不動産投資をする際、「どこまで経費として認められるのか分からない」と不安に思っている方も多いのではないでしょうか?中には「日常生活でかかる費用も経費扱いになるのか?」といった疑問を持つ方もいるでしょう。
そこで今回は、不動産投資でかかる経費として「認められるもの」と「認められないもの」について詳しく解説していきます。不動産投資をする際の経費について、押さえておきたいポイントを知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
そもそも経費とは?基本的な意味や経費計上が節税になる仕組み
はじめに、そもそも経費とはどのようなものなのか、経費の基本的な意味や、経費を計上することが節税になる仕組みについて見ていきましょう。
経費とは「事業を遂行するためにかかった費用」のこと
経費とは、業務を遂行するためのお金のことで、収益を得る目的で使用した費用のことです。分かりやすく言い換えれば「事業でお金を稼ぐ過程で必要になった費用」とも言えるでしょう。
例えば、営業スタッフの場合、営業先までの移動にかかった電車代やガソリン代などの交通費が経費となります。他にも、名刺などの消耗品や接待時の交際費など、業務を行う中でかかった費用であれば基本的に経費として扱うことが可能です。
ただ、業務をする上で必要な費用とはいえ、経費として計上できる費用と、計上できない費用があることも覚えておきましょう。後でまとめてご紹介しますが、経理の処理においては、経費として認められるものを正しく計上・処理することが重要です。
経費計上が節税になる仕組み
かかった費用を経費計上するメリットは、課税所得を減らすことで節税効果があることです。その仕組みを見てみましょう。
まず、経費として計上できるものを正確に把握しておくと、業務上、発生した経費を正しく算出して計上できます。
経費として認められた費用は、全て家賃収入(所得)から差し引くことが可能です。収入から経費を差し引くことで課税対象となる所得が減少するため、その分、税金が安くなって節税につながるという仕組みです。
■課税対象所得の計算式
家賃収入(所得)-経費=課税対象となる所得
計算式を見て分かるように、経費が増えるほど、課税対象になる所得が下がり(納税額が下がる)、節税効果が大きくなります。
ただ、経費の不正計上には、罰金や追徴課税などの重いペナルティーがあるので、経費計上について詳しくは専門家へ相談するのがおすすめです(※)。先述しましたが、経費になるものは正しく把握し、正確に計上することが不動産投資をはじめ資産運用において欠かせない視点です。
※新築ワンルームマンションの投資物件を専門に扱っている会社から購入した場合は、営業担当者などに相談すると経費の扱いを教えてくださる場合がほとんどです。
※本記事でいう「節税効果」とは、経費計上により課税対象となる不動産所得が減少するという意味です。経費計上によっても不動産所得が黒字となる場合、当該黒字部分に対応する納税額が発生します。
不動産投資に関わる経費のポイント
続いては、不動産投資に関わる経費の算出方法やポイントをご紹介します。毎年の確定申告でもチェックしておきたいポイントになりますので、ぜひ参考にしてください。
不動産所得の算出方法
ここでは会社員のケースで見ていきます。
会社員の給与所得は、全て源泉徴収された上で口座に振り込まれますが、不動産所得は、まず課税対象額を算出し、その後で課税所得に合わせた納税をします。
■不動産所得(課税所得)の算出方法
不動産所得=家賃収入-経費
このように、「家賃収入」から「経費」を差し引いて算出した「不動産所得」が課税対象となり、所得税や住民税が課されます。
また、不動産投資で必要となる費用(経費)にはたくさんの種類があるため、どの費用が経費として計上できるか理解しておく必要があります。
日ごろから経費をまとめておくと、確定申告の際に慌てることなく申告書類を準備できるので、経費計上できる費用を理解すると共に、普段から整理しておくのがポイントです。
不動産投資の経費は事前に見積もっておくことが大切
不動産投資にかかる経費は、不動産を購入して賃貸経営を始めた後に、意識的に増やしてもあまり意味がありません。物件購入後から運営に至るまでの経費は、ある程度の予測を立てられるので、必要経費を事前に見積もっておくことが大切です。
あらかじめ経費を見積もっておかないと、「経費が予測よりかからず節税効果が低くなる」「経費が予測よりかかりすぎて手元資金がショートする」など、リスクにつながる可能性があります。
物件購入の初期費用や毎月かかる管理費用、物件確認に必要な移動費用、税金など、不動産投資にかかる費用は、事前に見積もってまとめておきましょう。
また、物件購入時から引き渡し、その後の運営に至るまで、過程ごとに必要な経費を分けておくのもポイントです。
不動産投資でかかる経費として認められるもの
それでは、本題である不動産投資でかかる経費として「認められるもの」について見ていきましょう。
※一般的に「経費計上できる可能性が高い」項目について挙げています。個別状況によって解釈が異なる場合がありますので、必ず専門家もしくは物件を購入した会社の営業担当者にご相談ください。
1.租税公課
租税公課とは、不動産投資に関わる税金関係の経費です。
不動産投資では、一般的に以下のような税金が発生します。
・登録免許税
・印紙税
・不動産取得税
・固定資産税
・都市計画税
・事業税
・自動車税
固定資産税と都市計画税は、土地や建物など不動産を所有していることによってかかる税金です。
また、登録免許税や印紙税、不動産所得税は、不動産を購入する際にかかります。
事業税は、不動産投資を事業として行う際にかかる税金であり、規模を拡大していく中で必要になる税金です。
物件の管理業務に車が必要な場合、その目的で車を所有している場合には自動車税も経費扱いとなります。
■確定申告時に必要な書類
・領収書
・レシート
・支払い明細
・銀行口座の写し
2.損害保険料
投資用不動産を購入する際、自然災害や万が一の事故に備えて損害保険に加入しますが、それも経費に計上できます。
不動産投資で加入する保険は一般的に以下の3つがあります。
・火災保険
・地震保険
・施設賠償責任保険
上記の中で地震保険は単体で加入できず、火災保険と合わせて加入します。
火災保険や地震保険は高額になるので、経費計上できるのはうれしいポイントです。
■確定申告時に必要な書類
・保険会社からの支払証書
・銀行口座の写し
3.減価償却費
不動産投資の経費で最も節税効果のポイントとなるのが、減価償却費です。
減価償却費とは、所有する物件の資産価値の減少を、定められた期間に渡って少しずつ経費に計上できる制度のことです。
減価償却費の算出は、基本的に「償却資産の価格÷償却年数」で算出できますが、詳しく知りたい方は専門家への相談をおすすめします。
■確定申告時に必要な書類
・売買契約書
・領収書
4.借入金利息
不動産投資では、物件の購入にあたって銀行ローンを受けるのが一般的ですが、ローンの利息についても経費に計上できます。
利息については、月々の返済予定表に記載されてあるので、分かりやすく確認できます。経費として計上できるのはあくまで利息部分だけなので、間違って元本部分までは経費計上しないように注意しましょう。
■確定申告時に必要な書類
・銀行口座の写し
・銀行からの返済予定表
・建物取得分の金利の情報が必要なため、建物と土地の割合が分かるもの(売買契約書など)
5.管理費
不動産投資では、物件の管理を専門の管理会社に委託するのが一般的ですが、管理には管理手数料が発生します。マンションの場合は、物件全体の管理を管理会社に委託する管理費用が発生します。これらの費用についても必要経費として計上することが可能です。
物件を自己管理で運営する際にも、管理業務に関わる費用は基本的に計上できるため、あらかじめ該当する費用を調べておきましょう。
■確定申告時に必要な書類
・領収書
・支払い明細書
6.修繕費
物件の築年数が古くなると、経年劣化によって修繕費が発生します。
修繕費は、物件や修繕の度合いによっても変化しますが、経費として計上することが可能です。物件がマンションの場合は修繕積立金が徴収されますが、原則として、実際に修繕が行われて修繕が完了したその年の経費として計上できます。
また、次のような要件を満たせば、毎月の修繕積立金を経費計上することもできるとされています。
①区分所有者となった者は、管理組合に対して修繕積金の支払義務を負うことになること
②管理組合は、支払を受けた修繕積立金について、区分所有者への返還義務を有しないこと
③修繕積立金は、将来の修繕等のためにのみ使用され、他へ流用されるものでないこと
④修繕積立金の額は、長期修繕計画に基づき各区分所有者の共有持分に応じて、合理的な方法により算出されていること
賃貸の用に供するマンションの修繕積立金の取扱い|国税庁
ただ、経費になるからといって修繕費をかけ過ぎると、節税効果以上に修繕費がかさむケースもあるため注意が必要です。逆に利益が出過ぎている場合には修繕をすることで利益を調整できるので、上手に使い分けるのがポイントです。
■確定申告時に必要な書類
・領収書
※建物管理会社によっては、管理費、修繕積立金の明細書がもらえます。
7.旅費・交通費
所有する物件が自宅から離れた場所にある場合、自分の物件を見に行くための電車代やガソリン代、駐車場代、宿泊費などは経費に計上できます。
また、不動産会社が開催するセミナーに参加するための交通費も経費として計上することが可能です。まだ物件を購入していない段階でも調査目的で現地に行く場合、交通費や宿泊費をはじめとした調査費用も経費計上できます。
■確定申告時に必要な書類
・領収書
・レシート
8.広告宣伝費
空室が発生して入居者を募集する際、場合によっては不動産ポータルサイトなどに物件を掲載するための広告費がかかります。
最低限の広告費は管理会社の管理手数料に組み込まれていますが、それでは入居付けに苦戦するという場合、管理会社に追加で広告宣伝費を支払うのが一般的です。こうした広告宣伝費は、経費に含めることができます。
■確定申告時に必要な書類
・領収書
・振込明細
9.通信費
不動産投資に関わる業務の中で、不動産会社をはじめ取引先とのやりとりで必要になる通話料やインターネット回線料などの通信費も、経費として計上できます。
当然ですが、私用で使った範囲の費用は経費にできませんので注意が必要です。
■確定申告時に必要な書類
・領収書
・銀行口座の写し
10.新聞図書費
不動産投資では、物件情報だけでなく、市場や法律、行政の制度など多くの情報を得ることが重要です。多くの情報を得るためには、新聞の購読や書物の購入などが必要になりますが、それらの購入費も新聞図書費として経費に計上することが可能です。
ただ、これらは不動産投資に関わる内容でなければなりませんので、趣味で購入する雑誌については、もちろん経費の対象外となります。
また、経費計上できる目安として、業界誌は認められますが、日刊誌は認められません。
■確定申告時に必要な書類
・領収書
・レシート
・支払い明細書
11.接待交際費
不動産会社や税理士など、取引先との打ち合わせや不動産交流会では飲食費がかかりますが、これらの飲食費は接待交際費という名目で経費として計上できます。
会社員の方であれば、取引先との接待費を会社の経費とする機会もあるでしょう。不動産投資においても、利益を生むために必要な取引先との費用として経費にできます。
ただ、家族で外食した際の費用や、投資とは関係ない友人との交際費などは経費として計上できないので注意しましょう。
■確定申告時に必要な書類
・領収書
・レシート
12.消耗品費
不動産投資では、日々の管理業務に使うパソコンや物件を撮影するために使うカメラ、資料を印刷するためのプリンター、取引先に渡す名刺など、さまざまな消耗品が発生します。その中で、業務で使うことが明確な物は消耗品費として経費に計上できます。
ただ、私用目的で購入した物は消耗品費にはできないので、何でも経費扱いしないように注意してください。
■確定申告時に必要な書類
・領収書
・レシート
13.その他費用
ここまでご紹介した費用以外にも、税理士や司法書士など専門家に支払う報酬も不動産投資に関わるものであれば、その他費用として経費計上が可能です。
■確定申告時に必要な書類
・領収書
・レシート
・支払い明細書
不動産投資でかかる経費として認められないもの
最後に、不動産投資でかかる経費として「認められないもの」について説明していきます。
基本的に、不動産投資に関係のないものは経費にできません。ご紹介する内容を参考に、経費にできないものの特徴について確認しておきましょう。
※一般的に「経費計上できない可能性が高い」項目について挙げています。個別状況によって解釈が異なる場合がありますので、必ず専門家もしくは物件を購入した会社の営業担当者にご相談ください。
1.スーツや時計、コンタクトレンズ代など装飾品や日用品
スーツや時計、コンタクトレンズ代などの装飾品や日用品は、経費として計上できません。
不動産会社や銀行など、取引先と会うためだけに使用するとしても経費として扱うことはできません。
その他、ビジネスバッグや靴など、ファッションアイテムとみなされやすいものは、基本的に不動産投資に関係ないため、経費に計上できないと考えておきましょう。
2.旅行やジム代など自分への福利厚生費
旅行代金やフィットネスジムの会費など、自分への福利厚生費については、基本的に私的な娯楽とみなされ経費として計上できません。
例外的に、株式会社のような法人の場合は、親族以外の従業員向けであれば、旅行やジムなどにかかる費用を福利厚生費として経費に計上できるケースがあります。ただ、従業員が親族だけの場合は認められません。
また、個人事業主の場合は福利厚生費が認められないので注意が必要です。
3.プライベートでの飲食費用
プライベートでの飲食費用は私的な利用であるため、経費として計上することはできません。
「個人事業主になれば日々の飲食代が経費にできる」というのは間違った認識で、不正な経費計上が続くと税務調査が入る可能性もあります。プライベートでの飲食費用をはじめ、私的な経費の流用には注意が必要です。
4.反則金や罰金など
自動車のスピード違反や駐車違反などの反則金、その他の罰金については、経費として計上できません。
自動車関連費用としては、駐車場代やガソリン代の他にレッカー代金は認められていますが、反則金や罰金などは、仮に業務中に起こったことであっても経費になりませんので注意しましょう。
5.所得税や住民税などの税金
個人・法人の所得から支払う所得税、住民税、法人税は、経費として計上できません。
先述した固定資産税や都市計画税、不動産取得税などの租税公課とは違い、不動産投資には関係なく発生する税金として課せられるので注意しましょう。
6.資格を取得するための費用
資格を取得するための費用についても経費に計上することはできません。
意外と感じるかも知れませんが、宅建士・マンション経営管理士・賃貸不動産経営管理士
など不動産関連の資格であっても経費にすることはできません。資格は、あくまでも「個人のスキルアップ」とみなされるので、例外なく経費にできないことを覚えておきましょう。
不動産投資をする際は正確に経費計上しましょう!
今回は、不動産投資でかかる経費として「認められるもの」と「認められないもの」について解説してきました。ただ、ここでご紹介したような節税効果は永遠に続くものではなく、年数が経つにつれて減少していくものです。
具体例も挙げてご紹介しましたが、不動産投資に関わる経費については税務上の専門知識が不可欠です。
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※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。㈱メイクスにおいては、何ら責任を負うものではありません。