や時間をとられることもありません。。
その後、買主・売主の両者が契約書に署名・捺印をすることで契約締結となります。一旦、契約を締結すると、署名・捺印後の契約内容の変更は難しくなります。また、売買契約後にキャンセルすると違約金が発生することもあるため、署名・捺印の前に、契約書の内容をしっかり確認することが重要です。
STEP8:マンションを引き渡す
マンションの売買契約が完了したら、物件を引き渡します。
ファミリータイプマンション:引き渡しの当日、買主・売主・不動産会社・金融機関の担当者の4者が立ち合い、引き渡しの手続きを行うこともあります。
投資用ワンルームマンション:オーナーチェンジの場合には、代金決済時の引き渡しではいことがほとんどで、立ち合いなどの手間もかかりません。
また、投資用ワンルームマンションの場合には、買主が不動産会社と契約してから決済まで、3カ月程度かかることを覚えておきましょう。
STEP9:確定申告をする
マンションを売却して収入を得た場合は、取得費や仲介手数料などの経費を差し引いた額が譲渡所得として扱われるため、確定申告をして譲渡所得税を納めなければなりません。確定申告を行わないと延滞税などが課せられるリスクがあるため、必ず確定申告をしましょう。
また、マンション売却による損失が出た場合でも、確定申告を行うことで税金還付を受けられるケースや、翌年以降にその損失を繰り越せる特例を受けられるケースがあります。そのため、「譲渡利益の有無にかかわらず確定申告をする」と覚えておくのがおすすめです。
確定申告は、マンションを売却した翌年の確定申告期間中(原則2月16日~3月15日)に行います。期日に遅れないように早めに準備をしておきましょう。
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マンションの売却時にかかる主な費用
マンションの売却時には、不動産会社に支払う仲介手数料や、司法書士へ依頼する登記費用などが発生します。主な費用の内容や費用感について見ていきましょう。
仲介手数料
仲介手数料とは…
売主が不動産会社に支払う手数料のことで、買主との売買契約が成立した際に発生します。
仲介手数料の上限は宅地建物取引業法で定められており、不動産会社はその上限を超える手数料を請求することはできません。
例えば、売却価格が400万円を超える場合の仲介手数料の上限額の目安は、以下の式で計算できます。
仲介手数料の上限額=[売買価格(消費税別)×3%+6万円]+消費税
仲介手数料は高額になるため、おおよその金額を把握しておくことをおすすめします。
印紙代
マンション売買における売買契約書は、課税文書に該当するため印紙税の納付義務が発生します。
印紙税は、収入印紙を購入して売買契約書に貼って消印をすることで税金を納めたことになります。マンションの売却契約金額によって印紙代(納税額)は以下のように変わります。
契約金額(例) | 納税額(本則) | 納税額(2024年3月31日までの軽減措置適用) |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
租税特別措置法により、不動産譲渡に関する契約書については印紙税の軽減措置が適用され、2024年3月31日までは税率が引き下げられています。
登記費用
マンションの売買において必要となる登記にはいくつかの種類がありますが、ここでは売主が行う抵当権抹消登記について説明します。
抵当権とは…
金融機関などが貸付を行った場合に、土地や建物を担保にする権利を指します。抵当権はローンを完済後も自動的に抹消されないため、司法書士へ依頼するか売主自身で抹消手続きをしなければなりません。
抵当権抹消登記にかかる費用は、登録免許税や抵当権抹消確認費用などを合計すると、2,000円~5,000円程度が相場です。一般的には司法書士に依頼するのがほとんどで、したその場合は、別途数万円程度の報酬費用が発生します。
譲渡所得税
不動産売却時に得た利益にかかる所得税を「譲渡所得税」と呼びます。マンションに限らず土地や建物を売却して得た譲渡益には、譲渡所得税がかかります。
譲渡所得税は、不動産の所有期間によって長期譲渡取得または短期譲渡取得のいずれかで適用する税率が異なります。不動産を売却・譲渡した年の1月1日現在で、所有期間が5年を超える場合は長期譲渡取得、5年以下の場合は短期譲渡取得の税率が適用されます。
区分 | 所得税 | 住民税 |
長期譲渡所得 | 15% | 5% |
短期譲渡所得 | 30% | 9% |
なお、2013年から2037年までの期間は、2.1%の復興特別所得税もかかるため注意が必要です。
マンション売却前に知っておきたいこと
ここからは、マンション売却を有利に進めるためには、事前に知っておきたいポイントについて解説します。不動産投資でマンション売却を考える場合は、以下の記事でも詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
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賃貸管理会社の解約条件を確認する
物件管理会社との間で、入居者との賃貸契約や物件管理に関する委託管理契約を結んでいる場合、解約金が発生します。契約条件について詳細を事前に確認しておくといいでしょう。
一方、物件購入から売却時のフォローまでワンストップで対応している管理会社などの場合には、解約金がかからないケースもあります。売却時になって初めて解約金に気づいても後戻りはできません。そのため、投資用物件を探す段階から、売却時のフォローまでを想定して不動産会社を選ぶのがポイントといえます。
マンション市場が活発な時期に売り出す
一般的に、不動産業界は2月から3月にかけてが繁忙期とされ、新年度前の引っ越しシーズンに向けて市場が活発化する傾向にあります。
ファミリータイプのマンションを売却予定の方はこのような需要が高い時期が狙い目です。
しかし、投資用ワンルームマンションの場合には、シーズンの閑散期・繁忙期は関係ありません。
不動産市況の影響を受けるため…
・金利の動向
・物件の所有年数
・ローン残高
上記を考慮して売却時期を判断する必要があります。所有年数は、5年以下か5年を超える年数で売却したかによって、売却時にかかる譲渡所得(長期譲渡所得・短期譲渡所得)の税率が変わります。
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マンション売却を得意としている不動産会社に依頼する
不動産会社は数多く存在しますが、すべての不動産会社がマンション売却に精通しているわけではありません。そのため、過去の取引実績についてリサーチし、マンション売却を得意とする不動産会社を見つけることが重要なポイントです。マンション売却を得意としている不動産会社であれば、マンション需要に特化した情報や専門知識を持っていることもあり、売却を有利に進められる可能性が高いでしょう。
自分の希望にあう契約方法を選択する
売却ステップの説明でも触れたように、媒介契約には3種類があります。3つの媒介契約の違いを以下の表にまとめました。
種類/項目 | 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 |
契約できる不動産会社の数 | 複数の不動産会社と契約可能 | 1社とのみ契約可能 | 1社とのみ契約可能 |
自分で買主を見つける | 可能 | 可能 | 不可 |
不動産会社からの状況報告義務 | 報告義務なし | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
■一般媒介契約の主な特徴
一般媒介契約は複数の会社に仲介を依頼できるため、買い手の幅が広がるメリットがあります。一方、不動産会社からの状況報告義務がないため、自分から連絡して状況を確認する必要があります。そのため、不動産の売買に慣れている人向けの契約方法といえます。
■専属専任媒介契約・専任媒介契約の主な特徴
専属専任媒介契約と専任媒介契約は、契約できる不動産会社が1社に限定されてしまうものの、不動産会社が専門知識や自社の強みを活かして買い手を探してくれます。売却希望時期が決まっている場合や、こまめな連絡など手厚いサポートを望む人向けの契約方法です。
マンション売却手続き時の注意点
ここでは、マンション売却の手続きの注意点について解説します。
担当の営業とこまめに連絡をとっておく
マンションの売却活動をスタートさせたら、進展がないか、こまめに不動産会社の担当者に連絡をとりましょう。特に、一般媒介契約の場合は不動産会社からの報告義務がないため、自分から積極的にコミュニケーションをとらなければ後回しにされてしまう可能性もあります。
★ポイント★
仕事などで忙しい場合や、自分から連絡するのが苦手な場合は、定期的に不動産会社から報告を受けられる専任媒介契約か、専属専任媒介契約を選ぶといいでしょう。
瑕疵(かし)を正確に伝える
物件に何らかの不具合がある状態のことを瑕疵(かし)といいます。この瑕疵を正確に伝えないと「契約不適合責任」を問われる可能性があります。契約不適合責任に関する法令では、売買契約において買主に引き渡した目的物の種類や品質、数量が契約内容に適合していなかった場合、売主が買主に対し責任を負うこととしています。
2020年4月の民法改正によって「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へと改められ、売主の責任がより大きくなりました。契約不適合責任を問われないようにするためにも、物件の瑕疵について売買契約書に明確に記載し、買主にも瑕疵について説明しておくことが大切です。
マンション売却前に手続きの流れや注意点をしっかり確認しておこう
マンションを売却する前には、売却に向けた全体の流れや期間、手続きにかかる費用などを事前に確認しておくことが大切です。また、注意点もしっかり把握しておき、希望する計画に支障が出ないように進めましょう。
ワンルームマンション投資の実績が豊富なメイクスでは、不動産投資の出口戦略(売却)を考慮した最適なサポートが可能です。専門知識を持ったコンサルタントがご相談を承っていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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