年代別(20代・30代・40代・50代)の不動産投資戦略のポイント

最終更新日:2023.11.24 (公開:2023.11.02)

一般的に不動産投資では、豊富な自己資金がある場合を除いて、金融機関などからの融資を活用して、返済計画と将来の収益のバランスを長期的に考えて資産運用をすることになります。

長期的な資産形成という観点で不動産投資を考えたとき、「自分の年代の場合、どのような点に気をつけて投資戦略を立てればいいのか?」と気になる方もいらっしゃるでしょう。

そこで今回は、20代、30代、40代、50代の年代別に、不動産投資の戦略の立て方のポイントや注意点について解説します。

不動産投資には年代別に最適な戦略と注意点がある

不動産投資を始める年代によって戦略の立て方や注意点は大きく変わってきます。収入の状況、ローンの組みやすさ、備えておきたいライフイベントなど、考慮すべき要因が年代によって異なるため、各年代に適した投資戦略を意識するのがポイントです。

また、基本的に不動産投資は長期的な資産形成に向いている投資方法であるため、早い段階から取り組みを始めると効果を最大化しやすい傾向にあります。ただし、40代や50代から不動産投資を始める場合でも、若い年代よりも安定した収入やまとまった貯蓄があることを考えると、不動産投資を始めるのに遅すぎるというわけではありません。

世代に応じた戦略と注意点を理解した上で、自身の目的にあった適切な運用方法を考えることが、投資を成功させるためのカギとなります。

20代の不動産投資戦略の考え方

20代は多くが新社会人であり、勤続年数も短いのが一般的です。30代以降と比べると年収が低く、不動産投資のための資金を確保するのが容易ではないケースが多いでしょう。

その半面、この年代の強みは、不動産投資を長期的な視点で考えることができる点にあります。ローン返済期間が長くとれることから、月々の返済は抑えやすくなります。ただし、長期にわたる返済の結果、利息を含む返済総額が増加することには留意する必要があります。

投資戦略としては、自身の経済状況に無理を生じさせない範囲で投資することや、都心部にあって賃貸需要が継続的に見込まれる物件選定などがポイントになります。

20代で不動産投資を始める主なメリット

20代で不動産投資を始めることには、以下のようなメリットがあります。

・長期的なローンを組みやすい
・ローンの完済を早められる
・団体信用生命保険に加入しやすくなる

長期的なローンを組みやすい

不動産投資の融資を受ける際、20代は長期間のローンが組みやすいため、毎月の返済額を抑えることができます。

不動産投資は、株式や債券、投資信託などの金融商品への投資と比較すると、初期投資額が大きく、短期間でローン返済しようとすると、月々の返済負担が大きくなってしまいます。しかし、20代から不動産投資を始めることで、30年以上の長期ローンを組むことが可能なため、月々の負担を少額に抑えられます

ローンの完済を早められる

20代の若いうちから不動産投資を始める場合でも、勤続年数の積み重ねや昇進により年収の増加が期待できます。年収が増加すれば、繰り上げ返済によりローンの早期完済にもつなげられます

また、長期ローンを完済する前に減価償却を終えてしまうと、デッドクロスを迎えます。デッドクロスとは、元金返済額が物件の減価償却費を上回ってしまう状態で、支出が同じにもかかわらず納税額だけ高くなりキャッシュフローが悪化します。20代であれば、完済時期を調整できる可能性が高いため、デッドクロスを避けやすくなります。

団体信用生命保険に加入しやすくなる

20代は団体信用生命保険に加入しやすいというメリットがあります。団体信用生命保険は、不動産に関する保険制度ですが、一般的な保険と同じように若い年齢の人が加入しやすいです。

不動産購入時のローンの返済期間が長いと、返済期間中に病気やけがなどの不測の事態が起こる可能性も高くなります。その結果、返済が滞ってしまう可能性もあるでしょう。

しかし、団体信用生命保険に加入していれば、万が一のときに残りのローンを保険金で相殺できるため、安心して不動産投資に挑戦できます。また、ローンによっては団体信用生命保険の加入を条件にしているものもあるため、加入のしやすさは大きなメリットです。

20代で不動産投資を始める際の注意点

メリットだけでなく注意点にも目を向けましょう。20代の不動産投資では以下の注意点があります。

・借入比率が高額になりやすい
・ビジネスや投資のノウハウを一から身につける必要がある
・インターネット上の手続きで完結させないこと

借入比率が高額になりやすい

20代のうちは30代以降と比べて年収が低いのが一般的なため、自己資金が十分に用意できなければ借入比率が高くなりやすいです。

不動産を取得するときの資金の多くは不動産投資ローンでまかなえますが、頭金として一部分は自己資金から支払うのが通常です。この頭金の金額はローン審査にも影響し、自己資金が多ければ多いほど、ローン審査にも通りやすくなります。

しかし、実際には20代でまとまった自己資金を用意することは難しいため、借入比率が高くなりやすく、ローン審査に通りにくくなる要因となります。

インターネットの情報をすべて鵜呑みにすること

インターネットを活用すれば、スマホだけでも手軽にオンライン手続きなども行えます。しかし、不動産投資に関する情報収集や手続きを、すべてインターネット上で完結するにはリスクが伴うことも認識することが必要です。

例えば、不動産投資に関するさまざまな情報をはじめ、投資用物件の情報、物件があるエリアの実態は、インターネット上にある情報がすべて正しいものとは限りません。インターネットは決して万能なツールではなく、限定的だということを知っておきましょう

不動産の専門家からのアドバイス、書籍、セミナー、現地調査で得られる情報など多角的な方法で情報を収集し、総合的な判断をするのがおすすめです。

30代の不動産投資戦略の考え方

新社会人や社会人経験数年の20代とは異なり、30代になると多くの人は年収が上昇し、勤続年数も増えているため、不動産投資ローンの審査が通りやすい傾向です。そのため、不動産投資を始めやすい年代といえるでしょう。

また、40代や50代と比べると、30代はローンの返済期間を長めにとれる上に、定年までにローンを完済できる可能性が高いのも特徴です。この点は、定年後の安定した家賃収入を確保するための有効な戦略となります。

このような長期的視点での資産形成を考慮すると、30代はミドルリスク・ミドルリターンの投資をバランスよく進めるのに適した年代といえるでしょう。

30代で不動産投資を始める主なメリット

30代で不動産投資を始めるメリットについて以下の観点から解説します。

・ローンの返済期間の選択肢が広い
・銀行など金融機関からの信頼を得やすい
・管理会社への委託で経営規模の拡大もしやすい

ローンの返済期間の選択肢が広い

30代はローンの返済期間の選択肢を広げられる年代です。仮に65歳まで働き続けることを想定すると、35歳に不動産投資ローンを組んだとしても、30年間は本業の収入を見込むことができ返済不能に陥るリスクも低くなります。

また、一定の貯蓄がある場合は頭金を多く用意できるため、返済期間を短くする選択肢もとりやすいです。自身のライフプランに合わせて、ローンの返済計画を柔軟に設定できる点は大きなメリットです。

銀行など金融機関からの信頼を得やすい

30代は20代と比較すると、年収の高さや勤続年数の長さという強みを持っているため、銀行など金融機関からの信頼が得やすく、ローンを組む上で有利に進めやすいと考えられます。

★注意★
ローンの審査時には自己資金の金額や投資物件の収益性など、さまざまな条件が総合的に考慮されるため、すべての30代にあてはまるわけではありません。

管理会社への委託で経営規模の拡大もしやすい

30代で不動産投資を行い、順調に残債を減らすことができれば、追加融資を受けて物件数を増やしていくこともできます。所有物件を増やすことで、空室リスクやエリアリスクを分散できるメリットがあります

しかし、社会人として多忙な生活を送りながら、投資用物件の管理・運営も行うのは簡単なことではありません。そのため、物件の管理・運営は専門の管理会社に委託するのが一般的です。物件管理を管理会社に任せることができれば、本業に集中しながら賃貸経営の規模拡大を目指すこともできるでしょう。

30代で不動産投資を始める際の注意点

30代で不動産投資を始める際には、以下のような注意点があります。

・手持ちの資金に余裕を持たせる
・投資物件とマイホームのローン返済が発生する可能性

手持ちの資金に余裕を持たせる

不動産投資ローンを組むときに、月々の返済額を減らしたり、返済期間を短くしたりするために多くの頭金を投入する人もいます。しかし、30代は結婚や子育てなど、これまでの生活が大きく変わるようなライフイベントが起こりやすい世代です。

そのため、一時的に大きな支出が発生する可能性を視野に入れ、手持ち資金をすべて頭金に入れるのは避けましょう。また、投資用物件の室内の備品修理・交換が必要になる可能性もあるため、計画的な積み立て金で備えるなど、キャッシュフローが悪化しないようにすることが大切です。

投資物件とマイホームのローン返済が発生する可能性

30代になると、結婚をして家庭を持ち、マイホーム購入のために住宅ローンを検討するケースも多いと考えられます。そのため、30代で不動産投資を始める場合には、住宅ローンとあわせて2つのローン返済が発生する可能性も視野に入れておく必要があります。

先に住宅ローンを組んでいた場合、不動産投資ローンの審査に通りにくくなったり、融資額が減額される可能性もあります。30代の不動産投資は、直近で発生し得るライフイベントを考慮しながら、計画的な戦略を立てることが大切です。

関連記事不動産投資用物件とマイホームの両方を購入・所有できる?両立のポイントを解説

40代・50代の不動産投資戦略の考え方

40代や50代になると、すでに株式や投資信託などの投資を経験した上で、不動産投資を始めるというケースが多くなります。そのため、この年代で不動産投資を行うポイントは、資産形成のポートフォリオを念頭に置いた「リスク分散」にあります

若い世代とは違い40代や50代になると、より堅実な「老後の備え」を考慮して、リスクの高い投資は避けたいという人も多いでしょう。不動産は、景気変動の影響を受けにくい現物資産で、金融商品と比べて資産価値が急激に下がるリスクは少なくなります。また、インフレに強いのも現物資産の特徴です。

このように、40代や50代の不動産投資は、金融商品など他の投資手法を考慮したリスク分散によって、バランスのよいポートフォリオを実現するのに向いている年代といえるでしょう。

40代・50代で不動産投資を始める主なメリット

40代や50代の不動産投資には以下のようなメリットがあります。

・融資を受けられる可能性が高い
・老後の資金を用意できる
・忙しい状況でも安定した運用が可能

融資を受けられる可能性が高い

一般的に40代や50代は、社会的な信用度の高さから、ローンの審査に通りやすい傾向があります。40代や50代になると、20代や30代よりも年収が高く、管理職など役職に就いている場合が多いためです。

さらに、まとまった貯蓄があるという人も多く、頭金の準備や資金繰りの面でも、無理のない範囲で不動産投資ができる条件がそろっています。

老後の資金を用意できる

40代や50代は、退職後の生活に向けての準備を計画し始める時期です。不動産投資による家賃収入を安定して得られるようになれば、老後の資金計画が立てやすくなります。

ローン完済までの期間を考慮すると20年程度の返済期間になり、若い世代と比べて月々の返済額は大きくなります。しかし、完済後は年金代わりの家賃収入が得られるため、余剰資金を40代や50代で不動産投資に回すのも一つの方法でしょう。

忙しい状況でも安定した運用が可能

本業で重要なポストに就いていることが多い40代や50代は、忙しくて副業をする時間がとれないという人も多いでしょう。

その点、不動産投資であれば物件の管理業務は不動産管理会社に任せられるため、投資を行っている本人に時間がなくとも物件の運用はできます。そのため、不動産投資は、働き盛りの年代にこそ向いている投資方法ともいえます。

40代・50代で不動産投資を始める際の注意点

40代や50代で不動産投資をする際には、以下のような注意点があります。

・不動産投資ローンに年齢制限があること
・健康状態により団体信用生命保険への加入が難しくなるケースがある
・突発的な事態に備えるための手持ち資金は必要

不動産投資ローンに年齢制限があること

不動産投資ローンに限った話ではありませんが、ローンには完済時の年齢制限(上限)があります。融資を受ける金融機関などが設定している年齢制限までにローンを完済しなければならないため、高齢であるほど返済期間を短くせざるを得ません。

自己資金をどれくらい用意できるかなどさまざまな要因があるので、年齢だけで不利とまでは言えませんが、無理のない返済プランを組もうと思ったときに、ローン完済時の年齢制限がネックになる可能性があることを覚えておきましょう

健康状態により団体信用生命保険への加入が難しくなるケースがある

団体信用生命保険は、契約者本人が亡くなったときや返済不能になったときに、保険金で残債を完済できるものです。

一般的に、加入前には病歴や通院についてチェックされ、現在の健康状態についても申告しなければなりません。年齢が上がるほど健康上の問題を抱えやすくなるため、団体信用生命保険への加入に影響が出る可能性もあります。

また、団体信用生命保険に加入できない場合、ローンそのものが利用できないケースもあるため、注意が必要です。

突発的な事態に備えるための手持ち資金は必要

40代や50代で不動産投資ローンを利用する場合、本業の退職後も返済が続くケースが考えられます。家賃収入が安定して得られれば問題はありませんが、突然、空室が続く可能性もゼロではありません。そのため、いざというときに備えて、余裕をもった手持ち資金を確保しておくことが大切です。

不動産投資による資産形成は自分の年代にあった戦略で!

不動産投資でとるべき戦略は年代によってポイントがあり、自分の年代にあったメリットや注意点を意識することが大切です。各年代で迎えるライフイベントやリスクに適切に備えておくことが、適切な資産形成につながります。

不動産投資は長期的な観点から、安定した収益性を見込める資産形成の一つです。どの年代かにかかわらず、バランスのよい資産形成のポートフォリオを意識することで、最適な資産形成を目指すことができるでしょう。

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※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。㈱メイクス・㈱メイクスプラスにおいては、何ら責任を負うものではありません。

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著者/監修者紹介

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メイクス100年不動産ナビ編集部

メイクス100年不動産ナビ編集部は、不動産投資をはじめ、資産形成についてワクワクしてもらえるようなの情報の提供を目指しています。初心者向けの情報から既にオーナーの方、知見のある方に向けた、不動産投資や資産形成についての疑問を客観的な視点から発信しています。

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