不動産投資信託(REIT)は、少額で不動産に投資できることで注目を集めていますが、中には「不動産投資と何が違うのかよく分かっていない…」という方も多いのではないでしょうか?
今回は、不動産投資信託の基礎知識をはじめ、投資する際のメリットと注意点、不動産投資との違いを解説します。
目次
不動産投資信託(REIT)とは?
不動産投資信託(REIT)とは、不動産投資を行う法人が投資家から資金を集め、不動産に投資、運用を行う仕組みです。不動産投資法人が不動産運用で得た利益は投資家に分配されますが、損失が出た場合は、元本割れが発生する可能性もあります。
また、不動産投資信託は株式と同じように、有価証券として購入や売却ができるため、10万円単位の少額から投資可能です。
不動産投資信託は世界中で行われていて、日本に住みながら、海外の不動産投資信託に挑戦することもできます。なお、日本の不動産投資信託はJ-REITと呼ばれており、東京証券取引所経由で購入可能です。
■参考サイト:
REIT | 日本取引所グループ
不動産投資信託(REIT)のメリット
不動産投資信託(REIT)には、不動産投資や他の投資と比較したときにさまざまなメリットがあります。
ここでは、代表的な次の4つのメリットを紹介します。
- 少額から投資可能
- 分散投資ができる
- 専門家が運用してくれる
- 流動性が高い
少額から投資可能
一般的に不動産投資では、ワンルームマンションなどの低価格の不動産でも数百万~数千万円の自己資金を用意しなければなりません。
対して不動産投資信託の場合は、投資先にもよりますが、1口10万円程度から投資できるものも多いです。そのため、「不動産に投資してみたいが、まとまったお金が手元にない」という場合でも、比較的手軽に始められます。
分散投資ができる
不動産投資では一度の投資額が高額になってしまうため、複数の投資先に分散させることは難しくなります。
一方、不動産投資信託は1口あたりの金額が少額なため、複数の投資先への分散投資をしやすく、リスクを減らせることが特徴です。不動産投資信託は、日本の法人だけでも数十種類はあり、複数の投資先に分散させやすくなっています。
また、1口あたりの金額が少ないことで、不動産以外の投資との併用もしやすく、並行して他の投資に挑戦したい場合にも向いています。
専門家が運用してくれる
不動産投資を行う場合は投資家自身で不動産の運用を行ったり、運用を代行してもらえる会社を探したりしなければなりません。しかし、不動産投資信託は、投資先の不動産の選択や運用を専門家が行う点も魅力の一つです。
初めて不動産に投資したい場合は、どのような投資先を選ぶと良いのか判断が難しいため、専門家へ委託できる不動産投資信託は挑戦しやすいです。また、不動産投資信託であれば直接運用に関与することはないため、ノウハウや運用にかける時間がない場合でも気軽に投資できます。
ただし不動産投資信託では、不動産を運用して入居者から直接、家賃収入を得ることはできない点には注意が必要です。
流動性が高い
不動産投資信託は不動産投資と比較して、資産の流動性が高い点もメリットです。流動性とは、資産を現金にしやすい程度を示す言葉で、一般的には流動性が高いほうが資産を売却しやすいため、扱いやすい資産とされています。
不動産投資の場合、不動産の買主を見つけて売却しなければ現金化できず、流動性は他の資産と比較して低いです。それに対して不動産投資信託の場合は、株式のように証券を売買でき、買い手も多いため、流動性は高めです。
不動産投資信託(REIT)の注意点
不動産投資信託(REIT)にはメリットが多いですが、投資前に知っておきたい注意点もいくつかあります。
ここでは、次に挙げるような注意点を解説しますので、投資を始める前にはチェックしておきましょう。
- 倒産や上場廃止による損失リスクがある
- 実物不動産を所有できない
- 海外投資ならではのリスクがある
倒産や上場廃止による損失リスクがある
不動産投資信託は不動産投資を行う法人であるため、倒産のリスクがあります。また、東京証券取引所に上場している法人の場合、株主数や株式数の条件を満たさなくなったり、運営に不正があったりした場合に上場廃止となってしまいます。
上場廃止になると、取引所で売買ができなくなり、所有している不動産投資信託を売却できなくなってしまう可能性があるのです。
また、株式と同じように経済や社会情勢の影響を受けることもあり、状況によっては証券の資産価値が大きく下がるケースもあります。例えば、リーマンショックや新型コロナウイルスの流行時は、国内外の不動産投資信託の価値が暴落しました。
■参考サイト:
Jリート市場は▲32%下落。過去のショック安局面と比較する~リーマンショック級のダメージを回避できるか~ |ニッセイ基礎研究所
【J-REIT20周年企画】J-REIT価格と利回りの動向、投資の目安/アイビー総研 関 大介 – JAPAN-REIT.CO
実物不動産を所有できない
不動産投資では実物の不動産を所有することで、資産の売却益だけではなく、賃貸経営を行い賃料収入が得られます。空室のときには利益が生まれないというリスクはありますが、入居者がいれば毎月安定して収入を得られる点は不動産投資の大きな特徴です。
一方、不動産投資信託は法人へ投資するため、実物の不動産を所有するわけではありません。そのため、高額な投資を行ったとしても現物資産を所有できない点はデメリットといえます。また、分配金は基本的に1銘柄あたり年2回です。
こうした点を考慮し、不動産投資信託と不動産信託のどちらを選ぶか検討しましょう。
【関連記事】実物資産とは?種類や投資メリット・デメリットの基礎知識を解説
海外投資ならではのリスクがある
海外の不動産投資信託にも手軽に投資ができますが、J-REITにはないリスクがあるため注意しなければなりません。海外REITの主なリスクは「為替変動リスク」と「カントリーリスク」です。
【為替変動リスクとは】
日本円と購入先通貨の為替レート変動による資産価値の低下を指します。購入時点の為替レートよりも円安になった場合、利益は高くなりますが、円高となった場合は利益が減ってしまいます。
【カントリーリスクとは】
投資先の国の政治や経済の情勢によって、資産価値が下落してしまうことです。例えば、戦争や紛争、経済のインフレ、自然災害が発生すると不動産の価値は下落しやすいため、海外REITの価値も下がってしまう可能性があります。
不動産投資信託(REIT)と現物の不動産投資の違いとは?
不動産投資信託(REIT)と現物の不動産投資は、どちらも不動産に関連した資産運用ですが、両者には大きな違いがあります。
<現物の不動産投資と異なるポイント>
- 不動産に投資するものの、実際に不動産を購入、運用するのは投資法人
- 投資家に物件の所有権はない
- 収益は投資法人からの分配金
ほかにも、さまざまな違いがありますが、代表的なものを確認していきましょう。
初期投資費用の違い
不動産投資信託の1口あたりの金額が少額である点は、不動産投資との大きな違いです。ただし、現物の不動産投資の場合も、必ずしも初期投資で全額支払う必要はなく、不動産投資ローンを組むことによって少額で始めることはできます。
不動産投資ローンの内容にもよりますが、マンションを1室単位で購入する「区分投資」なら毎月十万~数十万円で不動産を購入することも可能です。また、ローンを組むことで自己資金よりも高額な投資に挑戦できる点もメリットです。
少額の資産で高額な投資を行うことを「レバレッジ(てこ)効果」と呼びますが、高額のリターンにつながりやすくなっています。
【関連記事】不動産投資はいくらから始められるのか?頭金など自己資金の目安は?
安定性の違い
不動産投資信託は有価証券としての性質を持っているため、現物資産と比較すると安定性が低いという特徴があります。経済のインフレや株価の下落など、経済状況の影響を受けて資産価値が変動しやすいです。
それに対して、現物の不動産投資は不動産を現物資産として所有できるため、不動産投資信託と比較して資産価値が下落しにくいです。例えば、インフレが発生してモノの価値が高騰した場合、不動産の価格も高騰しやすいため、有価証券よりも資産価値が下がりにくくなっています。
運用にかかる手間の違い
不動産投資信託は、投資後の運用は不要であるため、資産価値の確認以外に運用の手間はかかりません。
それに対して現物の不動産投資は、物件の選定やローンの申し込み、物件管理や入居者への対応など、運用に関して幅広い対応が必要です。実際にはパートナーとなる不動産会社が、購入や運用のサポートを行ってくれますが、基本的には自身の意志で購入決断や契約の事務作業に携わる必要があります。
このため、不動産投資に挑戦したい場合は、不動産運用を親身にサポートしてもらえるパートナー企業を見つけることが大切です。
プロによるサポートの違い
先にも触れたように、不動産投資信託はプロが不動産運用を行うため、サポートを受けて投資家自身が運用をする必要はありません。
現物の不動産投資の場合も、物件の管理は自分で行わずに、プロである専門管理会社に委託するのが一般的です。どの範囲まで委託するかによって差はありますが、自身ではほぼ管理業務をしないで不動産投資を行うことも可能です。
確定申告についての相談会など、不動産オーナー向けのアフターフォローを充実させている不動産会社もあり、運用にかかる手間は大きな問題にはなりにくいといえます。
リスクの違い
不動産投資信託は、経済や社会情勢の影響を受けやすいというリスクがあります。それに対して現物の不動産投資は、入居者がおらず家賃収入がなくなる「空室リスク」や、経年劣化などによる「家賃低下リスク」、災害が発生し修繕費用が発生する「災害リスク」があります。
こうした現物の不動産投資におけるリスクは、どれも具体的なリスクヘッジ方法が分かるため、対処しやすいです。一方、不動産投資信託のリスクは、経済情勢という予測が難しいものであるため、先行きが不安になりやすいともいえます。
【関連記事】不動産投資の8つのリスクと回避のための対策について【徹底解説】
不動産投資信託(REIT)は手軽に始められるがリスクも高い
不動産投資信託(REIT)は手軽に不動産へ投資できますが、実際に不動産を所有できないというデメリットもあります。また、経済や社会情勢の影響を受けやすく、価値が暴落するリスクもあります。
今回、解説したように、現物の不動産を購入することで得られるメリットを魅力的に感じ、オーナーとして自身で物件を運用したい場合は、不動産投資信託ではなく現物の不動産投資がおすすめです。
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