一般的に不動産投資はインフレ時の有効な対策とされていますが、インフレには「良い状態のインフレ」と「悪い状態のインフレ」があるため、正しく理解しておくことが大切です。
そこで今回は、「インフレ」と「デフレ」の基礎知識をはじめ、近年の日本におけるインフレ状況について解説します。また、不動産投資がインフレに強い理由や、インフレ対策として効果的な不動産を選ぶ際のポイントもあわせて解説します。
目次
「インフレ」と「デフレ」の違いとは?
インフレは、モノやサービスの価値が継続的に上がっていく状況のことで、反対にデフレはモノやサービスの価値が継続的に下がっていく状況のことです。
「インフレが良い」「デフレが悪い」ということではなく、両方ともにメリットとデメリットがあります。「インフレ」と「デフレ」の意味についてもう少し詳しく見ていきましょう。
インフレとは
インフレとは「インフレーション」を略した言葉であり、モノやサービスの価値が上がることを指します。
例えば、昨年までは1個200円だった商品が値上げされて1個300円になる状況がインフレです。このとき、同じ商品を購入するために必要な金額が増えるため、インフレ時は相対的にモノの価値が上がってお金の価値が下がったことになります。
インフレは、一般的にモノやサービスの需要が供給を上回ることで発生し、モノやサービスが大量に売れることから企業の収益は増加します。そのため、景気が良くなるとインフレが起こりやすいといわれています。
デフレとは
デフレとは「デフレーション」を略した言葉であり、モノやサービスの価値が下がっていくことにより、相対的にお金の価値が上がる状況のことです。
例えば、昨年までは1個200円だった商品が1個100円になる状況がデフレです。同じ商品を購入するために必要な金額が減るため、デフレ時は相対的にモノの価値が下がりお金の価値が上がったことになります。
デフレは一般的にモノやサービスの需要が減少して供給を下回ることで発生するため、企業の取り扱い製品が売れなくなり収益が減少します。その結果、企業は従業員の給料をカットしたり、設備投資を抑えたりすることで世の中にお金が出回らなくなり、雇用の不安定から消費意欲が失われる悪循環に陥ります。
このような悪循環をデフレスパイラルと呼び、長引くと経済が縮小していくため、さらに景気が悪化してしまいます。
良いインフレ・悪いインフレとは?
インフレには、社会に良い影響を与えるものと悪い影響を与えるものの2種類があります。「良いインフレの状態」と「悪いインフレの状態」について解説します。
良いインフレの状態
一般的に、インフレは景気が良くなることで起こります。景気が良い状態が続くと消費が活発になり、企業は増えた収益を従業員の給料に還元することによって、さらに消費が活発化することで企業の収益も増え続けます。
良いインフレの状態では企業が事業規模を拡大するため、設備投資や新規雇用に対して積極的に資金を投入することから、社会の中でお金が循環することとなり、より景気が良い社会になります。
さらに、新規事業への参入や、新たな技術開発への投資も活発化することによって、豊かな国として発展していく可能性が高い状態です。
悪いインフレの状態
需要の増加に伴って物価が上昇するのではなく、原材料費の高騰などの要因で物価の上昇を招くのが、悪いインフレの状態です。
需要が増えていないにもかかわらず物価が上昇することになるため、モノやサービスは売れなくなります。その結果、企業の収益が悪化することで従業員の給料も増えず、ますます売れ行きが悪くなります。
従業員の給料が一向に増えない状況でモノやサービスの価値が上がり続けるため、悪いインフレの状態では物価が上がり生活が苦しくなります。
このように、景気が停滞している状況でモノやサービスの価値が上昇する悪いインフレの状態は、英語のスタグネーション(景気停滞)とインフレーションを組み合わせた「スタグフレーション」という造語で呼ばれます。
近年の日本の状況はインフレ?デフレ?
ここからは、ニュースなどの報道でも耳にすることが多い「日本の状況」について見ていきましょう。
「消費者物価指数」から見る日本の状況
モノやサービスの価格の動きを把握する指標である「消費者物価指数」を見ることで、インフレの状況を確認できます。
2021年前半までの日本における消費者物価指数は、消費税が増税となった年をのぞき前年同月比マイナスとなるデフレ状態でした。
しかし、2022年に入るとロシアによるウクライナ侵攻や円安の影響を受けて消費者物価指数の上昇が顕著になり、2022年12月には前年同月比4.0%まで上昇しました。この上昇は1981年以来41年ぶりの伸び率です。
その後、2023年2月になると3.1%まで低下し、2023年12月にはさらに2.3%まで低下したものの、電気やガスといった生活に欠かせない物資の値上げが家計に与える影響は大きいといえるでしょう。
■参考:2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)12月分及び2023年(令和5年)平均|総務省統計局
今後の日本経済の展望予想
アメリカや欧州などの海外経済でもインフレが発生しており、日本国内においても同様に今後もインフレ状態は続くと予測されています。
しかし、良いインフレの状態とされる需要の高まりが物価上昇をけん引する形ではなく、海外から輸入する原材料の高騰をきっかけとした物価上昇が相次いだことによる悪いインフレの要素が多いです。
とはいえ、2020年、2021年のコロナ禍で下がった労働者の賃金が2022年から上昇しており、2023年には1人平均賃金の改定率が3.2%まで上昇していることから、企業の賃上げが今後も広がっていくことが予測されます。
ただし、ロシアによるウクライナ侵攻をはじめとした社会情勢の影響を大きく受けるため、物価指数がさらに変動する可能性も考慮する必要があるでしょう。
■参考:令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況|厚生労働省
不動産投資がインフレ時の対策になる理由
不動産投資はインフレに強い資産といわれています。その主な理由は次の3点です。
- 資産価値が下がりにくい
- 家賃収入や売却価格の上昇が見込める
- 借入金額が目減りする
資産価値が下がりにくい
不動産は現物資産であり物理的な存在価値があることから、インフレの影響を受けやすいお金や国債と比較して価値が下がりにくいことが特徴です。現物資産とは、土地や建物、貴金属など「それ自体に価値がある資産」を指します。
インフレが発生すると需要の増加によって物価が上昇しますが、不動産への需要も高まることで不動産の価値も上昇する傾向にあります。また、建物はリノベーションのような改修を行うことによって価値を維持しやすいことも、資産の減少を抑える要因の一つです。
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家賃収入や売却価格の上昇が見込める
インフレの状況においては、モノやサービスの価値が上がることに伴い、家賃も上昇する傾向にあります。そのため、安定した家賃収益が期待できる不動産への投資は、インフレ時の対策として高い効果を発揮します。
また、物件価格そのものがインフレによって上昇するため、売却するタイミングとしても最適です。
最大化した収益を狙えるのもインフレ時の対策の理由といえるでしょう。
「上昇した家賃で定期的な収益を得るのか」「収益の最大化を狙って売却するのか」を選択できる点も、インフレ時に不動産投資をしている強みです。
借入金額が目減りする
インフレは、物価の上昇に伴って相対的にお金の価値が下がるため、ローンを組んでいる場合には有利に働きます。
不動産投資は、まとまった資金が必要なため、金融機関から借り入れて資金を調達するのが一般的です。このときにインフレが発生していると、借入金の実質的価値が下がるため、たとえ支払金額は変わらなくても、支払う金額そのものの価値が下がり返済負担が軽くなります。
ただし、インフレの進行状況によっては金融機関からの借入金利が上がる金利上昇リスクがあるため、変動金利を選択しているケースでは注意が必要です。
インフレにおいて有利な物件の特徴とは?
不動産投資はインフレ時の有効な対策ですが、より高い効果を発揮するためには、物件選びのポイントをつかんでおくことが大切です。
以下のような、インフレにおいて有利な物件の特徴について解説します。
- 築年数が浅い物件
- 物件が貸しやすく売りやすい
築年数が浅い物件
築年数が浅い物件は購入当初の金額が大きいものの、リフォーム費用を工面する必要がないことに加え、修繕積立金も少額で済むことから確実な収益を積み上げることができます。
反対に、築年数が経過している老朽化した物件は、安価で購入できたとしても建物の補修や設備機器の更新時期に合わせた修繕コストが発生します。これらは、不動産の資産価値を維持していくために必要な費用であり、築年数によっては多大なコストを払わなければならない場合もあるでしょう。
近い将来、インフレ時に不動産を売却することを考えている場合は、修繕関連の費用が少なく済む新築や築浅の物件を探すことが重要です。
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物件が貸しやすく売りやすい
インフレ時に安定的な家賃収入を確保したいのであれば、物件が貸しやすく売りやすい、つまり人気の高い物件を選べるかどうかがポイントです。
具体的には、駅からのアクセスに優れていることや、日当たりが良いことに加え、付近に騒音の発生源がなくセキュリティ面がしっかりしていることが挙げられます。こうした人気の物件は、需要が高まるインフレの状況において入居者が集まりやすいと同時に物件の売却も有利に進めやすく、高い投資効果が期待できます。
また、人気のある賃貸物件を目指すのであれば、適正価格での家賃設定も重要です。不動産の価格が高いと家賃も高く設定しなければならないため、周辺賃貸の家賃相場と比較して高くなりすぎない物件を選びましょう。
【関連記事】家賃設定の適正な考え方は?不動産投資で賃貸経営を成功させる方法
インフレに効果的な不動産を選ぶ際の注意点
安定した家賃収入と売却益を確保するためには、想定されるリスクへの対策が欠かせません。
ここからは以下のような、インフレに効果的な不動産を選ぶ際の注意点について解説します。
- 空室リスクに注意する
- 売却時に価値を維持できそうかシミュレーションする
- 老朽化を考慮して売却タイミングを検討する
空室リスクに注意する
安定した家賃収入を得るためには、できる限り空室の期間を短くするため、賃貸市場で人気のある物件を選ぶことが大切です。
人気の高い物件の条件としては、駅や商業施設へのアクセス、治安の良さや自然環境、教育機関や病院が近くにあるかどうかなど、ターゲットとなる借り手にとって生活利便性に優れた立地かどうかが挙げられます。
また、周辺の競合物件と比較したときに差別化ができていないと、所有物件に興味をもってもらえない可能性があります。周辺のライバル物件を分析したり、所有物件の強みを考慮した適正な賃料設定を検討したりすることは、空室リスクの対策として有効です。
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売却時に価値を維持できそうかシミュレーションする
最終的に物件を売却することが目的であれば、長期的な資産価値を視野に入れて物件を選ぶことが大切です。
例えば、土地開発が進む地域の場合、購入時よりも地価が上昇し、資産価値が高まる可能性があります。大型の土地開発や商業施設の建設が行われれば、最寄り駅の利用者数が増えていくことが予想され、需要が高まります。
基本的に住宅設備や建物は経過年数によって価値が下がりますが、良い立地であれば地価が高くなる可能性もあるため、建物と土地を合わせて価値を維持できるのか試算しておきましょう。
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老朽化を考慮して売却タイミングを検討する
建物は時間の経過とともに老朽化していきます。一般的に不動産は老朽化につれて資産価値が目減りします。このため、売却を前提に不動産投資を行う場合は、老朽化を考慮した売却タイミングの検討が大切です。
また、一定の期間が経過している建物は定期修繕が欠かせません。修繕の規模によっては多大な費用がかかる場合もあるため、マンション管理組合が適切な長期修繕計画を立てているか、修繕積立金は問題なく積み立てられているかなども把握しておくことが大切です。
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不動産投資をしてインフレに備えよう!
インフレ時にはお金の価値が下がることによって、相対的に現物資産である不動産の価値が高くなります。さらに、日本国内では物価の上昇とともに企業の賃上げも広まっており、今後もインフレ状態は続くと見込まれています。
このような状況における不動産投資は有効なインフレ対策となりますが、物件選びやリスクを理解した上で不動産投資を行うことが大切です。
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