引っ越し後に役所へ転居届を提出し、住民票を異動する必要があることは誰もが知る引っ越し時の手続きでしょう。さらに不動産を所有している場合は、所有者(所有権の登記名義人)の登記上の住所変更が必要となるケースがあることもご存じでしょうか?
また、引っ越し時だけでなく、物件の所有者を変更(名義変更)した際や、所有物件のローンを完済した後も登記変更する必要があります。
そこで今回は、引っ越しなどの理由から、投資物件の登記変更手続きが必要になるケースをはじめ、登記変更時に用意する書類や費用について解説します。
目次
【最新】不動産登記法の改正により住所変更登記が義務化へ
2021年、土地や家を購入したときや相続したときの不動産登記に関する手続きを定めた「不動産登記法」が改正されました。全国的に増えているとされる「所有者不明土地」の解消を主な目的として関連法令を総合的に見直したものです。これにより、所有者不明の不動産の発生防止や、安全な不動産取引の促進が期待されています。
改正法の施行は、以下のように段階的に実施されることとなっています。
・所有者不明の土地・建物の管理制度の創設など:2023年4月1日施行
・土地を手放す(国庫に帰属)ための制度の創設:2023年4月27日施行
・相続登記の申請義務化:2024年4月1日施行
・住所など変更登記の申請義務化:2026年4月までに施行予定
相続時以外のケースでも、住所・氏名の変更登記が義務化される点に注意が必要です。
不動産(不動産登記簿)の登記変更が必要になるケース
普通に生活している分にはあまり縁がない不動産登記簿。不動産を所有している場合は、幾度か登記内容を変更する機会が出てくるものです。はじめに、登記変更が必要になる主なケースについて見ていきましょう。
※不動産の登記変更が必要になるケースはさまざまですが、この記事では不動産投資にかかわる一般的なケースで解説しています。不動産の相続登記の手続きについては弁護士へご相談ください。
引っ越し後
冒頭で触れた法改正によって、これまで任意だった住所変更の登記変更が義務化されることになりました。改正法の施行後は、登記名義人が引っ越しで住所が変わった場合には「住所変更の日から2年以内」の申請が必須になります。
さらに、これまでは任意だったので変更を怠っても別段問題ありませんでしたが、「正当な理由のない申告もれは過料の罰則あり」と規定されています。
氏名変更時(名義変更時)
引っ越し後だけでなく、結婚・離婚などで氏名が変わった場合も登記変更手続きが必要になります。住所変更に伴う手続きが必要であることと同様に、これまで変更申請は任意でしたが、法改正によって義務化されます。
物件売却後
投資物件を売却する場合も、登記変更手続きが必要になります。売却するということは、すなわち所有者が変わることです。自発的に手続きをせずとも、取引相手から登記変更手続きを促されるでしょう。
ローン完済後
ローン完済後は、状況によって登記変更手続きをしたほうがいい場合があります。それは「抵当権が設定してある場合」です。ローンを完済したら金融機関へ「抵当権を抹消したい」旨を連絡して、必要な書類を受け取ります。提出書類を準備して、法務局へ提出すれば抵当権は抹消されます。
この手続きは司法書士に依頼するケースが一般的です。抵当権が設定されたままでも何か罰則を受けることはないので、中には手続きせずにそのままにしてしまう方も少なくありません。
とはいえ、完全に所有者になっているにもかかわらず、ずっと抵当権が付いているように見えるのはどこか気持ちが悪いものです。さらに、完済後に新たなローンを組む場合、抵当権が消えていないままの謄本を金融機関に提出すると、抵当権が付いている物件とみなされてしまいます。また、抵当権が付いたままでは物件の売却も困難になります。
ローン完済後の抵当権の設定は放置せず、いずれかのタイミングで抹消手続きをしておくべきでしょう。
不動産変更登記の手続き方法のポイント
不動産(不動産登記簿)の登記変更というと、どうしても準備する書類や手続き方法が難解であるという認識を持つ方もいらっしゃるでしょう。
そこで、所有者自身が手続きする場合と、司法書士に依頼する場合の方法について、それぞれポイントをまとめました。
所有者自身で手続きする場合
登記変更はハードルが高く、なかなか個人で手続きするのは難しいと思われているかもしれません。実際は、難しいというよりも「手間がかかる」と言ったほうが正しいでしょう。
おおまかな流れは以下のようになります。
- 役所へ行って、住民票、戸籍謄本、印鑑証明を取得する
- 法務局窓口やホームページで登記申請書(様式)を入手する
- 登記申請書を作成する
- 不動産がある地域を管轄する法務局へ申請をする(またはオンラインで申請する)
- 書類の不備や変更内容が正しいかどうかなど登記官による審査
- 登記簿への記載や権利証(登記識別情報通知書)発行などがおこなわれる
- 権利証や登記完了証の受け取り
- 手続き完了
申請から完了までに要する期間は、概ね2週間程度です。窓口に書類を出せば終わりというわけではありませんので覚えておきましょう。なお、法務局窓口では手続きのアドバイスをしてくれますが、あくまでアドバイスをくれるだけで、登記申請書の作成を代行してくれるわけではありません。
登記申請書の記入例は、法務局ホームページなどでも入手できます。また、事前に環境を整えればオンライン申請の利用も可能です。いずれにしても、どのような準備が必要なのか法務局の手引きを熟読しておくことをおすすめします。
■法務局ホームページ
・不動産登記申請手続:法務局
・登記されている住所・氏名に変更があった方へ(住所変更登記・氏名変更登記の申請手続のご案内)
司法書士(代理人)に依頼する場合
誰もが不動産登記の知識を持っていたり、申請書類の準備に十分な時間をとれたりするわけではありません。そのため、登記変更手続きは司法書士に依頼するのが一般的です。役所で書類を取得することはもちろん、法務局への手続きまですべて対応してくれます。より確実に、かつスピーディーに済ませたいと考えるなら、迷わず司法書士に依頼しましょう。
ただし、司法書士に報酬を払う必要があります。住民票などの取得費用も経費として支払うことになるでしょう(報酬内に経費を含んでいるケースもあります)。司法書士に支払う総額は一般的に数万円〜10万円程度が相場です。
登記変更を外部へ依頼する際、1点だけ気をつけるべきことがあります。それは、不動産登記の手続きを代理でおこなえるのは、原則として、司法書士か弁護士に限られている点です。他の士業など法律で認められていない人による手続きはできないので注意しましょう。
住所や氏名の不動産登記変更の手続きに必要となる書類
不動産登記変更手続きに必要な書類は1つだけではなく、場合によっては数種類を準備することもあります。そこで、ケース別に必要となる書類について解説します。
住所変更の手続きに必要な書類
住所変更登記の手続きで必要になるのは、主に以下の書類です。
・登記名義人住所・氏名変更登記申請書(法務局の様式)
・住民票または戸籍附票
・登記済権利証や登記事項証明書(登記簿謄本)
・委任状(司法書士に依頼する場合) など
「住民票または戸籍附票」は、登記上の住所から現住所までの変遷が分かるかどうかで、必要な書類が異なります。住民票は現住所の役所で、戸籍附票は本籍地のある役所で取得できます。
・1回だけの転居の場合…住民票
・複数回の転居の場合…戸籍附票
「登記済権利証や登記事項証明書(登記簿謄本)」は、正確に申請をおこなうために、不動産の地番や部屋番号が分かる証明として必要になる場合があります。
また、司法書士に手続きを依頼する場合は「委任状」が必要です。司法書士に依頼する場合は、司法書士が委任状を含めて準備してくれるはずですが、念のため確認しておくといいでしょう。
氏名変更(名義変更)の手続きに必要な書類
結婚や離婚によって氏名が変わる場合も登記変更の手続きが必要になります。準備する書類は主に以下のものです。
・登記名義人住所・氏名変更登記申請書(法務局の様式)
・戸籍謄本
・本籍地が記載されている住民票または戸籍附票
・登記済権利証や登記事項証明書(登記簿謄本)
・委任状(司法書士に依頼する場合) など
「戸籍謄本」は、変更前と変更後の氏名、変更した年月を証明するものです。また、「住民票」は本籍地が記載されたものを準備する必要があります。それ以外の書類は、住所変更手続きの場合と基本的に同じです。
住所や氏名の不動産登記変更の手続きに必要な費用
住所や氏名の登記変更の手続きには、書類の準備だけでなく「費用」がかかります。主な手続き費用について紹介します。
登録免許税
登録免許税とは、登記変更をする際に法務局(国)に納める税金のことです。登録免許税分の収入印紙を用意します。
税額は「不動産(土地または建物)1物件につき1,000円」となります。つまり、戸建ての土地と建物を変更する場合は「土地1物件で1,000円」と「建物1物件で1,000円」となり、合計2,000円の登録免許税がかかります。
マンションなど複数の所有者がいる場合は勝手が少し異なります。一般的に、区分マンションでは建物と一体化した土地の権利を「敷地権」として設定し、条件に応じて敷地権の割合を決めています。そのため、敷地権の割合(土地の物件数)に応じた計算が必要です。
実際の敷地権は複雑になるケースが多いですが、分かりやすい例を挙げると以下のように算出します。
■区分マンション1戸、敷地権1筆の場合
建物1物件+土地(敷地権)1物件=合計2物件×1,000円=2,000円
■区分マンション1戸、敷地権2筆の場合
建物1物件+土地(敷地権)2物件=合計3物件×1,000円=3,000円
このように、マンションなどの場合は戸建てとは計算方法が異なるので、あらかじめ敷地権の数を調べておく必要があることを覚えておくといいでしょう。
書類の発行手数料
登記変更手続きに必要な書類を準備する際、発行手数料がかかるものがあります。それぞれ手数料の例を紹介しましょう。
・住民票…1通300円程度
・戸籍謄本…1通450円程度
・戸籍の附票…1通300円程度
・登記事項証明書…1通600円(登記所窓口)
・登記事項証明書…1通500円(オンライン請求&郵送受取)
・登記事項証明書…1通480円(オンライン請求&所定窓口受取)
上記のすべての書類が必要になるわけではありません。また、窓口交付かコンビニ交付かによっても手数料は変わるほか、住民票は自治体によって金額が違うケースがあります。自分で準備する場合は、詳しくは交付元の自治体のホームページなどで確認しましょう。
なお、登記事項証明書は法務局でしか交付できません。オンラインでの請求もできるので、詳しくは法務局のホームページで確認しましょう。
■法務局ホームページ
登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です :法務局
司法書士への報酬
前述した通り、不動産の登記変更手続きを司法書士に依頼する場合は、報酬を支払う必要があります。いくらという決まりがあるわけではないので、依頼先の料金設定に応じた金額を支払うことになりますが、概ね数万円〜10万円程度が相場です。
また、各書類の発行手数料、書類を取り寄せる場合はその郵送料、法務局や役所までの移動交通費などの諸経費が実費としてかかる場合もあります。
普段、司法書士とのかかわりがなく、報酬相場や依頼内容など選び方に不安がある場合には、不動産投資会社へ相談してみるのがおすすめです。対応実績が豊富で、信頼できる司法書士を紹介してもらえるはずです。
引っ越し時に慌てないように登記変更のポイントを把握しておこう!
引っ越しなどで不動産の登記内容に変更があった場合は、登記簿の変更手続きが必要です。申請は自分でおこなうか、代理人となる司法書士へ依頼することができます。
ただ、申請手続きには、申請書の作成や必要な書類をそろえるなど、それなりの知識や期間を要します。あらかじめ、必要な情報をざっくりとでも把握しておけば、登記変更が必要になったときにも慌てず対処できるでしょう。
ワンルームマンションの不動産投資で、引っ越しなどで必要となる登記変更について詳しく知りたいという方は、実績豊富なメイクスまでお気軽にご相談ください。専門知識を持ったコンサルタントが最適な資産運用をサポートします。
※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。㈱メイクスにおいては、何ら責任を負うものではありません。