賃貸物件のエアコンが故障した場合、オーナーにとって気になるのは「エアコンの修理・交換費用の負担はどうなるのか?」です。
そこで今回は、賃貸物件におけるエアコン故障時の対処法や、故障の原因になり得る使用法などについて解説します。
目次
家庭用エアコンの寿命・交換時期の目安は?
電化製品を一生使い続けるのは不可能で、どんな機械でも必ず寿命を迎えます。まずは、一般的な家庭用エアコンの寿命や交換時期の目安について見ていきましょう。
エアコンメーカーの補修部品の保有期間目安は10年
エアコンの補修部品の保有期間はメーカーごとに決められていますが、製造打ち切り後10年間が一般的です。つまり、保有期間を過ぎた後の部品交換は難しく、修理できなければエアコン本体を交換するしかありません。
家庭用エアコンの設計上の寿命は10年が目安
家庭用エアコンには「設計上の標準使用期間」という目安があり、標準的な使い方をした場合の目安は10年です。「設計上の標準使用期間」はJIS(日本産業規格)が定めたもので、エアコンが安全に使用できる期間を表しており、各メーカーはこの基準に則ってエアコンを製造しています。
約半数が購入12~13年目まで使用
補修部品の保有期間や「設計上の標準使用期間」から見ると、家庭用エアコンの寿命は10年が目安となりますが、全ての家庭が10年で買い替えているわけではありません。
エアコン購入後、実際にどれくらい使用されているかという「残存率」を調べた調査によれば、以下のようになっています。
出典:『内閣府「消費動向調査」データによる家電製品使用年数調査報告書(2017年版)』(一般財団法人家電製品協会)
■残存率
1~8年目までは80%以上12年目51.4%、13年目46.2%と、12、13年目が5割を切る境界です。その後も残存率は減り続け、15年目は34.8%、20年目となると11.0%になっています。この調査では、エアコンの平均使用年数は13.6年でした。
投資用(賃貸)物件で故障したエアコンの修理・交換費用を負担するのは誰?
不動産投資で運用している賃貸物件のエアコンが故障した際、修理・交換費用を負担するのは誰なのでしょうか?基本的な考え方や、よくある代表的なケースについて解説します。
オーナーが設置した場合、修繕は「オーナー負担」
エアコンが設置してある賃貸物件では、通常、賃貸借契約書や重要事項説明書に物件の設備としてエアコンを明記したり、募集広告でも「エアコン付き」と書いて入居者募集するのが一般的です。そのため、故障したエアコンの修繕義務は、法律上はオーナー側にあります。エアコン設備込みで入居者に物件を貸し出していると考えると分かりやすいでしょう。
エアコンが前入居者の「残置物」の場合は?
オーナーが購入・設置したエアコンではなく、入居者が購入して設置したエアコンを退去時に置いていくケースがあり、このエアコンを「残置物」と呼びます。
新しい入居者に「エアコン付き」と告知して賃貸契約を結んでいれば、エアコン修繕はオーナー負担です。
★残置物の場合のポイント★
残置物であっても、「故障時には入居者の責任で対応する」旨の説明や賃貸契約を結んでいる場合は入居者負担になります。
入居者が故意に壊した・入居者が自分で設置した場合は「入居者負担」
オーナーが設置したエアコンであっても、入居者が常識を超えた使い方をしたり、故意に壊したりしたときには、オーナーに修繕責任は生じません。
また、入居者が自費で購入・設置したエアコンの故障時の費用は、入居者の負担になります。
通常、入居者自身が工事を伴うエアコンを設置する場合は、事前に不動産管理会社へ相談するなどの条項を賃貸契約に盛り込むのが一般的なため、その際に、故障時の対応について入居者としっかり確認するなど注意が必要でしょう。
入居者(管理会社)からエアコン故障の報告が来たときの対応方法
ここからは、運用している賃貸物件で、入居者や不動産管理会社からエアコン故障について連絡が来た場合、どのような対応をとればいいのかについて見ていきましょう。
対応方法の基本的な流れ
エアコン故障の報告が来た場合、基本的な対応の流れは以下のようになります。
1.入居者(または管理会社)に「いつ」「どうして」「どうなった」をヒアリングする
2.修理業者に連絡し、現場調査の予約をとる
3.現場調査の結果により、修理もしくは交換の判断をする
エアコンが故障した季節や地域にもよりますが、現場調査や修理・交換にかかる時間はなるべく早いほうがいいでしょう。特に、猛暑や極寒の時期であれば入居者の生活にも大きく影響し、対応次第では、物件への評判や入居率に悪影響を及ぼす可能性もあります。
オーナー負担でエアコン修理・交換が必要になったときに、できるだけスムーズに対応してもらえるよう、普段から業者の情報を収集したり、管理会社に対応手順を確認しておくのがおすすめです。
本当に故障しているかどうかを入居者に確認してもらう
迅速な対応が基本ですが、「エアコンが故障した」「エアコンが動かない」という報告を受けたからといって、すぐに業者を呼ぶのは少々勇み足の場合もあるかもしれません。例えば、リモコンの電池切れ、室外機の吸気口が塞がれていて正常に稼働していないなどのケースも考えられます。
できるだけ、まずは入居者に故障の状況を詳しく聞き取ったり、エアコン本体の故障以外の原因がないかを確認することも大切です。確認してもらった結果、実はエアコン本体の故障ではなかったというケースは多々あります。
入居者の責任になる場合もある?
先述したように、「入居者が故意にエアコンを壊した」場合の修繕責任は入居者にあり、オーナーが責任を負う必要はありません。さらに、故障していることを知っておきながら放置してしまった場合も、入居者が責任を負うことになります。
★ポイント★
「入居者の独断で業者に修理を依頼した場合」も、費用を負担するのは入居者になると言われている点です。支払いについて後々トラブルに発展することも考えられるため、「エアコンが故障した場合は、必ず管理会社やオーナーに報告・相談する」ことを、事前に入居者に伝えておきましょう。
入居者から修理ではなく交換を要求された場合はどうなる?
エアコンが故障した場合、修理で何とかなる状態であれば、費用面を考えると修理で済ませたいのがオーナー側の本音でしょう。ところが、使用年数や故障頻度によっては入居者から交換をお願いされることもあります。しかし、交換は義務ではないため、必ず従わなければならないわけではありません。状況によってオーナーが適切に判断すべきでしょう。
エアコン故障でよくある原因と対処法
エアコンに限らず、電化製品はどれだけ大切に使っていたとしても、いずれ買い替えが必要になります。ただ、故障してしまう主な原因を知っておけば、故障リスクを避けてできるだけ長く使うことが可能です。
ここでは、エアコンが故障してしまう主な原因を紹介します。
フィルターに汚れが詰まる
エアコンのフィルター部分は、ホコリや汚れがたまると風が通りにくくなり、「故障したのかも」と勘違いもしやすい箇所です。
★ポイント★
フィルターに汚れが詰まってしまうのを防ぐためには、エアコンを使うシーズン以外はカバーなどをかけておくことや、シーズン前にフィルターを清掃するのがポイントです。
日常的な掃除やメンテナンスは入居者に委ねざるを得ないところですが、普段から掃除を心がけてもらうことは、入居者に伝えておいてもいいでしょう。また、内部洗浄などエアコンクリーニングをする際には、入居者から管理会社に連絡をもらえれば対応することなど、事前の取り決めを入居者としっかり確認しておくのもおすすめです。
ガスが抜けた(漏れた)
やや難しい話になりますが、エアコンが設定温度で機能するためのキモは「冷媒ガス」の存在にほかなりません。冷媒ガスが室内機と室外機を循環することによって、室温をコントロールできるのです。つまり、エアコン内の冷媒ガスが漏れたり抜けたりしてしまうと、エアコンとして正常に機能しなくなります。
エアコンを使用している際
・いつもより効きが悪い
・設定温度よりも実際の室温が乖離している
という場合は、冷媒ガスが抜けてしまっているかもしれません。症状が続くようであれば、点検もしくは修理が必要です。
オーバーヒートしてしまった
エアコンが動いている間、室内機から冷風ないし温風が吹き出てきますが、最初に起こる動作は室内の空気を吸引することです。冷房であれば、その室内の空気を熱交換器という部分に送り込み、冷媒ガスで冷やします。そして、冷風は室内機の送風口へ送られ、不要な空気(熱い空気)が室外機から排出されるという仕組みになっているのです。
エアコンのオーバーヒートは、熱交換器から出た不要な空気が排出されず、室外機の内部にたまってしまうことなどが原因で起きます。
★ポイント★
最もオーバーヒートしやすい状況は、室外機のファンを塞いでしまうこと。そのため、室外機の前に物を置いたり、ファンを塞いでしまうことがないよう、入居者に対して事前に注意喚起しておくといいでしょう。
部屋の広さとエアコンのパワーがミスマッチ
エアコンには、部屋の広さに応じた最適なスペックがあります。カタログなどには「8畳」「14畳」といった目安の「適用畳数」が記載されています。賃貸物件にエアコンを設置する際は、部屋の広さとエアコンのパワーのバランスを見極めて、最適な機種を設置する必要があるでしょう。
例)3LDKの部屋にワンルーム用のエアコンを設置
この場合全ての部屋にエアコンの効果が及びません。効き目が悪いからと過度に使用することで、故障の原因になったり機器の寿命を早めてしまう可能性があります。
例)ワンルームに3LDK用のエアコンを設置
この場合は風量を微弱にしても効き過ぎてしまいます。
「故障ではないか?」と入居者が勘違いしたり、電気代が余計にかかってしまったりしてクレームにつながる恐れもあるでしょう。
機器の寿命
冒頭で解説したように、家庭用エアコンには、安全に使用できる「設計上の標準使用期間」という目安があり、10年間とされています。「10年経過したら使えなくなる」「10年間は一切故障しない」ということではありませんが、使用を開始してから10年ほど経ったエアコンが故障した場合は機器の寿命かもしれません。
★ポイント★
部品交換で対応したくとも、メーカーの補修部品の保有期間は通常10年間であることや、エアコンの性能が10年前よりも向上していると考えると、新品に買い替えたほうが後々のトラブルの心配がないとも言えるでしょう。いずれにしても、メーカーや専門の修理業者に見てもらって判断することをおすすめします。
リスクを回避!エアコンを上手に使う・長持ちさせるポイント
現在、賃貸物件の設備でエアコンは当たり前のものになっており、エアコンの有無で入居率、賃料に差が出てくることもあります。オーナーとしてはエアコン設置が必須条件と言えますが、入居者にはできるだけ良い状態でエアコンを使って欲しいものです。
そこで最後に、できるだけエアコンを上手に使うコツ、長持ちさせるポイントについて解説します。
入居者にマメなメンテナンスを促す
自分の部屋で使っているエアコンであれば、いつでも好きなタイミングで掃除やメンテナンスを行えます。しかし、投資用の賃貸物件で、入居者が住んでいる部屋に設置したエアコンとなると、そう簡単にはいきません。「今週末にエアコンを掃除したいので部屋に入れて欲しい」とお願いするのは、昔ならいざ知らず、現代では非常識なオーナーと入居者に受け止められるでしょう。
入居前に「エアコンを使うシーズン前には業者の定期クリーニングを、オーナーの費用負担で実施する」ことを入居者と合意しておくという手もあります。入居者にとって負担がなく、快適にエアコンが使えることがメリットです。
入居者退去などのタイミングで必ずクリーニングを入れる
物件を所有するオーナーの多くは、入居者の退去や賃貸契約更新のタイミングで室内クリーニングを入れます。その際、エアコンの動作チェックや内部洗浄クリーニングといったメンテナンスは欠かせません。
★空室時の対応おすすめ★
前の入居者が退去して、次の入居者が決まるまでに期間があいてしまう場合は、エアコンが正常に動くかどうかの確認だけは忘れずに実施しておき、入居者が決定した段階で内部洗浄クリーニングを入れてもいいでしょう。
吸気口を塞がないように室外機を設置する
エアコンの室外機は重要な役割を担っており、ファンに汚れがたまってしまい、エアコンが正常に作動しなくなってしまうことがあります。また、室外機の中に空気がたまって排出されないことも故障の原因になります。
そのため、室外機の吸気口を塞ぐような設置方法を避ける必要があります。マンションなど集合住宅の場合、室外機はベランダか開放廊下に置き、通気スペースが十分に確保できているか確認するようにしましょう。
シーズン以外の試運転を入居者にお願いする
エアコンの使用頻度が少ない時期でも、定期的にエアコンを試運転しておくことで、異常などを早急に察知することができます。あくまでも入居者へ「お願いする」という形になりますが、エアコンがフル稼働する夏本番前の5月や6月あたりが丁度良いタイミングだと言われています。試運転の手順を簡単にマニュアル化し、入居者にあらかじめ渡しておくといいでしょう。
修理せずに定期的に型落ち機種を購入する
使用から10年がエアコンの寿命であることを考慮して、あらかじめ定期的にエアコン本体を買い替える計画を立てておくのも一つの方法です。その際におすすめなのが、型落ちの機種を購入することです。
エアコンはほぼ毎年のように新機種が登場しており、春頃から新製品の宣伝がスタートします。この時期に在庫として残った機種は、型落ち品として大幅に値下げされた状態で家電量販店などに並びます。メーカーやブランドにこだわらないのであれば、シーズン中の販売価格から30~40%程度値引きされた状態で購入できることもあります。
ただし、型落ち品は早々に売り切れてしまうことが多いため、事前に購入したい製品をリサーチしておき、型落ち品になったタイミングですぐに購入するのがおすすめです。
入居率や家賃にも影響するエアコンの修理・交換は迅速に対応を!
家庭用エアコンの寿命は、使用状況によっても異なりますが、10~14年程度が目安です。メーカーの補修部品の保有期間が一般的に10年であることからも、寿命を目安に新品に交換してしまうのが現実的な選択と言えるでしょう。
エアコンは賃貸物件に欠かせない設備となっており、その有無は入居率や家賃にも影響します。賃貸物件のオーナーとしては、交換時期を見越して計画的に資金を確保しておくことや、寿命前でも故障が発生したときに迅速に対応できるようにしておくことが大切です。
お部屋の設備交換、管理についてお悩みという方は、実績豊富なメイクスプラスまでお気軽にご相談ください。専門知識を持ったコンサルタントが最適な資産運用をサポートします。
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