不動産投資で投資用物件を決める際、「どの物件に投資するのか」を見極めるポイントの一つが物件の立地条件です。良い立地条件に建てられた物件であれば、賃貸需要が安定して見込めるほか、資産価値の維持・向上も見込めます。
不動産の価値を見極める判断材料は、投資家の経験や周辺エリアの売買実績などさまざまですが、重要な指標に「路線価」があります。一般的には、相続税や固定資産税の算出に用いられますが、不動産投資での活用方法をご存じないオーナーも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、路線価の意味や調べ方をはじめ、土地評価額の算出方法、不動産投資での活用方法について詳しく解説します。
目次
不動産投資に欠かせない「路線価」とは?
路線価とは・・・
「道路(路線)に面する標準的な土地の1平方メートル当たりの評価額」のことです。
土地には定価がないため、実勢価格(時価)を把握するのは困難です。そこで不動産取引では、土地の評価額を算出するために公的な基準として公表されている「路線価」が用いられています。
路線価には、相続税や贈与税を算出するために用いられる「相続税路線価」と、固定資産税などを算出するために用いられる「固定資産税路線価」の2つがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
「相続税路線価」の基礎知識
路線価は、相続税などの申告の便宜や課税の公平を図ることを目的として公表されているものです。そのため、単に路線価といえば「相続税路線価」を指すのが一般的です。
「相続税路線価」
相続税や贈与税にかかわる土地の評価額の基準となります。国税庁が、その年の1月1日を評価時点として、全国の民有地(宅地・田・畑・山林など)の路線価について算出し、毎年7月に「財産評価基準書」として公表しています。
年間の地価変動などを考慮した上で、地価公示価格(国土交通省が公示する土地の価格)などをベースにした価格の約80%を目安にして定められます。路線価が定められていない地域は、土地の評価額を評価倍率で算出します。
■参考サイト :No.4604 路線価方式による宅地の評価|国税庁
「固定資産税路線価」の基礎知識
「固定資産税路線価」
地価公示価格や地価調査価格(都道府県知事が公示する土地の価格)、不動産鑑定評価価格をベースにした、道路に面する標準的な土地1平方メートル当たりの価格です。固定資産税の納付先となる各市町村(東京23区は東京都)が算定する点が相続税路線価と異なります。
固定資産税の算出基準となり、地価公示価格などの約70%を目安に定められています。基準年(3年ごと)の1月1日を評価時点として、基準年の4月ごろに公表されます。
■参考サイト :総務省|地方税制度|固定資産税
不動産投資で路線価を活用する方法
路線価は相続税や固定資産税にかかわる土地の評価額の基準となりますが、不動産投資ではどのように活用できるのでしょうか。
ここからは、以下の3つの活用方法をご紹介します。
・路線価から物件の土地の適正価格を算出する
・路線価から算出した実勢価格と査定価格のギャップを知る
・路線価の変化から将来の価格を予測する
路線価から物件の土地の適正価格を算出する
土地には公示価格や実勢価格が設定されておらず、取引を希望する土地の価格がすぐに把握できないケースがあります。そのような場合でも、路線価をもとに、候補物件の土地の適正価格を算出できます(家屋は固定資産税評価額から算出)。
実勢価格は公示価格の約110%といわれることが多く、路線価は公示価格の約80%が目安です。そのため、土地の価格の参考値は、以下の計算式で求められます。
実勢価格=(路線価÷0.8)× 1.1
あくまで参考値ですが、投資を検討している物件の土地の適正価格を把握するために活用できます。
路線価から算出した実勢価格と査定価格のギャップを知る
路線価から物件の土地の適正価格を算出できれば、「不動産会社が提示する土地の価格」と「適正価格」との差を数値として把握することが可能です。
★注意★
もし、不動産会社から提示された価格が適正価格よりも著しく高ければ、不当な価格が提示されている可能性があります。 ただし、土地の形状や周辺環境、利便性、需要、日当たりなどの要素を加味して土地が高値になっている場合もあり得ます。提示価格と適正価格に極端な差があれば、その理由について不動産会社に尋ねてみるのがおすすめです。
路線価の変化から将来の価格を予測する
土地の価格は、周辺環境や社会情勢などの変化により、需要が増減すると変動します。過去数年分の路線価を遡って確認することで、これまでにどのような価格変動があったかを分析できます。
路線価の推移分析をもとに将来的な価格の予想を立てることで、資産価値の維持や向上が期待できる地域の土地に投資することが可能です。
どうすれば分かる?路線価の調べ方
路線価は、国税庁のWebサイトにある「財産評価基準書」の路線価図で無料で調べられます。過去7年分を閲覧できるため、最新の路線価や過去の推移を把握するのに役立つでしょう。
■国税庁のWebサイト :財産評価基準書|国税庁
路線価図の見方が分からない場合は、所轄の税務署の「税についての相談窓口」に電話をしてみましょう。税務署で直接相談したい場合は事前予約が必要です。
路線価図の価額は1,000円単位となっており、交通量が少ない地域や取引事例がない地域には設定されていないこともあります。また、市街化調整区域内の山林や農地などにも定められていません。路線価の設定がない地域は、路線価図ではなく「評価倍率表」を確認しましょう。
■参考サイト :評価倍率表(一般の土地等用)の説明 |国税庁
不動産投資で路線価を使って評価額を算出する方法
ここからは、路線価を使って土地の評価額を算出する方法についてポイントを解説します。
実際の計算方法は土地の状態などでも異なるため、専門家に相談するのがおすすめです。そのため、参考程度にとどめておいて問題ありません。
土地の評価額の算出方法
基本的に、路線価を使って土地の評価額を算出する場合は、以下の計算式を用います。
土地の評価額=路線価×面積
ただし、評価額は接する道路の状況や土地の形状などによって、一定の補正率で路線価を補正するケースがあります。例えば、不整形地と呼ばれる旗竿地やうなぎの寝床状の土地、高低差がある土地などの場合は土地の用途が限られるため「不整形地補正率」で評価額を減額します。
また、一方のみが道路に面する宅地の土地評価は、奥行きの長さによって評価が変わるため「奥行価格補正率」で補正します。奥行価格補正率については、次の項目で詳しく解説します。
奥行価格補正率とは
調整率でよく使用されるのが「奥行価格補正率」です。
奥行価格補正率とは・・・
路線価が定められている地域において、土地の奥行きが長すぎたり短すぎたりするなどの問題があった場合に、資産価値を正当に評価するために減額補正をする際に用いられる値です。
ビル街地区、普通住宅地区といった地区区分ごとに、奥行距離に応じた補正率が定められています。例えば、普通住宅地区の場合には以下の表にある補正率になります。
【普通住宅地区の奥行価格補正率(一部抜粋)】
奥行距離 | 奥行価格補正率 |
---|---|
6m以上、8m未満 | 0.95 |
8m以上、10m未満 | 0.97 |
10m以上、24m未満 | 1.00 |
24m以上、28m未満 | 0.97 |
28m以上、32m未満 | 0.95 |
32m以上、36m未満 | 0.93 |
調整率には、ほかにも「二方路線影響加算率」「間口狭小補正率」「不整形地補正率」などがあります。
★ポイント★
その土地が補正対象となるかどうかや計算方法は複雑なため、詳しくは専門家に相談するのがおすすめです。土地の評価額を厳密に算出するときには、こうした補正率が適用されるケースがあることだけは認識しておくとよいでしょう。
土地を借りて不動産を建てる場合
土地を借りて不動産を建てる場合、土地には「借地権」が設定されるのが一般的です。
借地権は不動産投資にかかわりの大きい普通借地権をはじめ、いくつかの種類に分かれており、それぞれ評価方法が異なります。
<借地権の種類>
・普通借地権
・一般定期借地権
・事業用定期借地権
・建物譲渡特約付借地権
・一時使用目的の借地権
普通借地権では、土地の自用地評価額を算出し、その評価額に「借地権割合」を乗じて求めます。「借地権割合」とは、土地の価格の何割までが借地権に相当するのかを示す数値です。借地権割合は、借地事情が似ている地域ごとに設定されており、路線価図や評価倍率表で確認できます。
土地の価格は路線価以外の要素も影響する
路線価は土地の適正価格を把握する上で重要な指標ですが、路線価だけで土地の価格が決まるわけではありません。土地の価格は、土地の面積や形状、周辺環境、利便性、需要、日当たりなどの要素を加味して決まります。
そのため、「不動産会社が提示する土地の価格」と「路線価から算出した適正価格」には、相応に差異が生じる可能性があることを認識しておくようにしましょう。
路線価を理解して投資物件の将来性把握に活かそう
長期的な物件運用で資産形成を目指す不動産投資では、今回ご紹介した路線価や評価額算出方法を理解しておくと、より適切な投資判断が可能になります。
例えば、投資候補の区分マンションがある地域の土地の評価額が上昇傾向にあれば、「人気の立地である」という判断材料になり、安定した賃貸需要や資産価値の維持・向上が期待できるでしょう。
とはいえ、すべてのオーナーが複雑な計算式を用いて投資物件の路線価を分析しているわけではありません。大切なのは、オーナーにとって的確な判断材料を提示してくれる信頼できるパートナーの存在です。
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