不動産の数あるリスクの中で、最も対策するべきは空室リスクです。空室発生時の流れから長引かせないコツについて解説します。
・次の入居がつくまでの流れが分からない
・原状回復にかかる費用の目安が知りたい
・空室を長引かせないために何をしたらいいのか知りたい
初めての空室を体験する方は、経験のないことに不安になり疑問が出てくるでしょう。空室時は時間との勝負、迅速な対応が求められるため、焦ってしまうことも考えられます。
当記事は不動産投資初心者の方向けに空室発生時の流れから、空室を長引かせないための対処法について賃貸管理を管理会社に委託した場合の事例を想定し解説します。
記事の内容を理解すれば、納得感を持って入退去時の対応を進めることができるでしょう。
早く次の入居者を見つけるためには、適切なアドバイスや、相談に乗ってくれる管理会社に委託することが大切です。空室に向け事前に備え、リスクを最低限に抑えていきましょう。
目次
不動産投資の空室リスク
不動産投資のリスクには様々なものがありますが、オーナーが気になるリスクの一つに「空室リスク」があげられます。実際に空室が起きた場合、オーナーにどんな影響を及ぼすのかについて解説します。
空室リスクとは
空室リスクとは、所有している物件が空室になり、家賃収入を得ることができなくなるリスクのことをいいます。
空室期間中、ローンを借り入れて不動産を購入している場合、ローンの返済に家賃収入を充てることができなくなります。そのため、空室の期間が長くなると賃貸経営が苦しくなることが考えられます。ですが、長期に渡り賃貸経営をしていく中で、空室は必ず起こると考えておきましょう。
退去者が出てからの流れ
オーナーが実際に行うことについて賃貸管理会社「メイクスプラス」の事例を元に説明していきます。
募集開始からのスケジュール
募集開始から次の入居が開始するスケジュールの流れを見ていきましょう。
下記図のように7つのフローに分かれることが多いです。
それぞれ詳しく解説していきます。
1、入居者からの解約連絡
解約予告が必要な期限は入居時の契約書に記載されています。
退去連絡は管理会社によって期限が異なります。メイクスプラスは個人契約が2か月前予告、法人契約の場合は1か月前予告です。2か月前予告のメリットは、募集期間に余裕を持たせることが可能になることです。管理会社によって予告の期限が変わってくるので確認しておきましょう。
2、募集開始
解約をすることが分かったら、すぐに次の入居者を募集します。ただし、解約連絡する際にオーナー様と連絡が取れず、次回の募集条件を決められない際に対応ができない場合があるためご注意ください。
退去予定日が明確に決まっているときは、物件に入居者がいても募集を開始することは可能です。なお、この際に重要なのが家賃の設定です。
Suumo 「2018年度 賃貸契約者動向調査」「P6 決め手項目×あきらめ項目」によると、入居希望者が物件を決める際の決め手は優先度順に「家賃」「立地」「間取り」ということでした。
https://www.suumo-research.com/research/2019-9-24
そのため、家賃の設定は空室回避のために重要な要素となります。
管理会社がいなければ、オーナーの希望する家賃で入居者を募集することになります。ですが、管理会社がいれば周辺家賃相場などを加味したアドバイスをもらうことが可能です。
管理会社がいるメリットは、家賃を設定し募集開始をしたら、空室状況のお問い合わせ、内見可能時間などの反響数を加味し、家賃の見直しについてアドバイスをしてくれます。自主管理の場合は、自分自身で問い合わせ数や内見数を判断し、家賃や広告費を増減する必要があるため知識や判断力が必要です。
3、申込獲得・入居審査
申込を獲得したら入居審査です。入居審査の目的は、継続的な支払い能力があるかを判断するために行います。審査には3つの段階を踏むことが一般的です。
・保証会社による審査
保証会社とは、滞納などの債務不履行が生じた際に、金銭面の連帯保証人の役割を引き受ける会社のことです。保証会社の審査は、主に十分な支払い能力があるかを見ています。申請者本人は勤務先の会社に本当に在籍しているか、継続的な収入があるかなどを確認します。
・管理会社の審査
管理会社は主に、本人確認および勤務先への在籍確認をはじめ、申込書に記載のある連帯保証人や緊急連絡先に対して本人確認を行います。管理会社によって独自の審査基準を設定している会社もあります。例えばメイクスプラスは外国人の場合には在留資格・日本語能力の確認他、状況に応じて審査を実施します。
・オーナーによる審査
オーナーは保証会社、管理会社からの審査報告を受け判断します。保証会社審査・管理会社審査が通っても、オーナーの個人的な判断でOK/NG判断をすることも可能です。慎重に判断しましょう。
4、退去・原状回復
前の入居者が退去し、部屋の荷物が全て撤去されると、物件の立会いを行います。
立会いとは、退去する者と一緒に原状回復の内容について協議を行うことを言います。(原状回復については後ほど詳しく解説します。)
自主管理のオーナーはご自身で立会われる方もいらっしゃいますが、本業のある方や所有している物件が自宅から遠い方は日程を合わせることが難しいことが多いです。
また、原状回復工事となる場合、見積もりには専門知識が必要となります。そのため、管理会社が代行を依頼するオーナーがほとんどです。
5、入居開始
入居者との最後の手続きとして、必要書類や敷金、契約金の受領、鍵の受け渡しなどを行います。これらも管理会社が代行で行うことが多いです。手続きを終えたら入居開始になります。
オーナーが対応すること
管理会社に委託している場合、解約連絡があってから次の入居者が決まるまでにオーナーが実際に何かを行うことは比較的少ないです。
賃料の金額決定や、入居の審査など管理会社があらかじめ下調べし、アドバイスをしてくれます。そのアドバイスをもとに賃料の金額を判断します。
もし自主管理で、管理会社に委託していなかった場合、すべての業務を自身で行わなければなりません。本業のある方や投資物件が自宅から遠い方、管理戸数の多い方などが自身で全てを行うのは非現実的です。そのため、管理会社に委託することをおすすめします。
知っておきたい原状回復
退去が発生した場合に次の入居者を迎えるためには、原状回復を行わなければなりません。原状回復の際に押さえておきたいポイントについて説明します。
原状回復とは
入居者が退去する際に部屋の状況を確認します。確認した際に損傷を直し、汚れてしまった箇所をきれいにすることを原状回復といいます。ガイドラインをもとに要点だけをお伝えすると
・通常の生活による損耗等損(通常損耗)や、経年劣化による損耗等(経年劣化)については入居者の負担にはならず、オーナー負担です。
・入居者の故意・過失、または不注意でできた損耗等については入居者の負担になります。
国交省が発表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/honbun2.pdf)では耐用年数についてやガイドラインの詳細が示されています。どの管理会社もこのガイドラインを参照し判断しています。
疑問点があればこのガイドラインを確認すると確実です。
入居者の故意・過失ではないものは、大体がオーナーの負担になると考えておいた方がいいでしょう。
例)タバコのヤニで黄ばんだ壁紙の張替え
→入居者の負担
例)日照などの自然現象によるクロスの変色
→オーナー負担
ワンルームマンション原状回復の相場はどれくらい
実際にオーナーが負担する原状回復の相場について紹介していきます。
交換する設備 | 金額 |
壁や天井のクロスの貼り替え | 100,000円~150,000円 (使用するクロスの材質や張り替えを行う平米数よって変わります) |
エアコン交換 | 80,000円~100,000円 |
エアコン洗浄 | 10,000円~15,000円 |
IHコンロの交換 | 50,000円~60,000円 |
給湯器の交換 | 80,000円~150,000円 |
設備は求める性能によって金額が変わります。
ワンルームの場合トータル10万円以下に収まることが多いです。設備の交換が重なると原状回復費用が高くなることがあります。何にいくらかかるか把握をし、原状回復に向けて事前に資金の準備をしておきましょう。
空室が長引かないための対策
空室期間は賃料が入ってこないため、オーナーにとって精神的に苦しい期間です。募集を行う際に、早く入居者がつくように行っている工夫を紹介します。
家賃の見直し
所有物件の家賃が周辺の家賃相場より高くないか確認しましょう。周辺相場よりも家賃の値下げをすることで入居がつきやすくなります。
または、周辺相場よりも所有する物件の家賃が低いようであれば値上げするチャンスにもなります。管理会社に相談し意見を伝えることが大切です。
仲介会社に頑張ってもらうための広告費の見直し
オーナーが入居者を募集する際、仲介会社にはお部屋を探しているお客様に対して、類似物件として提案してもらう必要があります。
その際に仲介会社がオーナーの物件を優先的に対応する動機となるのが不動産用語で「AD」と呼ばれる広告費です(※)。ADとはオーナーが仲介会社に支払う広告費のことです。相場は家賃1ヶ月分と言われています。
(※)ここでいう広告費とは、依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額のことをいい、大手新聞への広告掲載料等報酬の範囲内で賄うことが相当でない特別の広告の料金のことをいいます。
早く入居者を見つけたい場合や、なかなか入居者が見つからない場合はADを増額することで、仲介会社から物件を入居希望者に提案してもらい、空室期間を短くできる可能性が高まります。ただ、ADを出せば良いわけではなく、実際の費用対効果を考えた上で判断していきましょう。
早めの判断が大切
管理会社から提案があったとしても、賃料や広告の有無、入居者の審査などは最終的にオーナーが決定しなければなりません。
賃料は数年間の家賃収入に関わってくるため、慎重に決めたいものですが決められずにいると、その分空室期間が長引いてしまいます。管理会社と情報共有をしながら判断の根拠となるデータを受け取り、迅速に判断し対応しましょう。
管理会社を選ぶポイント
管理会社選びは賃貸経営を行う上で非常に重要です。何で判断するべきなのか見ていきましょう。
トラブル発生時の対応の早さ
問題が発生した際に迅速な対応をしてくれるかはオーナーにとっても、入居者にとっても重要です。年中無休のコールセンターがあるかは非常に大切なポイントのため事前に確認しましょう。
相談をしたときの対応の早さなどから、早急に対応できる管理会社かを見極める必要があります。
仲介業者との関係性、システムなどの管理体制
軽視されがちですが、管理会社と仲介業者との関係性は非常に重要です。
仲介会社と管理会社は、空室物件の問い合わせや、内見時の鍵のやり取りなど直接連絡を取り合う機会が多いです。管理会社の対応が悪いと仲介業者から「やりづらい管理会社」という印象を与えてしまい、取引は最低限にされてしまう場合があります。
空室情報がすぐに分かるシステムや、内見予約のシステム等が導入されている管理会社が仲介業者から好まれます。仲介業者ときちんとコミュニケーションをとっているかどうかも、注目するべきポイントです。
入居実績
管理実績とは、マンションやアパートを管理している数、また管理している部屋の入居率のことを指します。ご自身が所有している不動産と同じ種類の不動産を管理している実績があれば、求めている知識やノウハウをもっている可能性が高いです。ホームページに実績を掲載している会社も多いのでチェックしましょう。
空室になった際の流れを理解して対応しましょう
今回は、空室発生時の流れから長引かせない対策について解説しました。
本記事を理解し、迅速に対応を行うことで、リスクを最低限に抑えていきましょう。
1人で検討するのが不安な方は、信頼できる管理会社に相談することをおすすめします。不動産投資なら、実績豊富なメイクスプラスまでお気軽にご相談ください。専門知識を持ったコンサルタントが、あなたに最適な資産運用をサポートします。
※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。㈱メイクスにおいては、何ら責任を負うものではありません。